ウクライナの原子力発電所の状況 #92


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 175号(現地時間2023724日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)のサイト周辺で指向性対人地雷を確認したことを明らかにした。

7月23日の立ち入りで、IAEAチームはサイトの内部と外部を隔てる緩衝地帯に複数の地雷を確認した。専門家によると、プラント作業員が立ち入ることができない制限区域にあり、サイトから離れていた。チームの立ち入り中、内側の敷地境界内では何も確認できなかったという。

グロッシー事務局長は「私が以前報告したように、IAEAはプラント周囲の外側に地雷が敷設されていることを確認しており、また、内部の特定の場所にも地雷が敷設されていることを確認している。我々のチームはこの具体的な調査結果をプラントに突き付けたが、軍の管理区域内における軍事活動の一環であるとの返答だった」とグロッシー事務局長は語った。

「しかし、そのような爆発物をサイトに置くことは、IAEAの安全基準や核セキュリティガイダンスと矛盾しており、プラントスタッフにさらなる心理的圧力をかけることになる。IAEAの観測とプラント側の説明に基づく初期評価で、これらの地雷が爆発してもサイトの原子力安全・核セキュリティシステムには影響しないとしても、IAEAチームは今後もプラントとの交渉を続ける」と付け加えた。

ここ数日から数週間、ZNPPに駐在するIAEA専門家は、重火器を見ることなく、サイト全体で検査と定期的な立ち入りを行っている。IAEAはまた、特に関心の高い3、4号機を含む原子炉建屋の屋上とタービン建屋への立ち入りを引き続き要請する。

本日、専門家は、6号機の中央制御室、緊急時制御室、安全システムの配線室、タービン建屋の一部を視察し、主給水ポンプ、主タービンオイルタンク、主復水器を見学した。タービン建屋内のすべての場所を訪れることはできなかったが、地雷や爆発物は確認できなかった。

7月22日夕刻、IAEAチームは、ZNPPから少し離れた場所で数回の爆発音を聞いた。

また週末には、ZNPPは一時的に750kVの主要送電線への接続を失い、土曜日の約8時間、外部電源を330kVの予備送電線1系統に依存したが、サイト内の原子力安全とセキュリティには何の影響もなかった。ZNPPがIAEAに伝えたところによると、原因は現場から少し離れた場所にある開閉所での技術的な不具合だった。この出来事は、軍事紛争時の同サイトの脆弱な外部電源状況を改めて浮き彫りにする。原子力発電所は、原子炉の冷却やその他の原子力の重要な安全・セキュリティ機能のために電力を必要とする。

ZNPPは4号機の冷温停止から温態停止への移行計画を開始しており、関連するテストが実施され、4号機が温まっていることをIAEAの専門家に報告した。4号機は7月25日に温態停止状態になる見込みである。これが完了すれば、現在温態停止中の5号機は、冷温停止中にのみ可能な予防保全活動を実施するため、冷温停止状態となる。他の原子炉は引き続き冷温停止状態にある。以前の報告にあるように、ウクライナの国家規制当局であるSNRIUはすでに、6基すべての運転を冷温停止状態に制限する規制命令を発出している。

IAEAの専門家は、6月初めに下流のカホフカ・ダムが破壊され、それに続いてZNPP付近の巨大な貯水池が枯渇したことを受けて、ZNPPの6基を冷却するための水やその他の重要な原子力安全・セキュリティ機能の利用可能性に関する状況を引き続き注意深く監視している。IAEAチームの報告によると、利用可能な水の供給は比較的安定しており、使用と蒸発によって水位は1日あたり1 cm程度減少している。このサイトでは、何か月かは十分な水を確保できる。

本日、IAEA専門家の新しいチームがリウネ原子力発電所に到着し、今週にはフメルニツキーと南ウクライナのサイトにも新しいチームが到着し、現在のチームと交替予定である。

ウクライナの放射線源に関する放射線安全および核セキュリティの状況を評価し、設備やその他必要要件を特定するためのミッションの一環として、IAEAのウクライナにおける放射線源の安全およびセキュリティに関するIAEA支援/援助ミッション(ISAMRAD)が本日、キーウに到着した。同ミッションはまた、今週、ハリキウの研究所や施設を訪問し、現地の原子力安全とセキュリティの状況を評価する。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-175-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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