ウクライナの原子力発電所の状況 #59


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第142号(現地時間2023年1月17日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)の原子力安全・セキュリティ専門家チームは今週、ウクライナの原子力発電所とチョルノービリ・サイトに駐在している。専門家らの常駐は、戦時中のウクライナで重大事故防止に向けたIAEAの取組を大幅に強化するものである。

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナ西部のリウネ原子力発電所でIAEA支援・援助ミッション(ISAMIR)の発足式を行った。その前日には、車で8時間離れた南ウクライナ原子力発電所で同様のチーム「ISAMISU」を立ち上げた。また南ウクライナでは、ウクライナのH. ハルシチェンコ・エネルギー相、国営原子力発電企業エネルゴアトムのP. コティン総裁、規制当局のO. コリコフ局長と会談を行った。

明日、グロッシー事務局長は、ウクライナ北部の1986年の事故現場であるチョルノービリにおいてIAEA支援・援助ミッション(ISAMICH)を発足させ、数日後には、フメルニツキー原子力発電所にも専門家ミッションを派遣する予定である。IAEAはすでに、ウクライナ最大の原子力発電所であるザポリージャに最大4人の専門家を常駐させている。

IAEAチームは、ウクライナの全原子力発電所とチョルノービリに常駐する。このことは、IAEAがウクライナで約11~12人のスタッフを同時に現地に駐在させることを意味し、IAEAにとっても前例のない取組となる。

リウネ原子力発電所での発足式後、グロッシー事務局長は「ウクライナの原子力発電所とチョルノービリ・サイトに我々の専門家が常駐することは、ウクライナの悲惨な戦時中に原子力事故防止のための支援活動を強化、深化させる」と語った。

さらにグロッシー事務局長は、「ウクライナ政府の要請により開始されたこれら新たなミッションは、ウクライナにとって極めて困難な時期に、原子力安全とセキュリティを確保するという国家的責任を果たすために、ウクライナの事業者と規制当局への支援を通じて、明確な差を生み出すことになる。専門家は、主要な原子力安全とセキュリティシステムを監視し、技術支援を提供し、プラントのニーズを評価し、IAEA本部に報告する」と述べた。

ウクライナに根強く残る原子力安全とセキュリティのリスクを浮き彫りにする最新の出来事としては、南ウクライナ、リウネ、フメルニツキーの各発電所が、エネルギーインフラがミサイル攻撃を受けており、予防措置として週末に発電出力を低下させた。ウクライナからの情報によると、出力はその後回復している。

また週末には、キーウへのミサイル攻撃により、キーウ研究所の敷地内にある倉庫で火災が発生したとウクライナ側は報告している。この敷地には燃料を取り出した研究用原子炉があり、その炉心は敷地内の使用済燃料貯蔵施設に保管されている。スタッフに負傷者はいなかった。放射線モニタリングが実施されたが、平常どおりだった。

グロッシー事務局長は今週、キーウでウクライナ政府高官とも会談し、IAEAが4か月以上駐在しているザポリージャ(ZNPP)周辺に原子力安全・セキュリティ保護エリアを設定する協議を行う予定である。

グロッシー事務局長は、「最前線に位置するザポリージャ原子力発電所の保護エリア設定は、これまで以上に必要とされている。私は当然この計画がより早く進展することを望んでいるが、これが早期に合意され、実施されることを期待している。今週キーウで行われるウクライナ政府との会合で、実質的な前進を遂げることをめざしている。また、ロシアとの協議も並行して進めるつもりだ」と述べた。

ZNPPでは昨日、ここ数週間繰り返し切断されている唯一の330kVのバックアップ送電線が、メンテナンス実施のため数時間切断された。現在は再び接続されている。6基の原子炉が停止しているZNPPでは、原子力安全とセキュリティ機能のために、残る唯一の稼働中の750kV送電線からの外部電力の受電を継続している。グロッシー事務局長は、発電所の原子力安全とセキュリティの全般的な状況は依然として不安定である、と述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-142-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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