ATOMEXPO-2019参加およびノヴォヴォロネジ原子力発電所視察報告(2019.4.15~18)

 4月15日(月)~16日(火)、ロシアROSATOM 社主催によりソチで開催されたATOMEXPO-2019に当協会の服部特任フェローが参加しました。また、ATOMEXPO-2019参加に併せて、4月18日(木)にノヴォヴォロネジ原子力発電所を視察しました。

1.ATOMEXPO-2019参加
 ATOMEXPOは2009年以来毎年開催され、今回は11回目に当たり、世界74カ国から3,600人を超える参加者がありました。また、海外から多くの機関のブース展示がありました。
 今回のATOMEXPOのテーマは「Nuclear for better life」であり、各ディスカッションで本テーマを意識した発表、議論が行われました。ひとつ例を挙げると、プレナリーディスカッションにおいて、ロスアトムのリハチョフ総裁から、原子力科学技術は世界の発展に貢献していることが示されました。具体的には、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成には、原子力発電なしには難しいこと、またエネルギーだけでなく放射線利用(医療、農業、水)にも着目すべきことが強調され、共通のゴール(Nuclear for better life)へ向かってパートナーシップ構築を歓迎する旨の力強いメッセージが発せられました。
 その他、印象に残った点としては、「公衆からの信頼」に関する技術ディスカッションの際、スカイプを使い、アフリカのカカオ工場とNOKIAのオフィスと映像を繋ぎ、それぞれが地域との共生のために行っている活動が紹介されました。業種、国境、人種の壁を超えた議論が行われ、知的刺激を味わえる工夫がなされていました。
 会議と並行して行なわれた原子力関連企業による展示会では、中国、フランス、韓国、フィンランドほか世界各国から650の企業・機関が参加し、趣向を凝らしたブースを出展していました。特に、主催者であるロスアトムのブースでは、グループ一体となり、大きな部屋の中にテーマごとのブース(フロントエンド、建設、発電、バックエンド、原子力砕氷船、浮揚型原子力発電所など)を円形に配置し、多彩な照明効果・デジタル技術を使った展示がされていました。インテグレイテッドソリューションのセールス活動について言及されるロシアですが、それを体現しており、飛ぶ鳥を落とす勢いを感じました。

2.ノヴォヴォロネジ原子力発電所視察
 ノヴォヴォロネジ原子力発電所は、ロシア南西部ヴォロネジ州にあります。ヴォロネジはモスクワから南に飛行機で約1時間半に位置し、約100万人の人口を有しております。ノヴォヴォロネジ(ノヴォは新の意味)はヴォロネジから約60km南に位置する小さな街で、1964年に原子力発電所が建設されて以来、発電所関係者が多く住んでおります。
 ノヴォヴォロネジ原子力発電所は計7基のプラントを有し、そのうち3基が廃止措置中です。運転中、試運転中の炉型はすべてVVER(加圧水型軽水炉)で、4号機がVVER-440、5号機がVVER-1000、II-1号機及びII-2号機がVVER-1200という構成です。なお、II-2号機は現在、起動試験中で2019年度には営業運転開始の予定です。
 今回は、2017年に運転を始めたII-1号機の中央制御室及びタービン建屋を見学しました。このVVER-1200 (出力1200MWe)は、インドのクダンクラム原子力発電所の設計経験、VVER-1000の運転経験、これまでのR&Dの成果を活かし、IAEAの推奨事項や欧州電力要求(EUR)を満たしたものとなっております。運転寿命は当初から60年を想定しており、二重格納容器や設計超過事故に対応するための動的/静的安全システムを採用しています。特に、静的安全システムが印象的で、4トレイン(33%容量)の空冷式熱除去システム(合計32MW)、コアキャッチャーを備えており、シビアアクシデントリスクを大幅に低減しているものと考えられます。
 II-1号機は見学の3日前に第1回定検に入ったところで、定検期間は1回目なのでやや長く70日間の予定となっておりました。中央制御室の運転員は背広を着用しており、原子炉2名、タービン2名、当直長1名の1班5名体制で1日3交代制とのことでいた。なお、日本の中央制御室では神棚をよく見かけますが、それと同様に神様の絵(イコン)が壁に掛けられていました。
 その後、タービン建屋に移動しました。タービン建屋内のオペフロでは軸受けカバーの開放点検が始まっており、機器、定検工具等が多数見られました。タービンはロシア製で、発電機は水冷の設計(水素は使わない)です。なお、発電所内では女性が多く勤務していて、男女比はほぼ50:50ではないかということでした。
 その他として、発電所の訓練センターも見学させていただきました(場所はノヴォヴォロネジの街の一角にある)。詳細は省きますが、訓練センターでは体系的かつ厳密な訓練が行われていて、人材育成にかなり力を入れていること、また、それを新規導入国に対しても展開していることがわかりました。なお、新規導入国用のテキストは、ロシア語ではなく、英語で作成し、授業を行っているとのことでした。

ATOMEXPO-2019 開催の挨拶

ROSATOMグループのブース

会場で供される軽食

ノヴォヴォロネジ原子力発電所訓練センターの前で

お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)