WNA「世界の原子力発電所運転実績レポート2023」図表紹介

2023年8月30日

世界原子力協会(World Nuclear Association, WNA)はこのほど、「世界の原子力発電所運転実績レポート2023(World Nuclear Performance Report 2023)」を発表しました。これによると、2022年の原子力発電量は合計2兆5,450億kWhで、2021年よりも1,000億kWh強減少したものの、6年連続で2兆5,000億kWh以上を発電、水力発電に次ぐ、世界のクリーン電力の約1/4を供給しました。

2022年は中国で2基、フィンランド、パキスタン、韓国、アラブ首長国連邦(UAE)でそれぞれ1基、計6基が送電を開始し、中国で5基、エジプトで2基、トルコで1基の計8基が建設を開始しました。一方、英国で3基、米国、ベルギーでそれぞれ1基、計5基が閉鎖しましたが、4年ぶりに運転開始した原子炉の数が閉鎖炉の数を上回りました。

報告書はまた、2022年の原子力発電量減少の主な要因として、原子炉配管の応力腐食割れにより多くの原子炉が停止したフランスや2021年末に3基が閉鎖したドイツ、そしてザポリージャ原子力発電所の6基が停止しているウクライナなどによる影響を挙げています。報告書は今後、フランスでは原子炉の運転再開により、原子力発電量が今後2年間で回復すると予想する一方、2023年4月に商業用原子炉を全廃したドイツ、そして長引くウクライナ紛争が欧州の原子力発電量全体に影響を及ぼし続ける、との見方を示しています。

対照的に開発が活発化しているのはアジアです。報告書によると、アジアの原子力発電量は昨年、370億kWh増加しました。過去10年間で、アジアの原子力発電量は2倍以上になり、現状、西・中欧の原子力発電量を上回っています。報告書は、世界で建設中の原子炉の3/4がアジアで建設中であり、今後もこの傾向が続くと見ています。

さらに報告書は、脱炭素化とユニバーサル・アクセスの達成には、原子力発電の急速な拡大が必要であるとしたうえで、既設原子力発電所の最大限の活用(長期運転)と新規建設の促進の必要性を指摘しています。サマ・ビルバオ・イ・レオンWNA事務局長は、現在の80年運転をめぐる動きもふまえつつ、「2050年までに温室効果ガス排出量をネットゼロにするためには、少なくとも世界中の原子力発電設備容量の3倍が必要であり、建設開始と送電開始の速度を現状よりももっと速める必要がある」と述べています。

下記に報告書の主な図表とポイントを紹介します。


◇2022年の原子力発電量は2兆5,450億kWh(2021年: 2兆6,530億kWh)で、2021年より約1,000億kWh減少。

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◇2022年、アジアで原子力発電量が370億kWh増加。南米、アフリカでは僅かに減少。北米での発電量の減少(60億kWh)はパリセーズの閉鎖、東欧・ロシアの発電量の減少(220億kWh)は、ウクライナの発電量の減少による。西・中欧の発電量の減少(1,120億kWh)は、ドイツの原子炉閉鎖およびでフランスでの度重なる原子炉停止による発電量の減少に起因。

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◇2022年末の原子力発電設備容量は3億9,400万kWで、2021年から500万kW増加、2022年に実際に発電した原子力発電設備容量は3億6,300万kWで、2021年から700万kW減少。2011年の福島第一事故以降、日本の多くの原子炉は運転可能だが、再稼働に向けた審査や工事中で長期間停止している。

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◇2022年末の運転可能な原子炉数は437基。 2021年から1基増加、運転可能な原子炉の7割近くがPWR。 2018~2022年にかけて運転開始した36基のうち2基を除いてすべてPWR。

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◇2022年の世界の原子力平均設備利用率は、80.5%(前年から1.8ポイント減)。2000年以降、世界的に原子力の設備利用率は高い傾向が続いている。

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◇原子炉の運転実績(設備利用率)に全体的な経年変化なし。運転開始から25~35年の原子炉の平均設備利用率は低い一方、運転開始から45年以上の原子炉の平均設備利用率は全体平均よりも高い。

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◇2022年の世界の原子力平均設備利用率は、過去5年間の平均とほぼ同様である。全体の3分の2以上が設備利用率85%を超えている。

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◇8基の大型PWRが建設開始(中国5基、エジプト2基、トルコ1基)。

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◇2022年末の建設中の基数は計60基、2021年末より2基増。

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◇2005年にEPRの初号機として建設されたフィンランドのオルキルオト3号機を含む、6基のPWRが送電開始。

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◇最短の建設期間を達成したのは、中国のPWRとパキスタン・カラチの中国製HPR1000(華龍一号)。これは最近の傾向で、シリーズ建設と継続的な新規建設プログラムによるスキルの保持が、より迅速な建設期間の実現に貢献。例外的に、オルキルオト3のEPR初号機建設は199か月かかった。

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◇現在建設中のほとんどの原子炉は、過去10年間に建設が開始されたもの。より建設に時間がかかっている少数の原子炉は、パイロットプラントや初号機、あるいは建設中断後に建設が再開されたプロジェクト。

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◇閉鎖された5基の総発電設備容量は327.1万kW。

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◇2022年は6基が送電開始、 5基が閉鎖。4年ぶりに運転開始炉の数が閉鎖炉の数を上回る。

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