ウクライナの原子力発電所の状況 #68


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第151号(現地時間2023年3月22日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、3月1日に損傷したザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に最後に残る330㎸のバックアップ送電線が、未だ切断されたまま修復中であることを明らかにし、このことはZNPPの原子力安全とセキュリティの脆弱性を再び強調するものであると述べた。

ZNPPはここ3週間、唯一残る750㎸の主要外部送電線から電力供給を受けている。ZNPPの全6基は停止しており、そのうちの2基は温態停止中であるが、原子力安全とセキュリティ機能維持には外部電力が必要である。バックアップ送電線がなければ、750㎸の送電線が損傷した場合、外部電源喪失に至る。

3月9日、750kVの送電線が切断されたことにより、プラントは11時間にわたって外部電源を失い、原子炉冷却やその他の安全上重要な機能維持のために非常用ディーゼル発電機に頼らざるを得なくなった。

グロッシー事務局長は、プラントの状況は依然危険であると述べた。プラントに現在滞在中のIAEA支援/調査ミッション(ISAMZ)によると、送電線の復旧は当初3月5日や10日、13日に予定されていたが、いずれも実現しなかった。最新の復旧予定日は3月23日である。

さらに状況悪化の警告として、ISAMZは、750kVの送電線への接続がメンテナンス/修理のため、不明な期間、切断される可能性があると通知された。現在のところ、いつ、どの程度の期間、このような事態が発生するかは不明である。ウクライナの送配電事業者とプラントとの間で、必要な調整とコミュニケーションが行われることが極めて重要である。

グロッシー事務局長は、「ZNPPの原子力安全は、依然として不安定な状態にある。もし、330kVの送電線が使えない状態で主要送電線からの切断や修理作業が行われれば、プラントは電源を完全に失い、最後の砦であるディーゼル発電機に頼らざるを得なくなる。もしそうなれば、これで7回目となる」「私は改めて、プラントの原子力安全とセキュリティ保護に向けた各方面からのコミットメントを求める」と述べた。

ZNPPは他の原子力発電所と同様に、外部電源喪失への備えを維持している。ISAMZは3月20日、4号機で実施された外部電源喪失時の月例テストを見学したと報告し、原子力安全上の要件に沿って、非常用ディーゼル発電機が正常に起動したことを報告している。

さらに、ロシアはロスアトムが火力発電所の開閉所にある3系統の330 kVの送電線を、現在ロシアが支配している地域の系統システムに復旧する作業を行っていると報告している。 ISAMZは、この情報について確認することができていない。

これとは別に、ISAMZはZNPPの訓練センターと原子炉ユニットのスタッフとの面談を続けている。ISAMZは、ロシアの原子力発電所から来たスタッフが、原子炉シミュレータで訓練を受け、主要制御室でZNPPの経験豊富なスタッフと実地訓練をしている様子を見た。ISAMZは、この訓練の目的は、ライセンスを持ったスタッフが不足した場合に、適切なスタッフがプラントに来て、働けるようにするためであると伝えられた。

紛争開始以来、グロッシー事務局長は、ZNPPのスタッフが直面するプレッシャーについて深刻な懸念を表明している。同事務局長は、「ZNPPの人員削減は、現在も継続する軍事衝突による心理的ストレスと相まって、プラントの原子力安全とセキュリティに影響を及ぼしている」と述べた。

また今週は、IAEAスタッフのチームがウクライナに赴き、他の4つのウクライナの原子力施設、即ち、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、チョルノービリの各サイトに滞在するスタッフの交代を計画どおりに完了させる予定である。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-151-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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