ウクライナの原子力発電所の状況 #54


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第136号(現地時間2022年12月13日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長とウクライナのデニス・シュミハリ首相は、国際原子力機関(IAEA)がウクライナのすべての原子力発電所に、原子力安全・セキュリティ専門家を常駐させることに合意した。

火曜日の早朝に終了したパリでの2時間の会談で、グロッシー事務局長はシュミハリ首相と、IAEAが3か月以上前から専門家を常駐させているザポリージャ原子力発電所(ZNPP)周辺の原子力安全/セキュリティ保護エリアの設定に関する継続協議でも進展があったと述べた。ウクライナのへルマン・ハルシチェンコ・エネルギー相も会談に参加した。

グロッシー事務局長は会談後、「まだ合意に達しておらず、さらなる作業が必要だが、最も重要である保護エリアが近い将来に実施されることが見えてきている。私は今後数日間、ウクライナとロシアの両方とハイレベルな協議を続け、できるだけ早くこれを実現させるという明確な目標がある。これ以上時間を失うわけにはいかない」と述べた。

グロッシー事務局長は、ウクライナでの取り組みを積極的に支援しているフランスのエマニュエル・マクロン大統領が主催するウクライナに関する国際会議「Solidaires du peuple ukrainien」に出席するためにパリに滞在していた。

IAEAは、ウクライナの要請を受け、この1か月間、稼働中の他の3つの原子力発電所(フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ)および1986年に原子力事故を起こしたチョルノービリ・サイトに1週間の原子力安全・セキュリティミッションを派遣してきた。

グロッシー事務局長とシュミハリ首相がパリで合意したように、IAEAはこれら4サイトへの常駐を継続する計画を推進する。

「ZNPPでのミッションは、IAEAが現地で状況を監視し、技術的な助言を与えることの重要性を示した。IAEAは公平で技術的、かつ事実に基づいた情報を世界に提供している。我々は今、ウクライナ政府と、同国におけるIAEAの原子力安全およびセキュリティの役割をさらに拡大、強化することで合意した。これは、戦争でウクライナのエネルギーインフラが前例のない困難に直面している時、そして冬季であることは特に重要である」とグロッシー事務局長は述べた。

こうした困難を裏付ける新たな展開として、ZNPPのIAEAチームは本日、発電所が電力網への330kVのバックアップ送電線への接続を失ったと報告した。何が原因で切断されたかは、判明していないが、欧州最大の原子力発電所であるZNPPは、安全およびセキュリティに必要な電力を750kVの外部電力からの送電線を通じて供給されている。

ZNPPのIAEAチームは本日、ZNPPの重要なシステムの凍結を防ぐための移動式ディーゼル燃料ボイラーの試験と運転開始のための作業が、ZNPPスタッフの作業環境の暖房も含めサイト内で継続されているとの報告うを受けた。 出力1~3MWの移動式ディーゼル燃料ボイラーが設置され、現在1基で稼働しているほか、サイト内の他の場所にも数台が配置されている。

ZNPPは20台の固定式非常用ディーゼル発電機をスタンバイモードにしており、外部電源がすべて利用できない場合に電力を供給できるようになっている。しかし、このような外部電源喪失への対処能力を高めるため、現在、予防措置として移動式ディーゼル発電機も配備されている。すでに2台の移動式発電機が1基の原子炉に接続され、スタンバイモードになっている。他の数台の移動式発電機もテスト予定で、他の原子炉に接続される予定である。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-136-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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