ウクライナの原子力発電所の状況 #66


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 149号(現地時間202332日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所 (ZNPP) において、大幅に遅れていた国際原子力機関(IAEA)専門家チームの交代が、ようやく本日実施されたと発表した。

IAEAの交代要員は、前線を越えてヨーロッパ最大のZNPPに到着し、これにより1月初めからZNPPに駐在していた3人の専門家は、当初の予定より1か月遅れでようやくIAEA本部へ帰還するために出発した。

グロッシー事務局長は、6か月前に設立されて以来、極めて重要な原子力安全・セキュリティ活動を行ってきたIAEAのザポリージャ支援ミッション(ISAMZ)の将来にとって、本日の交代の成功は非常に重要であると述べた。本日到着したチームは、昨年9月1日に事務局長によって設立されてから6番目のチームである。

「ザポリージャ原子力発電所におけるISAMZの常駐は、非常に破壊的な戦時における原子力事故のリスクを軽減するものであり不可欠である。我々の勇気ある専門家は、ZNPPの運転スタッフと緊密に協力しながら、非常に困難な状況で技術的な助言を提供し、状況を監視している。私は、彼らが行っているすべての重要な仕事と、彼らの専門性と原子力安全とセキュリティに対するコミットメントに深く感謝している。本日帰還に向けて出発するチームは当初計画よりも数週間長く滞在を余儀なくされ、新しいチームも何週間もウクライナで待機し、当初の任務を果たすことを約束している」「我々はまた、ウクライナの他のすべての原子力発電所にいるIAEAスタッフを忘れてはならない。彼らは前線に近いわけではないが、依然として戦時であることから、時には多くの警報を受けて発電所スタッフと避難しなければならない」とグロッシー事務局長は述べ、今週はIAEAチームの交代がウクライナ国内の他サイトでも行われていると言及した。

なお、グロッシー事務局長は、この地域での軍事活動の活発化に伴なうZNPPにおける交代の行き詰まりを終わらせるために、建設的な努力をした全ての関係者に、感謝した。

昨日、ZNPPに残っている唯一の330kVの予備電力線が、ドニプロ川の対岸への砲撃が原因と思われるが1週間もたたないうちに3度も切断され、不安定な原子力安全・セキュリティの状況が再び浮き彫りになったとISAMZチームは報告した。

グロッシー事務局長は、原子力安全・セキュリティ保護エリアの設定に合意、実施することでZNPPの保護を支援する決意を改めて表明し、この重要な目的を達成するためにウクライナとロシアの双方と協議を継続していると述べた。

これとは別に、IAEAの専門家チームは1月にリウネ、南ウクライナ、フメルニツキーの各原子力発電所で常駐を開始したが、いずれのサイトでも今週チーム交代が実施されていると、グロッシー事務局長は述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-149-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~