ウクライナの原子力発電所の状況 #23
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第99号(現地時間2022年9月7日)[仮訳]
国際原子力機関(IAEA)は、新たな砲撃がウクライナのザポリージャ原子力発電所 (ZNPP)とその近くの火力発電所を結ぶ予備の送電線を損傷していることを現地で確認し、ZNPPにおける重大な原子力安全上のリスクがさらに浮き彫りになっているとの確信を深めた。
消火活動のために予備送電線のスイッチが切られた2日前には、すでにZNPPは送電網から切り離されていたため、昨日の砲撃がZNPPの運転に直ちに影響することはなかった。
しかし、750/330kV の送電線の損傷は、ZNPPが外部電源の供給に関して直面する困難と脆弱性を改めて示した。ZNPPはこれまでの紛争中に4系統の外部送電線すべての接続を失った。最後の切断は9月2日のことである。ZNPPと火力発電所の間の3系統の予備の送電線のうち、1系統は現在、砲撃によって損傷を受けており、他の2系統は切断されている、とZNPPのスタッフは先週からZNPPに駐在するIAEA専門家に伝えた。
送電線への影響に加えて、砲撃は、ZNPPのスタッフが修理を計画しているサイト内の開閉所にも損害を与えた。ZNPPは3月初めからロシア軍に占拠されているが、ウクライナ人のスタッフが引き続きZNPPを運転している。
ここ数日間、ZNPPは冷却やその他の安全機能に必要なサイト内への電力供給を唯一運転する原子炉1基に依存している。ZNPPには、必要に応じて非常用ディーゼル発電機も設置されているが、グロッシー事務局長は、こうした電力供給の状況について繰り返し懸念を表明している。
昨日、国連安全保障理事会への報告に先立って発表されたウクライナの原子力安全、セキュリティ、保障措置に関する報告書の中で、事務局長は、ZNPPは幾度か「その地域での軍事行動の結果、外部電源からの電力供給の全部または一部が失われた」と指摘。「外部電源を供給する送電線の冗長性が設計通りにいつでも再確立され、利用可能であるべきであり、また、電力供給システムに影響を与える可能性のあるあらゆる軍事活動を停止するよう」を勧告した。
原子力安全を確保し、原子力事故を防止するためには、送電網からの外部電源による確実な電力供給ならびにバックアップ電源の供給システムが必須である。この要件は、紛争当初に事務局長が示した原子力安全およびセキュリティの7つの不可欠な原則の一つである。
先週、数か月にわたる努力の末、グロッシー事務局長は、IAEAの調査ミッションをZNPPに派遣した際、現地にIAEAの駐在員を配置した。2名のIAEA専門家が現地に常駐し、現地の状況について独立した客観的な監視と評価を行っている。
昨日、事務局長は、ZNPP周辺に原子力安全/セキュリティ保護エリア区域の緊急設定を提言し、この計画の実施に向けた協議を行っている。
ザポリージャの原子力安全、セキュリティ、保障措置の現況
―IAEA事務局長による第2回サマリーレポート(2022年9月6日発表)から抜粋―
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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