中国核能行業協会(CNEA)原子力損害賠償調査団の来日について(報告)(2019.6.17~21)

 (一社)日本原子力産業協会

原産協会は中国核能行業協会(CNEA)との協力活動の一環として、6月17日~21日に来日したCNEA原子力損害賠償調査団による、政府機関や福島県自治体への訪問および日本側専門家との会合の実施に協力しました。

福島第一原子力発電所事故は、事故後の原子力損害賠償の観点からも世界的に大きな関心を集めることとなり、こうした中、中国においても現在、国家原子能機構(CAEA)の要請を受け、中国の原子力産業協会「中国核能行業協会(CNEA)」が「原子力事故における損害賠償の法的問題に関する調査研究」を実施しています。このほど、同調査研究の実施組織であるCNEAより当協会に対し、福島第一原子力発電所事故についてより深く理解し、日本における原子力損害賠償制度や損害賠償実務等について知見を得て、中国の原子力損害賠償制度整備の参考とするため、専門家から構成される代表団を日本に派遣し、調査と視察を行うための協力依頼が寄せられました。

今回の訪問は中国核能行業協会 (CNEA)をはじめ、国家原子能機構 (CAEA)、全国人民代表大会法制工作委員会、中国生態環境部(MEE)中国核工業集団 (CNNC)、CNNCコンサルティング会社、中国広核集団 (CGN)、中広核工程集団(CNPEC)、国家電力投資集団 (SPIC)、中国政法大学、陽光時代法律事務所など専門WGメンバー計11社、18名が来日し、下記の調査内容・目的、日程で東京および福島にある関連機関を訪問しました。一週間というタイトなスケジュールでしたが、一行は各訪問先で大変熱心な勉強姿勢をみせ、非常に活発な質疑応答・意見交換が行われました。

主な調査内容・目的:

①原子力損害賠償に関する日本の法制度

日本政府による原子力損害賠償の管理

福島第一原子力発電所事故に対する損害賠償の実状、制度・組織化、資金調達と課題

④福島第一周辺自治体との意見交換

  • 損害賠償請求手続きにおける自治体の役割損害賠償請求手続きにおける自治体の役割
  • 自治体の視点から見る補償の結果と効果
  • 福島第一事故直後の住民避難などに関する自治体の対応
  • 現在の福島復興と住民帰還の状況

訪問日程:

6月17日(月)東京電力HD本社

  18日(火)文部科学省

  19日(水)福島第一原子力発電所視察(J-ビレッジ宿泊)

  20日(木)福島県自治体(大熊町、富岡町、楢葉町)

  21日(金)日本専門家との会合(場所:原産協会会議室)

      (協力機関:日本エネルギー法研究所)

文科省正門前での集合写真
東京電力HD本社での会合の様子

特に文部科学省への訪問では、日本における原子力損害賠償に関する法制度および福島第一原子力発電所事故後に設置された原子力損害賠償紛争解決センター(ADRセンター)や原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の役割などについて担当部署の専門官から分かりやすい説明を受け、同じような仕組みのない中国の調査団にとって、大変参考になった様子でした。また、福島第一原子力発電所事故の当事者・事業者である東京電力への訪問では、事故後、実際に行われている損害賠償の方法や経験を知り、さらに事故が発生した福島第一原子力発電所および損害を受けた発電所周辺自治体への訪問を通して、事故の発生経緯、損害賠償の状況、および震災後の町の復興現状について担当者から生の声を聞くことができ、中国調査団一行にとっては非常に貴重な体験となりました。最終日に、日本エネルギー法研究所の野村理事長および早稲田大学法科大学院の道垣内教授をはじめとする日本の専門家との会合でも大変活発な意見交換が行われ、日中両国の専門家間での交流ができ、皆大変満足した様子でした。当協会としても、この機会に中国における原子力損害賠償制度について情報収集を行うと共に日中両国の専門家間での交流を促進する有意義な協力活動となりました。

2018年11月にオープンした東京電力
廃炉資料館での見学の様子
2017年に一般開放になった大熊食堂での昼食
富岡町文化交流センター「学びの森」
楢葉町役場での意見交換会
今年4月に再開したJビレッジ(宿泊先)
日本専門家との会合の様子

以上

お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)