ウクライナの原子力発電所の状況 #45


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第126号(現地時間2022年11月14日)[仮訳]

国際原子力機関 (IAEA) のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、数週間以内にウクライナで運転中の3つの原子力発電所とチョルノービリ・サイトに原子力安全・セキュリティミッションを派遣する予定であると語った。

ウクライナからの要請を受け、ウクライナ政府とIAEAの間で、南ウクライナ、フメルニツキーおよびリウネ原子力発電所にIAEAの原子力安全・セキュリティの専門家チームを派遣することが合意された。合意により、IAEAはチョルノービリに現在の紛争中において3度目の専門家ミッションを派遣する。IAEAは既に、同国最大の原子力発電所であるザポリージャ原子力発電所 (ZNPP) に専門家チームを駐在させている。これらすべての施設で、IAEAは定期的に保障措置活動を行っており、ロシアから未申告の原子力活動の疑惑を受けて、ウクライナ政府の要請で他の3サイトで現地検証活動を終えたところである。

グロッシー事務局長によると、各ミッションの派遣期間は約1週間で、必要に応じて他の派遣が続くこともあるという。事務局長は、紛争初期の3月と4月にそれぞれ南ウクライナ、チョルノービリ原子力発電所に、また9月にはZNPPへのIAEAの安全・セキュリティ・保障措置ミッションを主導し、ZNPPでIAEA支援・調査ミッション (ISAMZ) を確立した。IAEAの専門家は、5月末から6月初めにかけて2回目のチョルノービリへのミッションを実施している。

グロッシー事務局長は、「ウクライナにおける戦争の初期から、IAEAは公衆衛生と環境に深刻な結果をもたらす可能性のある原子力事故を防ぐためにできる限りのことをしてきた。我々は、原子力安全・セキュリティ設備を納入し、公平な状況評価を行い、技術的な専門知識と助言を提供してきた。我々は、ウクライナ当局との要請により緊密に協力しながら、この重要な作業を行っている」「ウクライナからこの最近の要請を受けた直後に我々は具体的な提案書を作成し、技術的およびロジの詳細の準備を開始し、これらの新たなミッションをすぐに展開する準備ができている。世界がZNPPの不安定な原子力安全・セキュリティに注目している間、我々は戦争中の国にある他の原子力施設を忘れてはならない」と語った。

ZNPPの6基の原子炉は、冷却やその他の重要な機能に必要な外部電力を唯一稼働する750kVの外部送電線から引き続き受けている。この地域は最近、比較的落ち着いており、ZNPPやエネルホダルの町近くの工業用地では砲撃が減っている。

グロッシー事務局長は「しかし、私たちの経験からいうとこれがいつでも変化し、突然新たな危険な方向に転ずる可能性がある。気を緩めている場合ではない。私は、プラント周辺の原子力安全/セキュリティ保護エリアを早期に合意し実施するための断固とした努力を続けている。それは今すぐにでも必要とされているものだ」と述べた。

ZNPPの原子炉のうち4基は冷温停止状態のままだが、他の2基はZNPPに蒸気を供給するために温態停止状態にあり、エネルホダルに住む人々 (多くはZNPPの従業員とその家族) にも暖房も行っている。

先週、ウクライナの運転スタッフは、まだ電力は生産していないが、より多くの蒸気を供給するために低出力で6号機の運転を開始することを提案し、ウクライナ当局は要請を承認した。しかし、ロシアの運営組織はZNPPの送電網への接続が信頼できないことを理由に許可を与えなかったため、6号機は温態停止状態のままである。

グロッシー事務局長は、欧州最大の発電所の指揮系統に関して明らかな矛盾を示すものとし、意思決定の状況に懸念を表明した。

ロシアはモスクワに拠点を置くZNPPの国家運営組織を設立し施設を管理したと発表しており、重要な運用上の決定を行い、多くのロシア人技術スタッフがZNPPに駐在している。しかし、ウクライナ人のZNPPスタッフは、過酷なストレスの下でZNPP施設の日々の業務を続けている。

「ウクライナ人のスタッフは常にプレッシャーの中で重要な任務を遂行している。これは原子力安全とセキュリティに悪影響を及ぼし、原子力事故のリスクを高める可能性があり、止めなければならない。状況を悪化させ、彼らは現在、ZNPPの運営方法についての矛盾した指示にも直面している」と述べた。

このことを示すもう一つの兆候として、ロシアの請負業者が、ウクライナの管轄当局によって許可されていないZNPPの乾式使用済燃料貯蔵施設の核物質防護システムの改造に取り組んでいる。

先週金曜日、IAEAチームは乾式使用済燃料貯蔵施設を訪問し使用済燃料キャスクにIAEA保障措置用の封印を確認したところ、当面の保障措置上の問題はなかった。

これとは別に、ザポリージャの町からトラック24台の車列が昨日ZNPPに到着し、化学薬品、電気部品、冬用の電気ヒーターなどの補給品と予備部品を搬入した。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-126-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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