第3回日英原子力産業フォーラムの開催(2019.2.5)
2019年2月5日(火)、英国国際通商省(DIT)が主催し、当協会と英国原子力産業協会(NIA)が後援となって、第3回日英原子力産業フォーラムが開催された。駐日英国大使館大使公邸にて開催された本フォーラムには、日英両国から原子力産業関係者、研究機関及び政府機関から約150名が参加した。本年も昨年に引き続き廃止措置をテーマに、日本国内の原子力関連施設・研究炉の廃止状況の説明や、福島第一原子力発電所の現状報告、英国企業による廃炉に関する最新技術の共有、英国国内の廃止措置の最新状況などが発表された。この他に、フォーラム参加者から事前に募った質問に対し両国の代表が答え討論するパネルセッションや、英国の大学・研究機関による日英原子力共同研究プログラムについての発表なども行われた。冒頭の開会挨拶で、ポール・マデン駐日英国大使は、本フォーラムを通じ日英両国が廃炉に関する知見を共有し、日英協力の更なる発展を期待すると述べ、原産協会高橋理事長は、福島第一原子力発電所の廃炉において英国からの多くの支援に感謝するとともに、本フォーラムが両国にとって有益なものになることを祈念すると述べた。
英国側からは、日英の規制環境や発電所の状況は異なる部分もあると前置きした上で、運転から廃炉への移管においては、業界全体での変化と強いリーダーシップが必要であるとの発言があった。廃止措置を円滑に進めるには、人・プロセス・技術の3つがうまくかみ合う必要があるが、技術に関する問題が必ずしも進捗に影響を与えるものではないとも強調。人とプロセスに焦点を当てることがより重要で、外部からの専門性を活用し、自国の文化・構造・プロセスに適用させていくことが大事であるとの発言に注目が集まった。現在、日英両国は廃止措置に関して同じような課題に直面しているが、互いに学び合う姿勢で日英間の協力体制が更に発展し、強固なものになることを願っていると締めくくられた。
日本側からは、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)と英国原子力廃止措置機関(NDA)の協力覚書をはじめ、企業・研究機関等の連携で情報交換が行われているが、昨年9月にはセラフィールドにおいて英国の規制環境に関するワークショップが開かれ、非常に有意義な意見交換が行われたとの報告があった。今後廃炉が進んでいく中で、日本では廃止措置に関わる費用が電気料金や税金から賄われるため、コストと時間を考慮すると革新的な技術を活用するよりも安全、確実で安価な技術の利用が望ましいとの発言があった。原子炉の所有者だけでなく、規制当局、立地地域、サプライチェーンなど全体でマインドセットすることも重要で、いかにプロジェクトマネジメントを行うかということがカギになると強調された。また、日本のD&Dに関する規制環境の妥当性に関して、建設・運転と同等の規制による廃止措置の遅れが懸念点として挙げられた。現在の日本の状況はNDA設立前の英国と非常に似ている部分があり、日本のD&Dに対して英国の持つ経験や知見を教授してほしいという期待が述べられた。
本フォーラムを通して日英両国から、廃止措置においてはなるべくコストを削減し、安全で確実な廃止措置が進められていくことが望ましく、それは規制の内容や、運転から廃止措置へのマインドセットの変更によるところが大きいというという意見が出た。技術に関しても、革新的で完璧な技術を求めるばかりでなく、信頼性があり応用可能な既存の技術をそれぞれ自国の廃炉に合わせて適応させていくことも非常に重要であると再認識する機会となった。またフォーラム会場では、英国企業によるブース出展やパネル展示が行われ、各社の取り組みをPRした他、ネットワーキングランチやレセプションを通して、参加者間の活発な情報・意見交換が行われた。原子力先進国であり、廃止措置の共通課題に直面している日英両国が互いに学び、協力することの意義は大きく、今回の第3回日英原子力産業フォーラムも双方にとって大変有意義なものとなった。
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