第10回東アジア原子力フォーラム参加報告

当協会は、中国核能行業協会(CNEA)主催で行われた第10回目となる「東アジア原子力フォーラム」(10月22日、於:中国・敦煌市)に参加しました。本フォーラムにおいては、放射性廃棄物対策や廃止措置のほか、原子力技術のイノベーション等について、情報交換や知見の共有が行われました。本フォーラムには日本原子力産業協会(JAIF)、中国核能行業協会(CNEA)、韓国原子力産業協会(KAIF)、台湾核能級産業発展協会(TNA)の関係者等、約60名が参加しました。その後、10月23日、24日の二日間にわたり、敦煌市隣接地域の原子力関連施設等を訪問し、関係者との活発な意見交換が行われました。

東アジア原子力フォーラム概要

〇 開会挨拶(セッション1)

JAIF増井理事長より、「東アジアの原子力産業界が、情報交換・交流を密にして、原子力発電の持続的な発展のための課題に対する認識を共有し、取り組みを相互に学び合うなど、課題解決に向けた連携・協力を一層深めていくことは極めて重要である。」との挨拶がありました。

〇 セッション2

「原子力エネルギー及び電力の現状、気候変動を克服する上での役割、課題について」

・中国からは、中国国内の将来的な原子力設備容量(102基、1.1億kW超)や、グリーンエネルギーを推進する政策等についての説明がありました。

・韓国からは、現在進展中の海外受注案件や、韓国国内での新規建設の進展状況についての説明がありました。

・台湾からは、金山原子力発電所、国聖発電所の廃炉の進捗状況が紹介されました。

・日本はJAIFから、原子力発電所の再稼働の状況(女川原子力発電所が近日再稼働を予定)や、世論の動向等を紹介しました。

フォーラムの様子 
ラウンドテーブルでの議論

〇 セッション3

ラウンドテーブル:「未来を見据えた原子力安全開発のためのコミュニティの構築」

・主な発言を以下ピックアップします。

「まだ起きていない事に対し思いを巡らすことが大切。また違ったタイプの事故が起きるのではないかと思いを巡らすことも大切。(日本)」

「予防的メンテナンスや事前モニタリングで原子力発電所を最適な状態に維持することが大切。安全のためには人材育成も大切。(韓国)」

「アジア地域の原子力リテラシーの向上が欠かせない。今後はこの東アジア共同体で安全性を高めるための交流の場を増やしていくのはどうか。(中国)」

〇 セッション4

「放射性廃棄物管理とパブリックアクセプタンス」    

・中国における放射性廃棄物管理の現状として、北山地下研究所のプロジェクトの紹介がありました。

・韓国における地下研究施設プロジェクトの進捗状況が説明されました。

・日本からは原子力発電環境整備機構(NUMO)より国内の地層処分事業の概要や現状について説明がありました。

・台湾から、台湾での使用済み燃料処分計画の進展が説明されました。

〇 セッション5

「技術イノベーションとエンジニアリングにおける実践」

・中国より、北山地下研究所のプロジェクト詳細が紹介されました。

・韓国からは、2021年より開始された使用済み核燃料貯蔵・処分のための主要ソリューションとインフラの開発プログラムの紹介がありました。

・日本からは電力中央研究所(CRIEPI)より、地層処分技術の研究開発について説明がありました。

・台湾からは、低レベル放射性廃棄物処分施設の設計概念についての紹介がされました。

日中韓台参加者による集合写真

視察概要

フォーラムの翌日より2日間にわたり、以下の施設訪問を行いました。

○北山地下研究所

北山地下研究所建設プロジェクトは2016年3月、中国の「国家経済社会開発第13次5か年規画」における100の主要プロジェクトの一つに指定され、HLWの処分問題解決を目的とし、包括的な機能を有する世界最大規模の地下研究所として計画が進められています。視察時は、入り口から1,000メートル、深さ100メートルの地点まで入り、内部を見学しました。

ゴビ砂漠の中に位置する北山地下研究所
地下施設内部視察の様子

○100MW溶融塩タワー型太陽熱発電所

敦煌市から西に約20キロメートル離れた所にあるゴビ砂漠に、高さ260メートルの集熱タワーが聳え立ち、その周囲を1万2,000基以上のヘリオスタット(太陽追尾式ミラー)が囲む壮大な発電所です。敷地面積は570ヘクタールと、東京ドーム約124個分となっています。

広大に広がる太陽熱発電所
ミラーが立ち並ぶ中の視察の様子

今回のフォーラムでは、各国・地域が原子力産業界の最新動向を報告するとともに、安全文化の構築や、原子力イノベーション、地層処分がテーマとして取り上げられ、活発な情報・意見交換が行われました。また、久々の対面開催となったこともあり、フォーラム外においても各国のコミュニケーションが活発に行われ、今後の東アジア内の枠組みでの協力継続を再確認することができました。

来年の第11回東アジア原子力フォーラムは韓国での開催を予定しています。  

以上

お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)