台北で「第27回日台原子力安全セミナー」を開催(2012.7.24~26)
当協会は7月24日~26日、台湾・台北(会場:ハワードプラザホテル台北)で台湾の関係機関との共催により、「第27回日台原子力安全セミナー」を開催しました。日本側は服部拓也・原産協会理事長を団長に30名規模の大訪問団で参加。ホストである台湾側からも120名が参加し、会場を埋め尽くしました。台湾側主催者は、台湾電力公司、原子能委員会、核能研究所、放射性物質管理局、中華核能学会。
当協会では台湾との間で原子力安全に係わる情報共有・意見交換ならびに原子力関係者の交流を図るため、1986年以来「日台原子力安全セミナー」を毎年、日本と台湾で交互に開催しています。
3月の福島事故およびそれに伴う日本の原子力政策の転換は、国際社会にも大きな影響を与えており、台湾では昨年11月に既存の6基の原子炉について2018年以降、段階的に閉鎖することを発表しています。
このような状況を踏まえ、「福島事故以降の原子力」を主要テーマに、エネルギー政策、安全対策、廃炉・除染事業等について相互に情報を共有するため、第27回日台原子力安全セミナーを開催しました。
同セミナーの主な概要を下記にご紹介します。
- 開会セッション
潘理事長は、世界中で劇的な気候変動が現れていることに触れ、CO2排出量削減のため、原子力と再生可能エネルギーのような代替エネルギーの利用拡大は不可欠とした上で、日台共に脱原子力発電所へ向かう現状を指摘。そして「不幸な福島事故の教訓と経験を共有することで全世界の原子力発電所はより高い安全基準を達成したと信じている。機会を見て、原子力の利用拡大を受け入れるよう国民に説得するつもりだ」と強調しました。服部理事長は、昨年7月に東京で開催した前回セミナー以降、福島では事故が収束し、現在廃炉へ向けた取り組みの真っ最中であることを紹介。エネルギー・セキュリティ、国民経済・産業の活性化、地球温暖化防止などの観点から、今後とも原子力が重要な役割を果たすべきであり、「より安全で信頼性の高い原子力発電システムに改良していくと同時に、原子力事業者自身の透明性を高めるなど、社会からの信頼感を取り戻す必要がある」との強い決意が表明されました。
- 講演セッション
1日半に渡る講演セッションでは、台湾側は蔡・專業總工程師が「福島事故後の新しいエネルギー政策への台湾電力の対応」について、日本側は小山・常務理事が「国際エネルギー情勢と日本のエネルギー政策」と題し基調講演。蔡氏より各原子力発電所の2018年以降の閉鎖スケジュールやそれに伴う電力供給面での課題等が示されました。一方小山氏はグローバルな視点でのエネルギー情勢を説明。中東カタールへのLNG依存が急増していることや、LNGを産出しないアジア諸国のLNG輸入価格は、欧米諸国よりはるかに高水準で推移しており、アジアプレミアムと呼ばれる状況にあること。アジア全体では低い試算でも原子力発電容量の大幅な増大が予想されていることが紹介されました。そのほか福島事故以降の日台における原子力動向を主要テーマに、日台双方から、電気事業者の取り組み、プラントメーカーの取り組み、使用済み燃料貯蔵、人材育成、運転期間40年問題、原子力を巡る社会動向などが発表され、活発な議論が交わされました。
福島サイト内外の状況については、東京電力より福島第一の廃炉計画、鹿島建設より警戒区域での除染モデル事業について紹介され、台湾側から高い関心を集めました。
- テクニカルツアー
セミナー翌日の7月26日にはテクニカルツアーとして、台北近郊の国聖原子力発電所(BWR6×2基)を訪問しました。同発電所の概要について説明を受けた後、管理区域以外にも、緊急時の注水措置等の装置や、訓練シミュレーター等を見学しました。
訓練シミュレーターでは外部電源喪失のケースを
実際に体験
国聖原子力発電所の高台に
設置されていた貯水池
○参加者:
日本側 服部拓也理事長、小山堅・日本エネルギー経済研究所常務理事 他、計31名
台湾側 潘欽・中華核能學會理事長、蔡春鴻・原子能委員会主任委員、陳布燦・台湾電力總經理、蔡富豐・台湾電力專業總工程師、陳宜彬・原子能委員会核能管制處處長 他、約120名
お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)