ウクライナの原子力発電所の状況 #43


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 124号(現地時間2022115日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)が外部電源へのアクセスをすべて失った2日後に外部電源を復旧させたと発表し、これは欧州最大の原子力発電所の安全とセキュリティの不安定さを強調する最新の事象であると述べた。

ZNPPの外部電源である750kVの送電線と330kVの予備送電線の両方が修理され、金曜午後に再接続が開始された。発電所に駐在しているIAEA専門家チームから得た情報によると、グロッシー事務局長は、22時頃、ZNPPの全6基への750kVの電源が再確立され、稼働中だった非常用ディーゼル発電機8台が停止し待機状態になったと述べた。

750kVの送電線が、先月末の地雷爆発で750kV送電線への接続を失った4号機を含め、ZNPPの6基に対して冷却やその他の原子力安全とセキュリティに必要な電力を再び供給できるようになった。ZNPPのバックアップ電源として、近くの火力発電所の開閉所につながる330kVの外部電源も利用可能である。

この750kVの送電線は、水曜日深夜の砲撃を受けてZNPPサイト全体から切り離され、そのわずか数時間後に330kVの送電線も失われた。そのどちらも、ZNPPから約50~60キロメートル離れたウクライナ支配地域付近で物理的な被害を受けた。ZNPPの非常用ディーゼル発電機は、外部電源が復旧するまでの間、自動的にバックアップ電力の供給を開始した。その際、発電所にはディーゼル発電機の約15日分の燃料があった。IAEAチームは、ディーゼル燃料の供給が継続されており、本日、発電所のスタッフがすべてのディーゼル発電機のタンクに燃料を補給する予定であると報告を受けている。

全プラントの運転状況に変化はなく、5、6号機は準温態停止状態でサイトに蒸気を供給しており、今後温態停止状態にするよう準備が進められている。他の4基は、冷温停止状態のままである。

ZNPPはこれまでも、ウクライナ紛争時に既に数回外部電源を喪失しており、外部電源が回復するまでディーゼル発電機に頼らざるを得なかった。

グロッシー事務局長は「度重なる停電は、この主要な原子力発電所が直面している極めて深刻な原子力安全とセキュリティの状況を明確に示している。これまでZNPPの勇敢なスタッフたちは、6基の安全な運転を常に維持してきた。しかし、このままではいけない。私たちは原子力事故を防ぐために、原子力安全/セキュリティ保護エリアを設置するよう繰り返し求めてきた。これ以上、時間を失うわけにはいかない。手遅れになる前に行動しなければならない」と述べた。

グロッシー事務局長はここ数週間、ウクライナ、ロシア両国とハイレベル協議を行い、ZNPP周辺の保護エリアの合意と実施をめざしている。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-124-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine 


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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