ウクライナの原子力発電所の状況 #95


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第179号(現地時間2023年8月11日)[仮訳]

ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)は現地時間8月10日19時頃、16時13分に切断された750㎸の主要送電線に再接続された。同送電線が切断されたのは、この日2回目。

サイトに駐在するIAEAチームは、川の南岸の開放開閉所から5.5㎞の地点で、過電流保護システムが作動したため、断線が発生したと知らされた。

断線中、ZNPPは、原子炉冷却とその他の安全機能に必要な外部電力を330㎸の予備送電線に依存した。外部電源の喪失はなく、非常用ディーゼル発電機を起動する必要もなかった。

ZNPPの外部電源の状況は依然として極めて脆弱であり、原子力安全とセキュリティの状況が不安定であることを浮き彫りにしている。

昨日報告したとおり、ZNPPは4号機の格納容器内にある蒸気発生器4基のうち1基で、水漏れが検知されたため、冷温停止状態への移行を開始している。同機は以前、さまざまな原子力安全の目的で蒸気を供給するために、温態停止状態にあった。

6号機は現在蒸気の供給を継続するために、温態停止状態に移行中である。同機はまだ温態停止状態にないため、現在ZNPPに蒸気は供給されていない。

IAEAは引き続き、プロセス蒸気の外部供給源の設置を強く推奨しており、これは原子力安全の観点から、ZNPPの蒸気需要に対して最も安全な長期的解決策となる。

ZNPPのその他号機は冷温停止状態のままである。以前報告したとおり、ウクライナの規制当局であるSNRIUは、6基全ての運転を冷温停止状態に制限する規制命令を発出している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-179-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine

ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 178号(現地時間2023810日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)4号機の格納容器内にある4台の蒸気発生器のうち1台で水漏れが検出されたことを受け、本日4号機を温態停止から冷温停止に移行し始めたと発表した。

ZNPPは、水漏れの正確な原因を特定し、蒸気発生器の修理を実施するため、4号機を冷温停止状態にする。外部への放射性物質の放出はない。同時に、今後3日間にわたり、ZNPPは6号機を温態停止に移行し、サイト内への蒸気供給を継続する。

6号機は4月21日以来、安全システムの点検と保守を行うため、冷温停止状態にあった。IAEA専門家は、この1週間、ZNPPが6号機の安全システムの一部について特定のメンテナンスを行っていることを確認済み。6号機の温態停止への移行を開始する前に、この作業と安全システムのすべてのテストが正常に完了したという。現地にいるIAEAチームは、4号機と6号機の停止の移行作業を注意深く監視している。

ZNPPの他号機は冷温停止状態のままである。

以前に報告されたように、ウクライナの国家規制当局であるSNRIUは、6基すべての運転を冷温停止状態に制限する規制命令を発出している。

サイトでは、貯蔵タンクに溜まった放射性廃液の処理など、さまざまな原子力安全目的のために、温態停止状態の1基から供給される蒸気を利用している。IAEAは引き続き、外部にプロセス蒸気供給源の設置を強く勧告しており、これは原子力安全の観点から、同サイトの蒸気ニーズに対して最も安全で長期的な解決策となる。

本日、750kVドニプロフスカ送電線が2回切断された。最初は13時37分までの約12時間、そして現地時間16時13分に再び切断され、現在切断された状態である。これらの750kV送電線が切断されたため、例えば冷却水を汲み上げるなどの安全機能を果たすために必要な電力を供給するため、ZNPPは唯一残った330kVの予備送電線に頼らざるを得なくなった。外部電源の完全喪失はなく、非常用ディーゼル発電機を使用する必要はない。

ZNPPは、2022年初めに紛争が始まって以来、外部電源に大きな問題を抱えており、現在最前線に位置するサイトが直面している原子力安全とセキュリティのリスクを悪化させている。

グロッシー事務局長は、「度重なる送電線の切断は、ZNPPにおける原子力安全とセキュリティの状況が引き続き不安定であることを浮き彫りにしている」と述べた。

ZNPPでは、冷却水の供給は比較的安定している。ZNPPの冷却池の水位は1日あたり約1cmずつ減り続けているが、隣接するザポリージャ火力発電所(ZTPP)からの放水路は、ZTPPの取水路から水を汲み上げることで定期的に補充されている。

この1週間、IAEAの専門家は、サイト内のさまざまな場所で複数回、巡回を実施した。

8月4日、チームは乾式使用済燃料貯蔵施設を訪れ、貯蔵されている燃料キャスクの健全性を確認した。

8月8日、チームは2号機の中央制御室、緊急時制御室、その他の安全関連室を訪れた。これらのエリアでは、地雷や異常な物体は確認されなかった。しかし、2号機のタービン建屋では、車両整備用のエリアに軍用トラックが何台も駐車しているのを確認した。

この1週間、新たな場所での地雷や爆発物は確認されなかったが、2023年7月23日に発見された地雷の存在を確認した。

本日、IAEA専門家は新燃料貯蔵施設の1か所を訪れた。専門家は、新燃料が安全かつ確実に保管されていることを確認した。

先週、IAEA専門家が3号機と4号機の屋上に立ち入りをしたのに続き、チームは他4基の屋上への立ち入りを引き続き要請している。

IAEA専門家はZNPPから、8月9日にエネルホダル近郊でドローンが目撃され、迎撃されたとの報告を受けたが、これはZNPPや隣接する火力発電所、市とは無関係であった。ZNPPの安全性に影響はなく、IAEAの専門家もZNPPで何の音も観測もしていないことを確認した。

フメルニツキー原子力発電所、リウネ原子力発電所、南ウクライナ原子力発電所、およびチョルノービリ・サイトに駐在するIAEA専門家は、昨日、全国で数回の空襲警報が発生したことを報告した。各チームはいずれも、施設の安全とセキュリティに影響はなかったと報告している。IAEAは、フメルニツキー原子力発電所から約60キロ、リウネ原子力発電所から約150キロの地域で昨夜攻撃があったとの報告を承知している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-178-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)