第35回日韓原子力専門家会合及び第7回東アジア原子力フォーラム参加報告
当協会は、韓国原子力産業会議(KAIF)主催で行われた第35回目となる「日韓原子力専門家会合」(11月5日、於:韓国・慶州市)と第7回目となる「東アジア原子力フォーラム」(11月6日、於:同市)に参加しました。専門家会合では、放射性廃棄物対策や廃止措置のほか、原子力発電所の緊急時対応等について、日韓関係者間での情報交換を行い、両国産業界の連携・交流を深めました。本会合には日本原子力産業協会(JAIF)、韓国原子力産業会議(KAIF)の関係者や傍聴者を含め約110名が参加しました。続く東アジアフォーラムでは原子力の安全性向上への取組みや発電所の運転経験を中心に情報交換や知見の共有が行われました。本フォーラムには日本原子力産業協会(JAIF)、中国核能行業協会(CNEA)、台湾核能級産業発展協会(TNA)の関係者や韓国側機関からの傍聴を含め、約140名が参加しました。その後、11月7日、8日の二日間に渡り、韓国国内の原子力関連施設等を訪問し、関係者との交流の場が設けられ、活発な意見交換が行われました。
第35回日韓原子力専門家会合での主な内容
○ プレナリーセッション「高レベル放射性廃棄物の管理」
・韓国側からは原子力環境公団(KORAD)チャ・ソンス理事長より、KORADが管理する中・低レベル放射性廃棄物(LILW)処分場「月城(ウォルソン)原子力環境管理センター」の処分事業の現状や2016年7月に公表された「高レベル放射性廃棄物管理国家計画」の再検討が行われていることなどについての説明が行われました。
○ セッション1「放射性廃棄物の管理」
・韓国側からは放射性廃棄物学会(KRS)より、韓国における使用済み燃料管理の現状、国の政策、許認可用の地下研究所(URL)、中間貯蔵施設及び、最終処分施設のサイト選定などについての説明があり、またKORADより、中・低レベル放射性廃棄物(LILW)の管理の現状についての紹介がありました。
・日本側からは日本原燃(JNFL)より、日本における放射性廃棄物の分類と処分の概念、六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターの現況について紹介があり、日本原子力研究開発機構(JAEA)より、主に瑞浪超深地層研究所計画について、その背景、進め方、主な成果などについての説明がありました。
○ セッション2「原子力・放射線緊急時への対応」
・韓国側からは韓国水力・原子力 中央研究所(KHNP-CRI)より、韓国における国の放射線緊急時対応の体制やプロセスをもとに、関連組織それぞれの責務や日々の避難訓練内容について説明があり、緊急時のオンサイトおよびオフサイトのサポートシステムについての詳細な紹介がありました。
・日本側からは東京電力HDより、福島第一原子力発電所の事故を経験し,その教訓を踏まえた近年の原子力防災の取り組みについての説明がありました。
○ セッション3「廃止措置の経験」
・韓国側からは韓国原子力研究院 (KAERI)より、KRR研究炉1~2号機の廃炉経験、韓国電力プラントサービス&エンジニアリング(KEPCO KPS)より、炉内構造物切断の研究開発状況や今後の計画、また斗山重工業より、2017年に廃炉が決定された古里1号機の原子炉圧力容器の解体技術や計画についての紹介がありました。
・日本側からは東京電力HDより、福島第一原子力発電所における廃炉・汚染水対策の現状と課題について説明が行われました。
第7回東アジア原子力フォーラムでの主な内容
〇 セッション1「東アジアにおける原子力産業界の最新状況」
・中国からは、国内の原子力発電所の稼働状況などについての発表が行われました。(2019年10月末で47基が稼働中、12基が建設中)さらに、非化石燃料による発電割合を2050年に50%まで高めることを目標に、今後も原子力発電所の建設を進めるとの発言もありました。
・台湾からは、廃炉が決定している金山原子力発電所の状況として、建設が完了している中間貯蔵施設に対する地方政府の許可が下りないため使用済み燃料が炉心に残った状態で、廃炉作業が進まない現状が報告されました。
〇 セッション2-1「原子力発電所における安全性強化と安全文化の向上」
・日本からは関西電力より発表があり、高浜3、4号機における安全性向上の取り組みとして、地震・津波対策のための設備強化や事故時対応能力向上のための原子力防災訓練などについての説明が行われました。
・韓国からは韓国原子力研究院(KAERI)より、原子炉システム安全研究、過酷事故研究、耐震設計研究、ロボット技術研究、環境影響評価研究などの研究成果と今後の原子力革新技術の展望についての報告が行われました。
〇 セッション2-2「原子力発電所の運転経験」
・中国からは、大亜湾核電運営管理(DNMC)よりOE(Operating Experience)システムの活用についての発表があり、中国の原子力発電所における安全管理、安全文化向上、事故再発防止への取り組みについて、説明が行われました。
・台湾からは台湾電力より龍門原子力発電所の現状について報告が行われ、現在、建設を完了せず凍結状態にある龍門発電所は政府の方針で資産維持管理状態に置かれているとの説明がありました。
視察概要
〇 韓国電力
主に発送配電施設等のメンテナンスや炉の改修工事、計装制御系の補修などを担う韓国電力KPSを訪問し、メンテナンスや廃炉作業に用いられる技術開発用のモックアップ施設等を見学しました。
〇 韓国原子力環境公団(KORAD)
韓国における放射性廃棄物管理処分の実施機関である原子力環境公団(KORAD)を訪問しました。KORADには2006年に建設を開始し2014年に完成したサイロ式の処分場が6つあり、現在、中・低レベル放射性廃棄物がドラム缶17,498本保管されており、現地では実際に廃棄物処分場を見学しました。
〇 韓国水力原子力(KHNP)本社PAセンター
韓国慶州市に本社を置く韓国水力原子力(KHNP)を訪問し、PAセンター(広報センター)で会社概要と韓国の原子力発電の現況説明を受けた後、原子力発電所の模型や実際に発電の仕組みを体験できる展示スペースの見学を行いました。
○ 韓国水力原子力(KHNP)新古里原子力発電所
建設中の5,6号機を一覧できる展望台で発電所の現状などの説明を受けた後、厳しいセキュリティチェックを受け、韓国で2基目のAPR1400であり、今年9月に商業運転を開始した4号機のタービン室および中央制御室を見学しました。
○ 韓国国際原子力大学院 (KINGS)
現在約100名の学生(うち半分が留学生)を有するKINGSでは学部長と意見交換の後、教室や新古里の中央制御室を再現したシミュレーション室や学生寮を見学しました。
お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)