ウクライナの原子力発電所の状況 #67
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第150号(現地時間2023年3月9日)[仮訳]
国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)が本日11時間にわたって外部電源を完全に喪失し、原子炉の冷却やその他の安全機能維持のために非常用ディーゼル発電機に頼らざるを得ない事態が発生したことを受け、欧州最大のZNPPの保護が緊急に必要であることを強調した。
グロッシー事務局長が本日未明に開催されたIAEA理事会で、現地時間の午前5時頃、ウクライナ全土へのミサイル攻撃を受け、最後に残る750kVの送電線が切断され、ZNPPはすべての外部電力を喪失したと述べた。これまでの軍事紛争中に非常用ディーゼル発電機を稼働させたのはこれで6回目であるという。
ZNPPに駐在するIAEA専門家チームは、数時間後の現地時間午後4時頃、紛争前に4系統あったうち、唯一稼働していた750kVの送電線が再びZNPPに接続され、非常用ディーゼル発電機が停止された、とIAEA本部に報告した。外部電源喪失前に温態停止状態にあった2基も、再び温態停止状態に復帰した。
グロッシー事務局長は、「本日の外部電源の喪失は、ZNPPがいかに脆弱で危険な状況にあるかを改めて示すものであった」「750㎸の送電線が再接続された後も、この状況は変わらない。経験上、我々が何か対策を講じない限り、このようなことが何度も繰り返し起こる可能性が高い」と述べた。
またグロッシー事務局長は先の理事会で、現在はどうしようもない状況と語り、「我々は毎回サイコロを振っている。このままでは、いつか運が尽きてしまう」と危機感を露わにした。
グロッシー事務局長は、プラントの原子力安全とセキュリティを守るという責務を果たすために今すぐ行動が必要であり、緊急の協議とアプローチを続けていくと述べた。
現地のIAEA専門家チームは、午後には大きな砲声が聞こえ、周辺での軍事活動が活発化していると報告、このことはZNPPの原子力安全とセキュリティが不安定な状況であることをことさら強調している。
ここ2週間、IAEAはウクライナの原子力安全とセキュリティに関する技術支援と援助を行う包括的な取組の一環として、ウクライナに3回、機器の納入を手配した。ウクライナ保健省公衆衛生センター、国家規制機関、南ウクライナ原子力発電所、電離放射線源および個人放射線量国家登録機関に、カナダとスイスから寄贈された個人防護服、呼吸マスク、ヨウ化カリウム錠、線量計、IT機器などが届けられた。
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日
ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~
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