ウクライナの原子力発電所の状況 #49
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第131号(現地時間2022年11月23日)[仮訳]
国際原子力機関 (IAEA)は本日、サイト上で IAEAスタッフから提供された情報を引用し、ウクライナのザポリージャ原子力発電所 (ZNPP)が再び外部電源を喪失し、原子炉の冷却やその他の重要な原子力安全とセキュリティ機能に必要な電力を非常用ディーゼル発電機に依存していることを明らかにした。
また、ウクライナの国営事業者であるエネルゴアトムは本日、「リウネ、南ウクライナ、フメルニツキー原子力発電所での電力システムの周波数が低下したため、緊急防護機能が働き、その結果、全基が自動的に解列された。現在、いずれも発電を停止している。」と述べた。また、原子力発電所サイトの放射線の数値は正常であるとも述べている。
グロッシー事務局長によると、欧州最大の原子力発電所ZNPPでの最新の事象は、原子力安全とセキュリティの状況がますます不安定で困難なものになっていることを浮き彫りにしている。
ZNPPは、ウクライナでの現在の軍事紛争中に何度か国内の送電網から切り離されており、最近では11月初旬、外部電源の復旧に2日を要した。
ZNPP に駐在しているIAEAの専門家チームは、ウクライナのエネルギー・インフラを標的とした広範な軍事行動の報告を受け、現地時間の午後3時30分に送電網から完全に切り離された時点でサイト外の電力を失ったと述べた。
当初、サイトの20台のディーゼル発電機はすべて自動運転を開始していたが、現在ではそのうち8台がすべての安全関連機器に必要なバックアップ電力をサイトに供給している。他の12台のディーゼル発電機は待機状態にある。
IAEAチームはまた、発電所の運転員が外部電源喪失事象の手順に従いすべての活動を行っており、6基の原子炉が安全で安定した状態にあることも報告した。発電所と近郊のエネルホダルの町に蒸気と熱を供給するために温態停止状態になっている2基の原子炉は、冷却の準備が整っている。他の4基は冷温停止状態のままである。
グロッシー事務局長が3月に提唱した、武力紛争中の原子力安全とセキュリティを確保するために、すべての原子力サイトの送電網からの安全な外部電源供給の必要性は、7つの不可欠な原則の1つである。
原子炉は停止状態にあり、それ以上発電していないときも、冷却やその他の重要な原子力安全とセキュリティ機能のため、電力を必要としている。外部電源が失われた場合、ZNPPの場合は少なくとも10日間の限られた期間、バックアップ電力を提供できる非常用ディーゼル発電機がある。
グロッシー事務局長は本日、トルコ・イスタンブールでロスアトムのアレクセイ・リハチョフ局長が率いるロシアの代表団と会談し、ZNPPの安全性に関連する運用上の側面と、発電所周辺に原子力安全とセキュリティ保護区域を緊急に設定する必要性について協議した。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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