ウクライナの原子力発電所の状況 (4月25日~5月1日)(現地時間) #9
※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)
◆第68号(2022年4月30日)、第69号(2022年5月1日)※ともに現地時間 にて新たな情報はありません。
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第67号 2022年4月29日(一部仮訳)
ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は、ウクライナが本日IAEAに対し、ロシア軍に掌握されながらもウクライナ人スタッフによって運営されているザポリージャ原子力発電所の状況について正式に報告したことを明らかにした。
ウクライナによると、同国の原子力の専門家が「自身の任務を遂行し、戦時中も可能な限り、原子力施設の安全性を維持し続けている」という。
ウクライナはまた、ロシア国営企業・ロスアトムの一部門であるロスエネルゴアトムが、ザポリージャ原子力発電所に原子力の専門家、計8名を派遣したとのこと。彼らは、管理・運営、メンテナンス・修理活動、セキュリティ・アクセス管理、核燃料や使用済燃料、放射性廃棄物の管理に関連する側面など、原子力発電所の機能に関する「機密事項」について、発電所の管理者に毎日の報告を要求したという。
ウクライナは別途IAEAに対して本日、同国最大の6基の原子炉を有するザポリージャ原子力発電所の職員は、「信じられないプレッシャーの下で働いている」と報告した。
ロシア軍は3月4日、ザポリージャを占拠した。グロッシー事務局長は、紛争中のウクライナの原子力施設職員の極めてストレスが多い、困難な状況下、とりわけザポリージャとチョルノービリサイトの状況について、繰り返し懸念を表明している。チョルノービリについては、ロシア軍は3月31日に撤退するまで5週間占拠していた。
また今月初めには、ウクライナはIAEAに対して、ザポリージャのスタッフの「モラルと精神状態」は「極めて低い」と報告している。
4月28日に発表された原子力安全やセキュリティ、保障措置に関するサマリーリポートのなかで、グロッシー事務局長はザポリージャの状況は「引き続き困難な状況が続いており、運転管理はウクライナのプラント運営者のままでありつつも、同サイトにロシア軍とロスアトム関係者がいるため引き続き注意が必要である」と述べている。
また報告書では、IAEAが保障措置活動の調整を続けているが、状況は持続不可能になるだろうとし、「それゆえ、事務局長は必要な協議の後、できるだけ早期にザポリージャ原子力発電所への訪問の機会が得られるよう提案している」と述べている。
保障措置に関して、IAEAによると、チョルノービリ原子力発電所からIAEAのウィーン本部への保障措置データの遠隔送信は、今週IAEAの技術者が同サイトに設置されている無人モニタリングシステムを更新し、衛生技術に基づく新たな送信チャンネルを設置した後、徐々に復旧している。チョルノービリからの送信は、2か月間中断していた。ウクライナの4サイトで運転している原子力発電所については、遠隔データはIAEAに送信されている。
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第66号 2022年4月28日(一部仮訳)
ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は、本日ウクライナからIAEA本部(ウィーン)に戻り、記者会見を行った。そこで、IAEAの専門家がチョルノービリ立入禁止区域で実施した初期の放射線モニタリング結果やウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談を含む、チョルノービリ原子力発電所の訪問について記者にブリーフィングを行った。
また事務局長は本日、ウクライナの原子力施設の安全やセキュリティ、保障措置、そしてウクライナの放射性物質に関わる活動に関する状況の概要を示すレポートを公表した。同報告書には、ウクライナの支援要請を受けてIAEAが実施した活動や事務局長率いるIAEA専門家ミッションがウクライナを訪問して得た初期の知見も含まれている。
本日、ウクライナの規制当局はIAEAに対し、2022年4月16日に現場のビデオ監視で南ウクライナ原子力発電所の真上を飛ぶミサイルの飛行が記録されていたことを正式に報告した。グロッシー事務局長は、「IAEAはこの件を調査中であり、もし確認されれば極めて深刻である。このようなミサイルが誤射となった場合、原子力発電所の物理的な健全性に深刻な影響を与え、原子力事故につながる可能性があった」と述べた。
チョルノービリ原子力発電所サイトでは、2022年2月27日現在、保障措置遠隔データの送信が中断していた。今週、IAEAの査察官が核物質の存在を確認したため、同サイトの核物質に関する知識の継続性が再確立された。さらに、IAEAの技術者は、サイトに設置されている無人モニタリングシステムを更新し、衛星技術に基づく新しい送信チャンネルを設置した。以降、遠隔データの送信は部分的に再開されたが、施設運営者による追加作業が必要である。ウクライナの他の原子力発電所については、IAEA本部への遠隔データの送信が行われている。
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第65号 2022年4月27日(一部仮訳)
IAEAの原子力安全やセキュリティ、保障措置の専門家は、今週チョルノービリ原子力発電所で機器の搬入や放射線評価、保障措置モニタリングシステムの復旧に当たっている。専門家らは、ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長が率いるIAEA支援ミッションの一員として4月26日に現地に到着した。グロッシー事務局長は同日、キーウを訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領とハーマン・ハルシチェンコ エネルギー相と高官級会談を行った。
グロッシー事務局長は、ウィーンのIAEA本部に戻り、明日28日午後2時30分から記者会見を行う予定である。
保障措置関連では、IAEAによると、チョルノービリ原子力発電所に設置されているモニタリングシステムからの遠隔データの送信の復旧に取り組んでいるという。ウクライナの他の原子力発電所からは、IAEA本部にデータは送信されている。
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第64号 2022年4月26日(一部仮訳)
ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は本日、原子力安全やセキュリティ、保障措置の専門家からなるIAEAのチームとともに、チョルノービリ原子力発電所に到着し、機器の搬入や放射線評価の実施、保障措置モニタリングシステムの復旧作業を行う。
グロッシー事務局長は、「原子力発電の歴史上、最も深刻な事故であるチョルノービリ原子力発電所事故から今日が36年目にあたる。私は、原子力事故の犠牲者とこの地の再建と保護に精力的に取り組んできた全ての人々に敬意を表するために、ここに来た」と述べた。また「また、現在のチョルノービリ原子力発電所のスタッフにお会いできることを光栄に思うし、この極めて困難な時期における彼らのレジリエンスと勇気に個人的にも感謝したい。彼らはヒーローであり、私を含めIAEAの全スタッフから尊敬と称賛を集めている」と続けた。
グロッシー事務局長らは、ウクライナ側から、現在のウクライナの原子力施設の原子力・放射線安全や核セキュリティの状況について報告を受けた。グロッシー事務局長は、「IAEAとウクライナは本日、ウクライナの原子力施設の安全と確実性維持に尽力しているスタッフに対するIAEAの支援とサポートを調整するべく、チョルノービリ原子力発電所に関するワーキンググループの設立で合意した」ことを明らかにした。
その後、グロッシー事務局長はキーウに飛び、ウォロディミル・ゼレンスキーウクライナ大統領と面会した。同事務局長は、「大統領にお会いできたことを光栄に思い、ウクライナの原子力施設の安全性とセキュリティの状況について徹底的に議論した。IAEAは今後もウクライナを支援することを約束した」と述べた。
◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第63号 2022年4月25日(一部仮訳)
ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は本日、IAEA初の本格的な安全やセキュリティ、保障措置の専門家からなる支援ミッションを率いてウクライナに訪問する。IAEAの一団は、チョルノービリ原子力発電所に火曜日に到着し、機器の搬入や放射線評価の実施、保障措置モニタリングシステムの復旧作業を行う。
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