ウクライナの原子力発電所の状況 #60


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 143号(現地時間2023120日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は1月19日、キーウでヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談し、軍事紛争中の同国の原子力施設における原子力安全とセキュリティの確保を支援するための国際原子力機関(IAEA)の活動が拡大・強化されており、今週、同国内で常設のIAEA専門家チームの常駐体制が確立したことを伝えた。

また、グロッシー事務局長は、ザポリージャ原子力発電所 (ZNPP) 周辺に原子力安全/セキュリティ保護エリアを設定する提案についても議論を継続している。欧州最大の原子力発電所ZNPPはここ数カ月、繰り返し攻撃を受けており、原子力安全とセキュリティに対する懸念が深まっている。

事務局長は、重大な原子力事故を防止するためには保護エリアの設定が不可欠であることを強調し、可能な限り早期の実現に向けて努力すると述べた。

「激しい戦闘地域の最前線に位置するこの発電所を保護する必要があることを誰もが同意しているが、これは非常に複雑な交渉である。私は切望されている保護エリアが現実のものとなるまで諦めない。私は今後数日から数週間、ウクライナとロシアの双方と集中的な協議を続ける」「ZNPPは日々危険にさらされ続けている。そこにいる我々のチームは、木曜日の2回の他、現場近くでの爆発音を聞き続けている」と述べた。

事務局長は、キーウでデニス・シュミハル首相とも会談した。12月には、シュミハル首相と、同国のすべての原子力発電所とチョルノービリ・サイトにIAEAの原子力安全・セキュリティ専門家チームを常設させることで合意している。

今週、グロッシー事務局長は、南ウクライナ、リウネの各原子力発電所とチョルノービリ・サイトでのミッション発足式に出席した。現在、2名のIAEA専門家がこれら3つの施設に常駐し、技術的支援や援助を提供し、発電所の設備やその他のニーズを調査し、IAEA本部や世界に状況を報告している。

グロッシー事務局長は「今週、北から南までウクライナ全土で、戦時中の深刻な原子力事故を防ぐための同国の取組に対するIAEAの現地支援体制が大きく拡大した。ウクライナの要請により、現在これらの重要な原子力施設にIAEAの旗が掲げられている。今回初めて、我々のトップレベルの専門家が、すべてのウクライナの原子力発電所とチョルノービリ・サイトにも常駐することになる。彼らの重要な仕事は、同国が直面している非常に現実的な核の危険を減らすのに役立つだろう」と述べた。

数日中に、IAEA専門家チームもフメルニツキー原子力発電所に常駐する予定である。ZNPPには、昨年9月1日から常駐している。

IAEAのチームがウクライナのすべてのNPPとチョルノービリ・サイトに常駐することで、IAEAは国内に少なくとも11人の原子力安全・セキュリティの専門家が同時にいることになるが、これは前例のないことである。

グロッシー事務局長は「我々は、この悲惨な戦時中に、原子力の大惨事の危険を減らすために全力を尽くす決意である。今週は、この点に関する我々の取組において重要な一歩となった。しかし、その仕事はまだ終わっていない。私たちが必要とされる限り、IAEAはここにいる」と力強く述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-143-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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