国際エネルギー機関(IEA)「2024年版世界エネルギー見通し(WEO 2024)」原子力拡大の加速化を予測

2024年11月12日

一般社団法人 日本原子力産業協会

ⒸIEA

国際エネルギー機関(IEA)は10月16日、世界のエネルギー・ミックスに関する2050年までの見通しを3通りのシナリオ*で解説した、最新の年次報告書の「ワールド・エナジー・アウトルック(WEO)2024年版」を公表。原子力の拡大を予測するとともに、クリーンエネルギーへの移行を加速・拡大するためには、より強力な政策と大規模投資の必要性が高まっていると指摘しました(10/21付原子力産業新聞にて既報)。

IEAによると、現在の地政学的緊張が続く一方で、2020年代後半に石油と天然ガスが供給過剰となり、太陽光や蓄電池など、主要なクリーンエネルギー技術の製造能力も大幅過剰となるとの見通しを示し、これまでとは異なる新たなエネルギーの市場環境になると予測。燃料価格の圧力から解放され、クリーンエネルギーへの移行に対する投資強化と非効率な化石燃料補助金の撤廃に取り組む余地が生まれることにより、政府や消費者による選択が、今後のエネルギー部門と気候変動に対する取組みに大きな影響を及ぼすであろう、との見方を示しています。

原子力については、手頃な価格で確実なクリーンエネルギー移行の鍵となる7つの技術(太陽光、風力、原子力、電気自動車、ヒートポンプ、水素、炭素回収)のうちの一つとしたうえで、原子力の発電設備容量と発電電力量はともに、他の低炭素電源よりも遅いペースではあるものの、3つのいずれのシナリオにおいても拡大すると予測しました。

IEAは、2010年から2023年にかけて、電力消費量は総エネルギー需要の2倍の速さで増加し、さらに現在から2035年の間に、電気自動車の普及、エアコンの使用、経済のデジタル化、人工知能(AI)の拡大などにより、電力需要はエネルギー需要全体の6倍の速さで成長すると予測しています。F. ビロルIEA事務局長は、「エネルギーの歴史は、石炭、石油の時代から、今や急速に電気の時代へと移行している」との認識を示しています。

ここでは、WEO2024報告書から、主なエネルギー動向、各シナリオの設定と各シナリオにおけるエネルギーおよび電力全般の見通しなど、種々の表を含めてポイントを紹介します。約400頁の報告書は、図をふんだんに使い、興味深い内容となっているので、詳細については、報告書をぜひご参照下さい。

* WEO2024では、現行のエネルギー政策に基づく「公表政策シナリオ」(STEPS)、各国政府の誓約目標が期限内に完全に達成されることを想定した「発表誓約シナリオ」(APS)、2050年ネットゼロ目標を達成する「2050年実質ゼロ排出量(NZE)シナリオ」と3通りのシナリオを用いて解説しています。

主なエネルギー関連動向と課題

  • クリーンエネルギーは、2023年には5億6,000万kW以上の再生可能エネルギー(再エネ)が新たに追加されるなど、かつてない勢いでエネルギーシステムに参入しているが、その導入スピードは技術や国によってまちまちである。クリーンエネルギー・プロジェクトへの投資額は毎年2兆米ドルに近づいており、これは石油、ガス、石炭の新規プロジェクトに費やされる総額のほぼ2倍である。また、ほとんどのクリーン技術のコストは、Covid-19パンデミック後に上昇後、再び下降傾向にある。
  • 再エネの発電設備容量は、今日の42億5,000万kWからSTEPSでは2030年までに100億kW近くまで拡大する。COP28で設定された3倍増の目標には届かないが、世界の電力需要の伸びをカバーし、石炭火力を減少させるには十分な量である。多くの国で再び脚光を浴びている原子力発電と合わせて、低炭素電源は2030年までに世界の電力の半分以上を発電する見通し。
  • 中国が、2023年に世界で追加された新たな再エネの発電設備容量の60%を占めており、中国の太陽光による発電電力量だけでも、2030年代初頭までに現在の米国の総電力需要を上回る見込み。
  • 太陽光、風力、原子力、電気自動車、ヒートポンプ、水素、炭素回収の7つのクリーンエネルギー技術が、安価で安全なエネルギー転換の鍵となる。これらの技術は、APSとNZEシナリオでは、2050年までのCO2排出削減量の4分の3を占め、バイオエネルギーや地熱など、他の再エネやエネルギー効率が残りを補完する。電力網とエネルギー貯蔵インフラを含む、これらの導入に対する障壁を克服することが、世界的に優先されるべき。
  • 世界中で11,000以上のデータセンターがあり、それらの多くは一定の地域に集中しているため、電力市場への局所的な影響はかなりのものになる可能性がある。しかし、世界レベルで見ると、2030年までの電力需要増加全体に占めるデータセンターの割合は比較的小さい。STEPS で想定されているよりも頻繁で猛烈な熱波、あるいは新しい電化製品 (特にエアコン) に適用される高い性能基準が、データセンターの上方予測ケースよりも、電力需要に大幅な変動をもたらす。
  • 過去数十年間、電力へのアクセスの進歩は目覚ましいものがある。2000年以降、世界で電力にアクセスできない人の数が9億2,500万人減少し、40か国が少なくともほぼ普遍的な電力へのアクセスを達成した。しかし、約7億5,000万人が未だ電力にアクセスできず、その進展にはばらつきがある。この期間に電力へのアクセスを獲得したのは、アフリカではわずか5人に1人だった。多くのアジア諸国が普遍的なアクセスに近づくにつれて、注目はますますアフリカに向けられている。アフリカでは、多くの国で債務水準が高いなど、危機の影響が長引くなか、勢いを取り戻すのがより困難になっている。
  • クリーンエネルギーへの移行の勢いは増しているものの、世界は気候目標に沿った軌道からはまだ遠い。STEPSには前向きな進展もあるが、現在の政策設定では、2100年までに世界の平均気温が2.4℃上昇する見通しであり、気候変動によるリスクはますます深刻化する。

エネルギー需要(供給)の現状と今後の見通し

  • 過去10年間で、世界のエネルギー・ミックスに占める化石燃料の割合は、2013年の82%から2023年には80%へと徐々に減少。この期間にエネルギー需要は15%増加し、この増加の40%はクリーンエネルギー、具体的には、電力および最終用途部門の再エネ、原子力、および炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)などの低炭素燃料がまかなっている。
  • 先進国では、過去10年間にエネルギー需要全体が年平均0.5%減少。石油は2005年にピークを迎え、石炭は2008年以降構造的に減少。原子力は毎年0.5パーセントポイント程度減少しているが、再エネは2013年以降、年率3%増加。
  • 世界人口の85%近くを占める新興国・開発途上国のエネルギー需要は、人口の増加、経済規模、工業生産高などの拡大を背景に、過去10年間で年率約2.6%増加。急速な発展により、クリーンエネルギーによる石油、ガス、石炭の置き換えには、より一層の努力が必要。
  • STEPSでは、全体的なエネルギー需要の伸びが鈍化するにつれてクリーンエネルギーの導入が加速、2030年までに3種類の化石燃料(石油、天然ガス、石炭)の需要すべてがピークに達する。石炭需要の減少が進むと、2030年までに世界のエネルギー・ミックスで石炭が天然ガスに追い抜かれる。クリーンエネルギーの供給は、2023年から2035年の間に総エネルギー需要を上回る成長を遂げる。太陽光と風力の急増に牽引され、クリーンエネルギーは2030年代半ばに最大のエネルギー源となる。
  • STEPSでは、再エネの供給量が3倍に増加し、化石燃料の消費量が2023年の総エネルギー需要の80%から2050年には58%に低下。APSでは、2035 年までにクリーンエネルギーが世界のエネルギー需要の40%を占め、2050 年までに4分の3近くに増加。NZE シナリオでは、2050 年にはクリーンエネルギーが世界のエネルギー需要の90%をまかなう。

<石油需要>

STEPSでは、世界の石油需要は2030年までに日量1億200万バレルでピークに達し、その後2035年までに2023年の水準である日量9,900万バレルまで低下。全体的な石油消費は、道路輸送におけるEVの増加に伴う、石油需要の減少によって低下する。EV のほか、プラスチックのリサイクル率や化学製品の材料効率の向上などにより、APSでは、2035 年の石油需要は 2023 年のレベルに比べて17%減少、NZE シナリオでは、2035 年までに石油需要が日量5,800万バレルに減少。

<天然ガス需要>

STEPSでは、天然ガス需要の伸びは2023~2035年で年平均0.5%で、2010~2023年の平均年率2%と比較して低い。需要は2030年頃に最大レベルに達し、その後2050年までわずかに減少。主に、再エネの導入加速、効率性向上、最終用途の電化による。APSでは、需要は2020年代後半に減少し始め、2035年には2023年よりも17%低くなる。NZEシナリオでは、需要は2023年から2035年まで年間約5%減少し、2035年から2050年まで平均で年間6%減少。

<石炭需要>

今後数年間、すべてのシナリオで石炭需要は減少すると予測されているが、その減少の時期と速度は気候変動対策の強さと密接に関係している。STEPSでは、需要は2023年のレベルから2035年までに約25%減少し、先進国では急速に減少、新興国と開発途上国では緩やかな減少となる。2035年以降の消費量の落ち込みはより広範囲に及び、石炭消費量は2050年には2023年よりも約45%減少。APSでは需要の落ち込みはより急速で、2035年までにすでに2023年よりも約45%減少し、2050年までに75%減少する。NZEシナリオでは、世界の需要は2035年までに約70%、2050年までに90%以上減少。

電力需要の現状と今後の見通し

電力需要は過去10年間、エネルギー需要全体の約2倍のペースで伸びており、世界経済の電化が進むにつれて加速。STEPSでは毎年日本の需要と同等規模の電力が追加され、NZEではさらに急速に増加する。

  • 2023年の世界の電力需要は2.5%以上増加し、これは過去10年間の平均と同様の割合。2013年以降の需要増加の3分の2は中国によるもので、産業プロセスの電化と、電化製品や冷房用の電力需要の伸びが牽引。需要が急増している他の地域は、インド、中東、東南アジアの一部で、建物が電力需要の増加に主要な役割を果たしている。
  • 2023年から2030年にかけて、電力需要の伸びは、年平均でSTEPSでは3.3%、APSでは3.5%以上、NZEシナリオでは4.5%に加速。2023年から2050年にかけての年平均伸び率は、STEPSでは2.4%、APSでは3%以上、NZEシナリオでは3.5%。すべてのシナリオで、新興国と開発途上国が2050年までの追加電力需要の約70%を占める。
  • 中国だけで、2030年までの電力需要増加分の約45%、2030年から2050年までの増加分の約25%を占める。インドは、すべてのシナリオで年間4%以上の需要増加を背景に、2050年までに世界第3位の電力消費国となる。その他の新興国と開発途上国でも需要の堅調な増加が見込まれる一方、先進国では、2050年までの年間平均成長率は低く、STEPSでは1.8%、NZEシナリオでは2.6%になる。
  • 昨今注目されているデータセンターやAIの電力需要の伸びについて、成長が継続することは間違いないが、そのペースには不確定要素があり、市場動向、アルゴリズム開発、ハードウェアとソフトウェアの効率改善などの要因に影響される。
  • IEAの評価によると、2030年までの需要の伸びはSTEPSでは1,700億kWhも変動する可能性がある。また、データセンターの電力需要は増加するものの、2030年までの世界の総電力需要の増加量に占める割合は比較的小さいことが予想される。しかし、主要なデータセンター市場では、電力部門が、国または地域レベルでより重要になることを示唆。

電力供給の現状と今後の見通し

  • 2023年、化石燃料が世界の電力供給(発電電力量)の60%を占めたが、これは過去50年間で最も低いシェアであった。石炭シェアが最も多く36%を占め、天然ガスのシェアも22%を占めた。化石燃料以外では、原子力シェアが9%とわずかに低下したが、これは30年前の半分である。水力の発電電力量が減少したが、再エネは初めて世界の発電電力量の30%に達し、風力と太陽光を合わせて13%と、わずか5年前の2倍になった。
  • 太陽光と風力をはじめとする再エネは、今後10年以上、電力システムで大きな役割を果たす。STEPSでは、太陽光と風力を合わせた発電電力量は、2023年から2030年にかけて3倍近くに増加、発電電力量の増加分の90%以上を占め、石炭を抜く。その石炭は2025年頃にピークを迎え、その後着実に減少に転じる。2035年までには、太陽光と風力で発電電力量の40%以上をまかなえるようになり、2050年までには60%近くに拡大。原子力発電シェアは、どのシナリオでも10%近くにとどまる見通し。
  • 太陽光と風力の利用を大規模に増やすためには、送電網をアップデートし、複数の形態のエネルギー貯蔵の開発などを通じて、電力系統の柔軟性を拡大する対策が必要。水力の発電電力量は、降水量と気温に左右されるため年によって変動するが、全体的な傾向は緩やかな成長である。原子力の発電電力量も世界レベルで着実に増加し、天然ガス火力による発電電力量は2020年代後半にピークに達した後、現在のレベル前後で安定する。
  • より野心的なシナリオでは、移行を加速するために再エネに大きく依存する。APSでは、風力と太陽光の拡大がSTEPSよりも速く、他の再エネと原子力の拡大が補完する。この結果、2035年までに削減対策なしの石炭火力の発電電力量は60%近く削減され、天然ガスの消費量は20%削減される。NZE シナリオでは、追加される再エネ、さらなる原子力発電、炭素回収技術と低炭素水素の開発・導入により、2040 年までに電力部門の脱炭素化が完了。削減対策なしの石炭火力による発電電力量は2040年までにゼロとなり、削減対策なしの天然ガス火力による発電電力量は80%削減される。

原子力発電の現状と今後の見通し

  • 原子力発電に対する政策的支援が近年高まっている。2023年12月には、20か国以上が、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にすることを誓約した。ベルギーでの既存原子炉の運転期間延長、スイスでの新規原子力発電所開発の禁止解除、スウェーデンとポーランドで優先事項である新規建設、フランスでの原子力の重要性の再認識など、欧州のいくつかの国での注目すべき動きがある。多くの国々が小型モジュール炉(SMR)に関心を示しており、すでにSMRを稼働している中国とロシア以外では、2030年頃に最初のプロジェクトが運転を開始すると予想されている。
  • 原子力発電に対して前向きな国々では、原子力発電は低炭素電力の重要な供給源となり得る。現在、世界の電力の9%を供給している。原子力発電は、ベースロード電力を提供し、送電網の安定性と柔軟性を高め、送電網の容量利用を最適化することができる。それゆえ、2050年までにネットゼロエミッションを達成するための、低炭素技術のポートフォリオの貴重な一部となる。
  • 原子力発電設備容量と発電電力量は、他の低炭素電源よりもペースは遅いものの、いずれの3つのシナリオにおいても拡大する。新興国と開発途上国、特に中国が成長を牽引し、STEPSでは2035年までに世界の原子力発電設備容量の増加分の40%を、NZEシナリオでは、ほぼ50%を占める。このような増加予測により、中国は、各シナリオにおいて、2030年頃までに世界最大の原子力発電設備容量を有する国となる。
  • 世界全体で2023年に4億1,600万kWだった原子力の発電設備容量が、2050年にはSTEPSで6億4,700万kWに、APSで8億7,400万kWに、NZEでは10億1,700万kWにそれぞれ拡大すると予測。
  • 小型モジュール炉(SMR)は、カナダ、フランス、日本、韓国、英国、米国など、いくつかの先進国で開発中である。中国とロシアも開発を進めている。適切なコストで市場投入に成功すれば、世界中のより多くの市場で原子力発電の新たな機会を創出するであろう。

電力部門のCO2排出量

  • 世界最大の炭素排出部門である、電力部門のCO2排出量は、2023年には153億トンとなり、2022年の149億トンから増加し、世界のエネルギー関連総排出量の40%を占めた。干ばつによる水力発電の稼働不足がなければ、2023年の排出量は2022年のレベルより減少していたと見られる。電力部門の炭素強度(CO2原単位)は低下しているものの、電力需要の増加により、近年排出量が増加。2010年以降、電力部門の総排出量の約70%は石炭によるものだが、先進国、新興市場国・開発途上国の発電ミックスは現在、石炭のCO2原単位に比べて30~60%低い。同期間に、先進国の発電ミックスは、平均して3分の1ほど炭素強度が低く、新興国や開発途上国の3倍以上の速さで脱炭素化が進んでいる。
  • STEPSでは、排出量は2035年までに30%近く、2050年までに50%近く減少し、2050年には1994年の水準に戻る。2035年までに、新興国、開発途上国からのCO2排出量は先進国からの排出量の6倍以上(2010年は1.4倍)になり、これら排出量のほぼ半分は中国によるものである。しかし、新興国、開発途上国の電力部門の排出量は、STEPS、APSともに2020年代半ばにピークを迎える。
  • 石炭火力や天然ガス火力の利用減少により、APSでは、CO2排出量は2035年までに50%減少し、2050年までに80%以上減少。NZEシナリオでは、CO2排出量は2035年までに80%減少し、2045年直前に世界全体でネットゼロに達する。石炭からの移行は、電力システムにおけるネットゼロエミッション達成の中核であり、先進国は2035年までに、中国は2040年までに電力部門の脱炭素化を達成する。石炭が廃止されると、天然ガスが主な排出源となる。
  • 今後数年間の電力部門におけるクリーンエネルギー移行のスピードは、世界のCO2排出量の動向と長期的な気温上昇のレベルを決定する重要な要因となるだろう。

(参考)3シナリオの詳細説明

公表政策シナリオ(STEPS: Stated Policies Scenario

このシナリオは、世界各国の最新の政策設定を詳細に読み解いたうえで、エネルギー部門の今後の方向性を示すものである。実施中または発表済みのエネルギー、気候、関連産業政策を考慮に入れている。これらの政策目的が自動的に達成されると想定しているわけではなく、政策が実施に向けた具体的対策によって裏付けられている範囲でのみ、シナリオに組み込まれる。毎年、多くの国が新しい政策を追加し、既存の政策を放棄する国もある。毎年、STEPSではこれらの変更が考慮されている。今回も例外ではない。STEPS は、2100 年に気温が2.4 °C上昇すると予測している(50%の確率)。

発表誓約シナリオ(APS: Announced Pledges Scenario

  • このシナリオは、政府の政策を詳細に読み解くという同じ考え方から始まるが、その実施については異なる見方をしている。重要な違いは、このシナリオでは、長期的なネットゼロ排出目標やNDC(国が決定する貢献、Nationally Determined Contribution)の誓約など、すべての国のエネルギーおよび気候目標が、完全かつ期限内に達成されることを想定している点である。ほとんどの政府が長期的な誓約を果たすための政策をまだ整えていないことを考慮すると、これは強い仮定である。長期的なエネルギー目標や排出目標のない国でも、STEPSとは異なる道をたどる。その理由は、それらの国の投資選択は、他の国の行動によって可能になった、さまざまなクリーンエネルギー技術の大幅なコスト削減によって形作られ、その恩恵を受けると想定されているためである。APSは、2100年の気温上昇を1.7℃としている(50%の確率)。

2050年までのネットゼロエミッション(NZE)シナリオ: Net Zero Emissions by 2050 Scenario

  • このシナリオは、世界のエネルギー部門が2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするための道筋を描いている。これは、長期的な地球温暖化を1.5°Cの上昇に抑え、オーバーシュートを限定的に抑えること(50%の確率)と一致している。NZEシナリオは、特に2030年までに近代的なエネルギーサービスへのユニバーサル・アクセスを実現し、大気質の大幅な改善を確保することにより、エネルギー関連の主要な国連持続可能な開発目標(SDGs)も達成する。世界の気温上昇は、すでに1.5°Cの制限に近づいている、あるいはそれを上回っているが、これは目標自体が達成不可能であることを意味するものではない。しかし、世界の排出量が増加し、対策が将来に必要な水準に達しない年が続くと、この道筋はより険しく、達成するのが困難となる。

※この概要資料は、IEA資料を基に当協会が作成したものであり、当協会が本資料に対して単独で責任と義務を負います。本資料は、いかなる形においてもIEAによって保証されたものではありません。

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