WNA 「世界の原子力発電所運転実績レポート2024」図表紹介: 世界の原子力発電所は好調な運転実績を堅持

2024年9月11日

世界原子力協会(WNA)は8月19日、世界中で稼働する商業炉の2023年の運転実績について取りまとめた報告書「World Nuclear Performance Report 2024」を公表しました(9/2付原子力産業新聞にて既報)。 

報告書によると、原子炉配管の応力腐食割れ(SCC)の保守作業が終了したフランスの原子力発電所が再稼働したことなどが主に影響し、原子力の総発電電力量は2022年実績の2兆5,440億kWhから2兆6,020億kWhに増加。総発電電力量に占める原子力の割合は、約9%となりました。また、原子力発電設備容量は3億9,200万kWと、2022年実績から100万kW減少した一方、平均設備利用率は2022年実績の80.4%から81.5%に増加しています。報告書によると、2000年以降、世界的に原子力の設備利用率は、プラントの新旧を問わず、総じて高めで推移していると分析しています。

報告書のなかで、WNAのS. ビルバオ・イ・レオン事務局長は、世界の原子力発電開発推進の勢いがさらに高まっている現状をふまえ、「世界中の多くの原子炉は優れた運転実績を積み重ねてきており、これらの実績を基に、今こそ新規建設を大幅に加速させる時だ」と主張しています。

下記に報告書の主な図表とポイントを紹介します。


◇2023年の原子力発電電力量は2兆6,020億kWh(2022年: 2兆5,440億kWh)で、2022年より約580億kWh増加。
主な増加の要因は、保守作業により運転を停止していたフランスの原子炉が再稼働したことにより、発電量が増加したため。

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◇2023年、アジアで原子力発電電力量が引き続き堅調に増加。
2023年に送電開始した中国、UAE、韓国の原子炉が増加に寄与。その他の地域では、2023年の原子力発電電力量はほぼ前年並みであった。

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◇2023年末の原子力発電設備容量は3億6,800万kWで、2022年から300万kW増加。
2023年、日本とインドの運転停止中の原子炉(2,100万kW)以外にも、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(600万kW)など、世界の900万kWの運転可能炉が発電せず、停止していた。

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◇2023年末の運転可能な原子炉数は437基。 2022年から変化なし、運転可能な原子炉の7割近くがPWR。2018~2023年にかけて運転開始した41基のうち2基を除いてすべてPWR。

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◇2023年の世界の原子力平均設備利用率は、81.5%(前年から1.1ポイント増)。
2000年以降、世界的に原子力の設備利用率は高い傾向が続いている。

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◇原子炉の運転実績(設備利用率)は、経年による低下はみられない。
運転開始から25~35年の原子炉の平均設備利用率は低い一方、運転開始から45年以上の原子炉の平均設備利用率は全体平均よりも高い。

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◇原子炉のパフォーマンスは着実に向上している。

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◇6基の大型PWRが建設開始(中国5基、エジプト1基)。

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◇2023年末の建設中の基数は計61基、2022年末より1基増。

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◇5基のPWRが送電開始。スロバキア・モホフチェ3号機の当初の建設開始年は1987年。
1990年の建設中断後、2015年に建設再開。

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◇2023年に送電開始した5基の平均建設期間は中央値で121か月で、2021年の88か月、2022年の89か月と比べて、近年ではかなり長い。平均建設期間は115か月であった。
新ハヌル2号機とベラルシアン2号機の建設期間は、各サイトの1号機よりも長くかかった。

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◇現在建設中のほとんどの原子炉は、過去7年間に建設が開始されたもの。
より建設に時間がかかっている少数の原子炉は、パイロットプラントや初号機、あるいは建設中断後に建設が再開されたプロジェクト。

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◇閉鎖された5基の総発電設備容量は604.8万kW。いずれも脱原子力政策により閉鎖。

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◇2023年は5基が送電開始、 5基が閉鎖。運転可能炉の基数は前年から変化なし。

(2024年9月11日)■

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