ウクライナの原子力発電所の状況 #50
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第132号(現地時間2022年11月24日)[仮訳]
国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の外部電源が回復したと発表した。
また、ウクライナの国営事業者であるエネルゴアトムは、昨日解列されたウクライナの他の3サイト(リウネ、南ウクライナ、フメルニツキー原子力発電所)では、運転再開に向けて復旧作業中である。
エネルゴアトムは、「リウネ、南ウクライナ、フメルニツキー原子力発電所の発電ユニットで起動操作が行われている。電力システムの準備が整い次第、電力網に接続される予定」と述べている。ウクライナはIAEAに対し、3サイトで停止中のバックアップ電力を非常用ディーゼル発電機に頼っていたことを報告した。
事務局長は、ウクライナの原子力発電所が23日、9か月前に紛争が始まって以来、最大規模の外部電源喪失を経験したと指摘し、これにより、発電所を保護し、重大な原子力事故の危険を防ぐための行動を強化する必要性がさらに浮き彫りになったと述べた。
「ウクライナの原子力発電所の外部電源が完全かつ同時に喪失したことは、同国の原子力安全とセキュリティの状況がますます不安定で困難かつ危険になっていることを示すものである。すべての原子力発電所が同時に外部電源を喪失したのは初めてのことだ。この悲惨な戦争が起こる前なら、まったく想像もできなかったことで、極めて憂慮すべきことである。ウクライナの原子力施設の安全性とセキュリティを脅かすすべての軍事行動を直ちに停止しなければならない」と事務局長は述べた。
IAEAの専門家チームによると、ZNPPの非常用ディーゼル発電機8台は、昨日午後3時半ごろの外部電源喪失以来稼働していたが、今朝9時前、750kVの送電線と予備の330kVの送電線へのアクセスが再確立された後に停止された。
ZNPPの原子炉6基のうち4基は冷温停止状態のままだが、他の2基は昨日の停電で冷却された後、再び温態停止状態に戻り、ZNPPへの蒸気供給と近隣のエネルホダル市への熱供給を行うことができるようになった。また、多くの発電所職員が住むエネルホダルにも再び電力が供給されている。ZNPPはここ数か月、外部電源を何度も喪失しており、11月初旬には、外部電源の復旧に2日を要した。
原子炉は停止し、発電していないときでも、冷却や原子力安全とセキュリティシステムのために電力が必要である。外部電源を喪失した場合、非常用ディーゼル発電機が稼働し、限られた期間、通常は少なくとも数日間、ZNPPの場合は10日以上、バックアップ電力を供給することができる。IAEAチームは本日、ディーゼル燃料を積んだトラック4台がサイトに到着し、タンクに燃料を補充したと報告した。
送電網からの確実な外部電源による電力供給は、6基の原子炉が停止した状態でも、原子力安全を確保するためには不可欠である。この要件は、紛争当初に事務局長が示した「原子力安全およびセキュリティの7つの不可欠な原則」のうちの1つである。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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