韓国原産KAP2024「原子力発電で気候危機を克服する道すじ」参加報告について

当協会は、1973年に協力覚書を結び交流を継続している韓国原子力産業協会が主催する第39回年次大会(KAP2024)に出席しました。今大会は、4月24日(水)、25日(木)の2日間、釜山のBEXCOで開催されました。大会の基調テーマは、「原子力発電で気候危機を克服する道すじ」で、セッション1、開会セレモニー、特別セッション、セッション2、で構成されており、約750名が参加しました。また、25日年次大会終了後には、一部の参加者向けに、テクニカルツアーが組まれました。並行開催された国際原子力産業展示会(INEX2024)は24日(水)~26日(金)の3日間行われ、海外企業を含む101社が出展し延べ14,500名が参加しました。

セッション1

一日目午前に行われたセッション1では、「韓国を力づける、365日安全な原子力エネルギー」をテーマに、韓国水力・原子力(KHNP)、梨花女子大学、韓国電力公社原子力燃料(KEPCO NF)からの発表があり、日本からは、東京大学前副学長・教授の関村直人氏より、「日本における原子力発電所の長期運転と高経年化管理」というテーマで講演がありました。関村氏は、日本の原子力発電所の現状、福島第一原発事故から学んだ教訓、長期運転のための規制枠組み、安全管理等に言及しました。

東京大学 関村直人教授
パネルディスカッションの様子

開会式

午後の開会式では、基調講演が蔚山大学総長のオー・ヨンチョン氏、OECD/NEA事務局長のW.マグウッド氏、英国原子力産業協会(NIA)チーフエグゼクティブのT.グレイトレックス氏の3者により行われました。オー氏は、国内経済における原子力産業の重要性を強調し、産業の発展に向け、研究者、企業の挑戦精神、 政府の支援、国際協力、市民社会の支持が必要だと訴えました。マグウッド氏は、CO2排出削減という難しい目標を達成するには、原子力を気候変動の解決策の一部として含めることが重要だと述べ、韓国に対し、原子力イノベーションを推進し予定通り予算内で原子力発電所を建設する上で主導的な役割を果たすことを求めました。グレイトレックス氏は、エネルギーミックスの重要な部分として原子力発電が受け入れられつつある一方で、納期、予算、原子力発電プロジェクトなどの課題に対処し、業界関係者、政府、機関の間で連携と協力を行うことが重要であると呼びかけました。

開会式 VIP集合写真
表彰式

特別セッション

続く特別セッションでは、「気候危機における原子力の役割」と題し、フィンランド原子力産業協会(FinNuclear)理事長のH.ヴァルヨネン氏、檀国大学教授のチョー・ホンチョン氏、ルーマニア原子力産業協会(ROMATOM)のB.テルメガン氏、建国大学教授のパク・ジョンベ氏による講演後、パネルディスカッションが行われました。講演者は共通して、各国の地理・気候の観点から、ネットゼロエミッションを達成するために原子力発電の重要性を指摘しました。ヴァルヨネン氏は、原子力に対するフィンランド国民の支持率の高さを挙げ、国民との対話の重要性を繰り返し訴えました。チョー氏は、韓国政府がカーボンフリーエネルギー(CFE)の認証制度を導入したことを挙げ、国際的な通用性を高めるためにグローバル協力を推進していく考えを示しました。テルメガン氏は、原子力容量を増やすため、既存のプラントの改修、新規建設、SMRの開発、燃料サイクルの管理など、進行中の原子力プロジェクトについて説明しました。また、雇用の創出、研究開発、国家支援やEUからの資金提供などが、ルーマニア原子力の開発に重要であると述べました。パク氏は、2030年と2050年のカーボンニュートラル目標に向け、原子力エネルギーと再生可能エネルギーの設備容量を増やすため、送電網の拡充、長期エネルギー貯蔵システムの構築、電力市場の改善などの課題を挙げました。

フィンランド原子力産業協会 ヴァルヨネン理事長
ルーマニア原子力産業協会 テルメガン氏

セッション2

二日目午前のセッション2では、「原子力で新たなエネルギーの視野を広げる」をテーマに、斗山エナビリティ本部長のキム・スンミン氏、英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス氏、Centrum Łukasiewi社ディレクターのR. ルカシク氏、WestinghouseチーフエンジニアのM. アフメド氏から発表があり、パネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッションでは、原子力発電にはサプライヤーが多くいる一方で、実際のビジネスは低迷し障害が多いことが挙げられ、このギャップを埋め、10年後、20年後も今の競争環境を維持するために何をする必要があるかという議論が交わされました。グレイトレックス氏は、25か国が原子力容量を3倍にすることに賛同しているにもかかわらず、世界銀行が原子力融資を禁止していることを問題視し、 原子力の環境に優しいという側面を認識し世界銀行などの機関からの融資制限を撤廃することを解決策として提示しました。

英国原子力産業協会 グレイトレックス氏
パネルディスカッションの様子

国際原子力産業展示会

・KHNPを始めとする韓国国内企業、及び海外からは、日立GEニュークリア・エナジー、Orano, Framatome, Westinghouseなどの企業の展示出展がありました。

・展示会の開会セレモニーでは、当協会の新井史朗理事長がVIPとしてテープカットイベントに参加しました。その後、VIPが各ブースを廻り、企業の紹介・説明を受けました。VIPの中には釜山広域市市長パク・ヒョンジュン氏も参加しており、各報道関係のカメラ撮影が各ブースで行われました。

国際原子力展示会 開会式
国際原子力展示会 会場の様子
国際原子力展示会 ブース説明
国際原子力展示会 中小企業ブース

テクニカルツアー

・2日目の午後には、テクニカルツアーに参加し、セウル原子力発電所を視察し、KEPCO KPS社の原子力メンテナンスエンジニアリングセンターを訪問しました。

・セウル原子力発電所はAPR1400のプラントを採用しており、1、2号機は稼働中、3、4号機は2024年、2025年の送電開始に向け準備を進めています。

・実際に2号機の中に入り、使用済み燃料プールや中央制御室、タービン建屋等を見学しました。

・1号機~4号機を見渡せる高台からは、少し離れて位置する新古里原子力発電所・古里原子力発電所が見えました。

・原子力メンテナンスエンジニアリングセンターでは、使用済み核燃料の移動のトレーニングや、装置・ロボットの開発等を行っていました。

セウル原子力発電所 玄関
原子力メンテナンスエンジニアリングセンター外観

以上

お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)