ウクライナの原子力発電所の状況 #22
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第98号(現地時間2022年9月5日)[仮訳]
ウクライナは国際原子力機関(IAEA)に対し、ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)と近隣の火力発電所を結ぶ予備の送電線が9月5日、火災消火のために送電網から切り離されたが、送電線自体に損傷はなかったと報告した。ZNPPで運転中の原子炉1基が、ZNPPへ電力供給を継続している状態だ。
金曜日遅くにZNPPで運用されていた最後の750kV送電線への接続が切断された後、ZNPPからの電力供給には330kVの予備の送電線が使用されていた。ウクライナからの報告によると、この予備の送電線は火災が鎮火した時点で再接続される予定である。
ZNPPの6基中1基(6号機)は、冷却など原子力安全に必要な電力を引き続き供給している。6号機は、330kVの送電線が再び運用可能になった時点で送電網に再接続される予定である。
また本日、4名のIAEA専門家が、数日間にわたる原子力安全、セキュリティ、保障措置に係る重要な作業を終え、予定通りZNPPを後にした。他の2名は、IAEAが現地の状況を監視し、独立した評価を実施できるようにするため、現地に引き続き駐留する。
6人の専門家は、ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長率いるIAEA支援/調査ミッション(ISAMZ)の一員として9月1日にZNPPに到着、前線を越えてウクライナ南部にあるZNPPに入った。ZNPPは3月上旬からロシア軍に占拠されているが、ウクライナ人スタッフが発電所の運転を続けている。
現地にいるIAEA専門家は、ZNPPの物理的損傷の評価、主要およびバックアップの原子力安全およびセキュリティシステムの健全性の判断、スタッフの労働状況、プラントの現在の緊急時対応能力の評価などの活動を行っている。またここ数日、保障措置の査察官は、ZNPPにて緊急の保障措置活動を実施している。
ZNPPのウクライナ人スタッフが本日、IAEAの専門家に対し報告したところによると、金曜日に切断された750kVの送電線の修復作業を計画しているが、それには数日かかるとのこと。
送電網からの外部電源による確実な電力供給とバックアップ電源の供給システムは、原子力安全の確保に必須である。この要件は、紛争当初に事務局長が示した「原子力安全およびセキュリティの7つの不可欠な原則」のうちの1つである。
この1か月間、ZNPPやその周辺では数多くの砲撃が発生、施設に被害が出ており、健康や環境を脅かす可能性のある深刻な原子力事故への懸念が広がっている。9月1日のZNPPへの砲撃は、タービン潤滑油の入ったオイルタンクが損傷したが、本日も砲撃があった。
グロッシー事務局長は6日、ウクライナの原子力安全、セキュリティ、保障措置の状況について、ZNPPへのミッションから得られた知見を含む報告書を発表し、同日中には国連安全保障理事会で説明する予定である。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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