ウクライナの原子力発電所の状況 #41


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 122号(現地時間20221031日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の原子炉1基への主要な外部電源接続が地雷の爆発により切断されたことを発表し、現在の軍事紛争中の原子力安全とセキュリティが脆弱な状況にあることを示す最新の事例であると述べた。

爆発は30日夕方、ZNPPの境界フェンスの外側で発生し、発電所の開閉所と4号機の主変圧器を結ぶ750kVの外部送電線が切断された。

グロッシー事務局長は、欧州最大の原子力発電所に駐在しているIAEA専門家チームが提供した情報に基づき、4号機は冷却やその他の原子力安全・セキュリティに必要な電力をZNPPと近くの火力発電所の開閉所を結ぶバックアップ送電線から受電していると述べた。

IAEAチームによると、ZNPP周辺の不安定な状況をさらに示すものとして、軍事活動が減少していたが、ここ数日発電所周辺で砲撃があったという。昨日、火力発電所の開閉所付近で砲撃があり、エネルホダルに電力を供給しているZNPPの3系統のバックアップ送電線のうち1系統が一時的に切断された。この150kVの送電線は、同日中に再接続された。

グロッシー事務局長は、「ZNPPの運転スタッフは、10月初旬に見られたような停電の繰り返しを防ぐため、非常に厳しい状況の中で懸命に働いている。彼らの断固たる努力は一定の成果を上げているが、ZNPPの電力状況は依然として極めて脆弱なままである」と述べた。

事務局長はここ数週間、原子力安全/セキュリティ保護エリアの早期合意と実施をめざし、ウクライナとロシア双方とハイレベル協議を行っている。

ZNPPの6基の原子炉のうち、5号機はプラントのオペレーションに必要な蒸気を供給するために温態停止中で、6号機も同じ目的のために温態停止状態である。他の4基は、現在も冷温停止中である。

グロッシー事務局長はまた本日、ウクライナ人スタッフの労働条件がますます厳しくなり、ストレスのかかる状況にあることについて、引き続き深刻な懸念を表明した。彼らはロシアから、ウクライナ国内の事業者であるエネルゴアトムとの現在の契約に代えて、ロシア側が設立した事業者と新たな雇用契約を結ぶよう要請されている。ロシアは、国営組織を設立し、ZNPPを管理下に置いたと発表している。

グロッシー事務局長は、ZNPPはウクライナ所有であると繰り返し述べており、この状況は主要な人材の確保と運営上の意思決定の両方に影響を与え、原子力安全とセキュリティに悪影響を及ぼす可能性があり、ZNPPにおける原子力事故のリスクを高めると警告している。

ZNPPのIAEAチームは、2週間ほど前に拘束されたウクライナ人スタッフ2名のうち1名が最近解放されたとの報告を受けた。解放されたスタッフの健康状態に問題はないと伝えられている。グロッシー事務局長は釈放のニュースを歓迎するとともに、残るもう1名のスタッフを直ちに釈放するよう訴えた。

また、事務局長は本日、ウクライナ政府からの査察団派遣要請を受け、IAEA査察官がウクライナの2か所で検証活動を開始し、まもなく完了する予定であることを明らかにした。

今回のウクライナの要請は、IAEAの保障措置下にあり、IAEAの査察官が定期的に訪問している2つの場所で、ロシアが「汚い爆弾」の製造可能性に関連する活動を疑ったことを受けたもの。保障措置の訪問の目的は、未申告の原子力活動や「汚い爆弾」の開発に関連する物質の可能性を検知することである。IAEAは1か月前に2か所のうち1か所を査察したが、未申告の原子力活動や核物質は発見されなかった。

グロッシー事務局長は今週末に2か所での最新の検証活動に関する最初の結論を提示する予定であると述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-122-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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