ウクライナの原子力発電所の状況 #56
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第138号(現地時間2022年12月30日)[仮訳]
国際原子力機関 (IAEA) のラファエル・マリアノ・グロッシー事務局長は30日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所 (ZNPP) への330kV の予備送電線が29日遅く、砲撃により切断されたことを明らかにした。このことから、同発電所の送電網からの電力供給体制が依然として脆弱であることが明らかになった。
6基の原子炉がすべて停止しているZNPPでは、ウクライナ紛争以前からある4系統の送電線の内、唯一稼働中の750 kV外部送電線から原子炉冷却やその他の原子力安全・セキュリティ機能維持に必要な電力が継続して供給されている。
ZNPPに駐在するIAEA専門家チームは、発電所から少し離れたドニプロ川の反対側で送電線が損傷した結果、29日の現地時間21:35に330 kVのフェロスプラブナ1とよばれるバックアップ用の送電線への接続が失われたと報告した。被害状況はまだ明らかになっていないが、すでに修復作業が進められているという。
グロッシー事務局長は、 「フェロスプラブナ1はZNPPにとり最後に機能する予備送電線であり、一刻も早く復旧することが不可欠」 と述べ、ウクライナの原子力発電所の安全とセキュリティを脅かす可能性のある全ての軍事行動は直ちに停止されなければならないと繰り返した。
事務局長は、可能な限り早期にZNPP周辺の原子力安全/セキュリティ保護エリアの合意と設定を目指し、ウクライナとロシアとの協議を継続していると述べた。
欧州最大の原子力発電所であるZNPPでは11月から直接の砲撃は受けていない。しかし、IAEAの専門家は30日、近くのザポリージャ火力発電所とドニプロ川を結ぶ水路付近、施設から数百メートル離れた場所から大きな爆発音が聞こえてきたと報告した。
これとは別に、ウクライナはIAEAに対し、ウクライナ国内にあるZNPP以外の3つの原子力発電所では、29日のミサイル攻撃後により出力が低下したものの、発電レベルを回復中であることを伝えた。
IAEAチームによると、ZNPPではさらに4台の移動式ディーゼル燃料ボイラーがこの1週間で稼働を開始、ZNPPに納入された9台のうち計8台のボイラー(各熱出力1,000〜6,500kW)が稼働する。9台のボイラーがZNPPサイトと近隣のエネルホダル市に合計出力3.4万kWの熱を供給する。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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