ウクライナの原子力発電所の状況 #46


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第127号(現地時間2022年11月16日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナ当局による情報を引用し、同国のフメルニツキー原子力発電所 (KhNPP) が昨日、国内での軍事攻撃により送電網へのすべてのアクセスを失い、一時的にバックアップ電源をディーゼル発電機に頼らざるを得なくなったことを明らかにした。

ウクライナによると、KhNPPの送電網接続は、11月15日の現地時間18時35分に完全に失われた。これは、ウクライナのエネルギー・インフラに対するミサイル攻撃により、4つの稼働中の送電線が2時間半にわたって徐々に接続を失ったためである。この間、発電所の2基の原子炉が停止し、外部への電力供給が停止した。

9時間以上経過した今朝の午前3時45分に、発電所は330kVの予備送電線2系統を通じて外部電力を回復し、ディーゼル発電機は停止した。そのうち1系統の送電線が約1時間後に再び失われ、11時25分に復旧した。2基の原子炉は停止状態のままである。

同じくウクライナ西部にあるリウネ原子力発電所は昨日の午後、750 kV送電線のうち1系統への接続を失った。その結果、発電所の出力が低下し、4 基中1基が自動的に系統から切り離された。本日4時に、発電所はウクライナのネットワークへの電力供給を継続するために、他の原子炉1基の出力を増加させた。

ウクライナ最大の原子力発電所であるザポリージャ(ZNPP)は、同国で現在起こっている軍事紛争の最中に数回、外部電源を失ったが、昨日の事象は他の原子力施設でも原子力安全とセキュリティの脆弱な状況を浮き彫りにした。ウクライナには、4原子力発電所・計15基の原子炉があり、その他にチョルノービリ・サイトがある。

「これは非常に懸念すべき展開だった。それは、ZNPPのみならず、この恐ろしい戦争中にウクライナのすべての原子力施設が直面する潜在的な原子力の安全性とセキュリティのリスクを示している。現在、KhNPPの外部電源は復旧しているが、昨日の電源喪失はウクライナの原子力安全とセキュリティの状況が突然悪化し、原子力の緊急事態のリスクが高まる可能性があることを明確に示している」とグロッシー事務局長は述べた。

原子炉は、冷却やその他の重要な原子力安全とセキュリティ機能のために電力が必要だが、原子炉が停止して発電していない時も同様である。外部電源が失われた場合に備えて、限られた期間、通常は少なくとも数日間、バックアップ電力を提供できる非常用ディーゼル発電機を保有している。

KhNPPでの停電は、IAEAが今後数週間のうちにKhNPP、リウネおよび南ウクライナの各原子力発電所、ならびにチョルノービリに原子力安全とセキュリティのミッションを派遣すると発表した翌日に発生した。ミッションは、ウクライナの要請で組織されている。

グロッシー事務局長は、「紛争中のウクライナの原子力安全とセキュリティを維持し、原子力事故防止に向けた取組に対する我々の確固たる支援の一環として、近い将来、これらの原子力発電所に滞在する予定である」と述べた。

IAEAはすでに、専門家チームをZNPPに駐在させている。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-127-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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