第3回東アジア原子力フォーラム(2015.4.30)
当協会は、4月30日午前に韓国・ソウル市で開催された「第3回東アジア原子力フォーラム」に国内専門家2名とともに参加し、東アジア地域の原子力安全向上への取り組みや原子力安全コミュニティーの構築をめぐる情報共有と意見交換を行いました。
「東アジア原子力フォーラム」は当協会が提唱し、中国、韓国、台湾の原産協会・原産会議との間で地域共通の課題や関心事項について、情報交換・交流をより効果的に行うため開催しているものです。第1回、第2回は東京で開催し、第3回目となる今回は、初めて韓国原子力産業会議のホストにより「第30回韓国原子力産業会議 年次大会」に引き続く形で、ソウル市のインターコンチネンタルホテルCOEXで開催されました。
今回のフォーラムのトピックスとして、「原子力発電所の安全性強化および今後の対策」と「産業界レベルでの東アジア原子力安全コミュニティーの構築」の2つが設定され、日本・韓国・台湾からそれぞれ発表と質疑応答・意見交換を実施。日本からは、東京電力・福島第一廃炉推進カンパニーの山口献課長および東京大学大学院の岡本孝司教授が、それぞれのトピックに関して講演を行いました。
各トピックスと発表の概要は以下のとおりです。
<原子力発電所の安全性強化および今後の対策>
○韓国水力原子力 福島事故フォローアップ対策チーム長Kwon Maeng-Sup氏
「韓国水力原子力における福島原子力事故後の安全対策」
・事故後すべての原子力発電所に対して「地震発生・津波襲来・浸水」のシナリオでの発電所健全性を点検した。56項目について2014年まで順調に点検を実施しており、現在も継続中。
・今後の改善対策としては、火災に対する機器健全性の強化や所内緊急時管理機能の強化、移動式ポンプや電源の更なる確保である。
・非常時対応に関する組織のタスクフォースを作る計画があるほか、複数基事故下での指揮・命令体制の構築も検討中である。
○東京電力 福島第一廃炉推進カンパニー プロジェクト計画部課長 山口献氏
「福島第一原子力発電所の現状と今後」
・放射性物質吸着装置でのセシウムを除去など汚染水についての多重的なリスク低減策を実施中である。
・廃炉作業に関しては、4号機の使用済燃料取り出しが2014年12月に完了、現在1~3号機の燃料及び燃料デブリ取り出しに向けたステップ(クリーンアップと水の漏洩箇所の調査等)にある。
・最近サイトでは、瓦礫撤去や敷地舗装等により環境が改善し、線量も低くなっている。
○台湾電力 原子力安全部副部長 Michael Chang氏
「台湾における原子力安全向上と継続的改善」
・台湾電力は①有効性モニタリング②リスクマネジメント③請負・協力会社マネジメント④人的パフォーマンス、の4つの項目を設定し、原子力安全強化を遂行している。
・毎月の「安全文化レビュー会合」を通じ、機器やヒューマンエラーに関する重要なトラブルについて原因や解決方策の検討と対策の共有を図っている。
・安全品質活動チームに対するモニタリングを通じて原子力安全向上活動を促している。
<産業界レベルでの東アジア原子力安全コミュニティーの構築>
○慶熙大学 原子力工学科教授 Chung Bum-Jin氏
「産業界レベルでの東アジア原子力安全コミュニティーの構築」
・原子力災害は周辺諸国に常に影響を及ぼす可能性がある。緊急時の情報知見・人材・物資の支援は隣接国から提供されることが妥当。隣国間で物的・人的な支援を共有できるシステム作りが必要ではないか。
・東アジア産業界協力枠組みの具体的方策としては、情報交換実施、緊急時訓練実施、放射線モニタリング、情報共有チャンネルの維持、経験・経験共有の場の設定、公衆の関与、が考えられる。その実現のために、産業界を代表する機関を指定し具体化を検討していってはどうか。
○東京大学大学院 工学系研究科教授 岡本孝司氏
「東アジアのための原子力安全活動」
・東アジア地域協力という観点では、事故が起こることを想定した協力を予め考えておくことが最も重要。そのためには各国が安全性を高めるのみならず緊急時対応協力を検討しておくことや、原子力発電所の建設のみならずメンテナンス、燃料管理、そして最終的には廃棄物を含めたプラントのライフ・サイクル全体を考えたマネジメントに関する協力が大事。
・研究機関、関連学会、市民団体間での東アジア地域の連携・協力も有意義ではないか。
・例えば、ストレステストやPRAのピアレビューを東アジア地域の協力組織を通じて実施し、地域の原子力安全を高めていくことも重要。
○台湾核能級産業発展協会 事務局長 Oung Jun-Chou氏
「産業界レベルでの東アジア原子力安全コミュニティー構築」
・東アジア地域での情報交換・交流については、原子力安全管理に関する情報交換の促進が重要ではないか。事故発生時の緊急救援措置や放射線モニタリング、医療、除染、検査などの対応ができることが重要であり、緊急連絡用のホットラインがあれば地域的支援に役立つ。緊急時支援に関しては、相互チェックリストを作って確認することも可能ではないか。
今回のフォーラムを通じて、福島事故後、各国・地域で特に関心を集めている原子力安全に関する案件について情報の共有が図れました。韓国については、ストレステストの実施や安全対策強化を通じた高経年原子炉の運転延長への取り組み、台湾については、人的なパフォーマンス向上と効果的なマネジメント、品質保証・品質管理面などを含め原子力安全文化の一層の醸成に焦点を当てた努力が注目されます。産業界レベルでの東アジア原子力安全コミュニティー構築という点に関しても、情報交換・交流を中心に、民間レベルでの緊急時相互支援体制の重要性に関する認識と参加機関間での議論の必要性が共有されました。
以上
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