世界の原子力発電所の廃炉状況について

2024年6月18日

当協会はこのほど、国際原子力機関(IAEA)・原子炉情報システム(PRIS)の情報に基づき、「世界の原子力発電所の廃炉状況」をとりまとめました。IAEAによると、世界では2024年6月6日現在、計210基・1億602万kW(ネット出力、以下同様)の原子炉が閉鎖されています。出力規模で見ると、最も廃炉の規模が大きい国は2023年4月に脱原子力が完了したドイツで、計33基・2,623.5万kWが閉鎖されており、次いで米国(41基・1,997.6万kW)、日本(27基・1,711.9万kW)、英国(36基・775.5万kW)と続きます。米国や英国では閉鎖基数が多いものの、閉鎖された炉は導入初期の出力規模の小さい原子炉が含まれていることから、基数に比べて出力規模が小さくなっています。また、地域別で見ると、欧州が基数・出力規模ともに最も大きく(112基・5,345.2万kW)なっています。

また、福島第一原子力発電所事故以降の2011年から2023年までの間に、世界では計85基・約6,600万kWが閉鎖されました。基数で見ると全体の約40%、出力規模で見ると約63%が福島第一事故以降に閉鎖されたことになります。地域別で見ると、欧州が37基・3,244.2万kWと基数・出力規模ともに最も大きく、次にアジアで29基・2,000.6万kW、北米で14基・1,084.7万kW、旧ソ連圏で5基・317.1万kWの原子炉(すべてロシア)が閉鎖されました。日本やドイツのように、福島第一事故の影響による政策的、政治的な要因によって廃炉が進んだ国もあれば、米国のように、電力市場の自由化により、安価な天然ガス火力や補助金付きの再生可能エネルギーなど他電源との競争が激化し、原子力発電所の採算性が悪化するなど、経済的な要因から多くの原子炉が閉鎖された国もあります。また、ロシアの最近の廃炉は、主に同じサイト内に最新型原子炉を導入するという、いわばリプレース(建て替え)を目的としたものです。

当協会の調べでは、世界では40年以上運転している原子炉が計18か国・125基あり、これは世界全体の30%弱にあたります。今後も経年化により、廃炉が増えていくことが予想されますが、昨今は、脱炭素化やエネルギー安全保障などの観点から、既存の原子力発電所を最大限活用することが世界の潮流となっており、運転期間の延長などが進められています。

(2024年6月)■

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