第8回日英原子力産業フォーラム概要報告
(一社)日本原子力産業協会 国際部
2024年10月29日 (火)・10月30日 (水)の2日間にわたり、英国ビジネス・通商省および駐日英国大使館が主催し、英国市場協議会、英国原子力産業協会 (NIA)、および当協会の後援により第8回日英原子力産業フォーラムが駐日英国大使館大使公邸にて開催されました。今回は、英国と日本の関係機関および企業の関係者を合わせて約100名、レセプションには約150名が参加しました。
開会挨拶において、NIAのグレイトレックス理事長は、「日英両国の長きにわたる民生原子力分野における協力関係は、平和と繁栄の重要な基盤として、安全で信頼できるクリーンな電力を備えた世界の実現に貢献します。原子力産業界の専門知識と経験が世界中で最大化されることをともに願うパートナーとして、日本の原子力産業界と共に本日のフォーラムに参加できることを喜ばしく思います」と挨拶しました。
また、原産協会の増井理事長は、「日英の原子力協力は、わが国最初の商業用原子力発電所である東海発電所が英国のガス冷却炉を導入したことや、それ以降の使用済み燃料の再処理など長い歴史を持ちます。2050年までに最大24GWの原子力発電設備容量を達成するという目標を掲げ、必要となる新規建設促進のための様々な制度作りに注力されている英国の姿勢には、わが国も学ぶところが大きいと感じています。今回のフォーラムでの、日英両国の原子力政策の動向や原子燃料サイクル、新規建設と革新炉、廃止措置とその研究開発などの現状について、皆様の発表を楽しみにしています」と述べました。
初日夕刻のレセプションでは臨時代理大使エミール・レベンドールー氏の歓迎の挨拶に続き、当協会の増井理事長が福島県の日本酒を紹介するとともに乾杯の挨拶を行いました。
2日目は、駐日英国大使館ビジネス通商部のクリストファー・ハント氏の挨拶で幕を開けました。「英国では原子力施設の廃止措置をより安全に、より早く、より経済的に行うための最新技術開発の支援や投資が積極的に行われており、原子力技術への信頼を高める取り組みがなされています。廃止措置という大きな課題に日本と協力して取り組むことは素晴らしいことであり、これからも関係をより深めていきたい」と述べました。
その後挨拶を述べた国際廃炉研究開発機構 (IRID) の山内理事長は、両国の深い歴史的つながりと、原子力分野における協力関係の重要性を強調しました。「戦後間もない1950年代からの技術協力は、日本の原子力産業の礎を築き、現在も福島第一原子力発電所の廃炉において、英国の技術者との共同開発が進められています。英国のNDAが蓄積した廃炉に関する貴重な経験と教訓は、日本の廃炉作業を大きく後押ししています。英国に学び、協力して技術開発・課題解決を進めていくことで、原子力をより安全かつ持続可能なエネルギー源として発展させていきたい」と述べました。
また2日目の最後には、英駐日英国大使館公使参事官 (経済外交担当) であるマーガレット・タング氏が、「2日間にわたり、核燃料や次世代炉、廃止措置といった分野について、日英各国の取り組みと、両国の強力な協調と絆を確認することができました。原子力は両国のエネルギー安全保障、ひいては世界の産業においてネットゼロを達成するために不可欠であり、日本はこの分野において素晴らしいパートナーです」と閉会の挨拶を行いました。
最後に、10月29日に再稼働を迎えた女川原子力発電所2号機についても触れ、「待ち望んでいました」と喜びを表し、「また来年お会いしましょう」と2日間に渡るフォーラムを締めくくりました。
今回のフォーラムでは、1日目は原子燃料サイクルと新規建設を、2日目は廃止措置と廃棄物管理をテーマに、日英の最新の原子力政策の動向や、メーカー・研究機関による研究開発の最新情報、原子力関連施設・研究炉の廃止状況、NDA (英国廃止措置局) や電気事業連合会による廃止措置事業のマネジメントの事例などについて発表が行われました。
その他、日・英の原子力関連企業の連携を促進するため、会場内において、英国企業によるパネル展示などが行われ、各社の取組みがPRされ、活発な情報・意見交換が行われました。
気候変動がもたらす寒波や猛暑などの影響による電力需給のひっ迫、生成AIやデータセンターの市場規模拡大により電力需要の急増が見込まれる中、カーボンフリーで供給安定性に優れた原子力発電は経済活動の継続に不可欠と言われています。エネルギー安全保障、カーボンニュートラル、および廃止措置の共通課題に直面している日英両国が互いに学び、協力することの意義は大きく、今回の第8回日英原子力産業フォーラムも双方にとって大変有意義なものとなりました。
開催概要
開催日時:2024年10月29日 (火) 14:30-17:30、10月30日 (水) 9:30-12:30
(レセプション 2024年10月29日 (火) 18:00~20:00)
会場:駐日英国大使館大使公邸 (東京都千代田区一番町1)
プログラム
10月29日(火) 新規建設と燃料サイクル
14:30-14:40: 第8回日英原子力産業フォーラム歓迎挨拶
- トム・グレイトレックス 英国原子力産業協会 理事長
- 増井秀企 日本原子力産業協会 理事長
14:40 – 15:10: セッション 1 – 原子力政策
- 14:40 – 14:55: 日本の原子力政策 (経済産業省)
- 14:55 – 15:10: 英国の原子力政策 (英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省)
15:10 – 15:30: 休憩・企業展示
15:30 – 16:15: セッション 2 – 核燃料サイクル
- 15:30 – 15:45: Urenco におけるウラン濃縮 (Urenco社)
- 15:45 – 16:00: スプリングフィールドにおける一次転換と燃料製造 (ウェスチングハウスUK (WE) 社)
- 16:00 – 16:15: 六ヶ所村再処理工場とJ-MOX (日本原燃株式会社)
16:15 – 16:30: 休憩・企業展示
16:30 – 17:30: セッション 3 – 原子力の新設と改良型原子炉
- 16:30 – 16:45: 日英高温ガス炉協力 (英国原子力研究所、 日本原子力研究開発機構)
- 16:45 – 17:00: 三菱重工の次世代原子炉 (三菱重工業)
- 17:00 – 17:15: 英国の核融合プログラム (英国原子力局) ※ビデオ講演
- 17:15 – 17:30: 日本の核融合プログラム (那珂核融合研究所所長)
17:30 – 18:00: 企業展示とネットワーキング
18:00 – 20:00: ドリンクレセプション
- 18:10: 挨拶 (エミール・レベンドールー 駐日英国大使館 臨時代理大使)
- 18:15: 乾杯 (増井秀企 日本原子力産業協会 理事長)
10月30日(水) 廃止措置と廃棄物管理
9:30-9:40: 第8回日英原子力産業フォーラム2日目への歓迎挨拶
- クリス・ハント 駐日英国大使館 商務貿易部長
- 山内豊明 国際廃炉研究開発機構 (IRID) 理事長
09:40 – 10:40: セッション 1 – 英国における廃止措置
- 09:40 – 09:55: 原子力廃止措置機関 (NDA) 施設における廃止措置
(英国原子力解体プロセスサービス (Nuclear Restoration Services:NRS))
09:55 – 10:10: JET の廃止措置と再利用 (英国原子力局) ※ビデオ講演
10:10 – 10:40: 英国における廃止措置 – 産業界の最新情報 (英国サプライチェーン代表者)
10:40 – 11:15: 休憩
11:15 – 12:00: セッション 2 – 日本における廃止措置
- 11:15 – 11:30: 福島第一原子力発電所の廃炉作業 (東京電力福島第一廃炉推進カンパニー)
- 11:30 – 11:45: JAEA 施設における廃止措置と廃棄物管理 (日本原子力研究開発機構)
- 11:45 – 12:00: 日本の原子力施設の廃止措置 (使用済燃料再処理・廃炉推進機構)
12:00 – 12:30: セッション3 – 廃止措置のための研究開発
- 12:00 – 12:15: F-REIの概要 (福島国際研究教育機構)
- 12:15 – 12:30: 英国における原子力廃止措置の研究開発 (英国原子力廃止措置機関 (NDA))
12:25 – 12:30 : 閉会の挨拶
- マーガレット・タング 駐日英国大使館 公使参事官 (経済外交担当)
お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)