ウクライナの原子力発電所の状況 #28


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明第105号(現地時間2022年9月21日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の敷地内で水曜早朝(9/21)に発生した新たな砲撃により、冷温停止中の原子炉6基のうち1基に電力を供給するケーブルが損傷し、1基が一時的に安全機能に必要な電力を非常用ディーゼル発電機に頼らざるを得なくなった、とウクライナのシニア運営スタッフから現地で報告を受けたことを明らかにした。

現地時間午前1時13分、原子炉建屋に隣接する6号機のタービンホール付近で発生した砲撃の後、6号機の非常用ディーゼル発電機3台のうち2台が自動起動し、約40分間稼働した。その後、運転員が近隣の火力発電所の開閉所を経由して、ZNPPの既存の主要送電線から6号機が外部電源に再びアクセスできるようになったため、非常用ディーゼル発電機は運転を停止した。

他の5基に影響はなく、先週復旧した外部送電線を通して直接電力が供給されている。現在、6号機の損傷したケーブルの修復とZNPPの外部送電線との直接接続の復旧に向け、作業が進められている。ZNPPの6基すべては冷温停止状態にあるが、冷却や必要な安全機能を維持するためには電力が必要である。

原子力安全/セキュリティ保護エリアをZNPP周辺に設定するという提案をハイレベルで協議するため、今週ニューヨークの国連を訪問中のラファエル・グロッシー事務局長は、欧州最大の原子力発電所サイトであるZNPPで今回の砲撃があったことに深い憂慮を示している。

またグロッシー事務局長は、IAEAが現地に駐在し、公平かつ独立した立場でこうした事象を監視、報告することの重要性を強調。ここ3週間、現地に駐在しているIAEA専門家がウィーンのIAEA本部に直接情報を伝え、問題なく活動を行うことができた意義を繰り返し述べた。

水曜日の事象は、前日にZNPPサイトにあるスプレーポンド(発電所の熱除去システムの一部)で発生した砲撃後に起きた。配管が破損し、冷却池は修理のため使用不能となった。また昨日は、ZNPPから数キロ離れた火力発電所周辺の工業用地でも砲撃があったとの報告があった。

「このことは、ZNPPの周辺に原子力安全/セキュリティ保護エリアを設けることが緊急に必要であることを改めて示している。昨日までは、発電所やその周辺への砲撃は少なかったようだが、今回の出来事は、その危険が依然として非常に高いことを示している。危機はまだ去っておらず、これ以上時間を失うわけにはいかない」「ZNPP周辺の原子力安全/セキュリティ保護エリアを早急に実現するために、私はできる限りのことをする決意だ。今週の国連でのハイレベル会合は、深刻な原子力事故を未然に防ぐために最も重要で、この目的を達成するために極めて重要である」とグロッシー事務局長は述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-105-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


ザポリージャの原子力安全、セキュリティ、保障措置の現況
―IAEA事務局長による第2回サマリーレポート(2022年9月6日発表)から抜粋―



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)