ウクライナの原子力発電所の状況 #26
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第102号(現地時間2022年9月13日)[仮訳]
国際原子力機関(IAEA)は本日、ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)付近の重要な電力インフラの修復をさらに進め、同発電所への3系統目のバックアップ送電線が再び利用できるようになったと現地で報告を受けた。
この150kVのバックアップ送電線は、近くの火力発電所の開閉所が砲撃によって損傷し、エネルホダルの町が完全停電した数日後に修復され、再びZNPPへの送電が可能になった。
これにより、欧州最大の原子力発電所であるZNPPへの3系統のバックアップ送電線は、ここ数日ですべて復旧したことになる。そのうちの1つである750/330kVの送電線は現在、原子炉の冷却やそのほか重要な安全機能に必要な外部電力をZNPPに供給している。なお、330kVと150kVの送電線は、予備として保持されている。ZNPPの6基の原子炉はすべて冷温停止状態にあるが、必要な安全機能を維持するために電力が必要である。
開閉所の修復の結果、先週完全停電したエネルホダルの一部では、再び電気の供給を受けることができるようになった。火力発電所は運転されていないが、開閉所を通じて送電網からの電力供給を受けることができる。
このように発電所の電力状況に改善が見られるものの、ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、ロシア軍に占領され、紛争地域の中心でウクライナ人スタッフが運転を続けるZNPPの原子力安全とセキュリティは、依然として不安定であると改めて強調した。ここ数日、ZNPPやその近くでの砲撃はないものの、より広い地域でまだ発生している。ZNPPの4系統の主要な外部送電線はすべて停止しており、現在外部への電力供給は行われていない。
状況を安定させるため、事務局長はZNPPの原子力安全/セキュリティ保護エリアの緊急設定を目指し、関係者との協議を開始した。今月初めには、専門家チームを率いてZNPPをを訪問し、IAEAのプレゼンスを確立、IAEAスタッフ2名を駐在させている。
これとは別に本日、ウクライナの原子力安全とセキュリティに対するIAEA主導の支援継続の一環として、グロッシー事務局長は、ハンガリー、ルーマニア、スペインが提供する放射線モニタリングシステムや個人防護着など、2回目の大規模な支援物資がウクライナに到着したことを明らかにした。
ウクライナのリウネ原子力発電所、南ウクライナ原子力発電所、規制当局、国家緊急事態庁に対する今回の物資輸送は、IAEAの緊急時対応援助ネットワーク(RANET)を通じて行われた。このネットワークでは、放射線量評価や除染、原子力施設の評価とアドバイス、放射性物質の探索と回収などの分野で、各国が提供できる支援を登録することができるようになっている。今回の支援は、7月にウクライナに支援物資を送った(声明86)ものに続くもの。
ザポリージャの原子力安全、セキュリティ、保障措置の現況
―IAEA事務局長による第2回サマリーレポート(2022年9月6日発表)から抜粋―
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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