韓国の原子力世論調査結果について(2008.11.12)
2008年11月12日
日本原子力産業協会国際部
韓国の原子力文化財団(http://www.knef.or.kr)はこのほど原子力に関する国民の意識調査結果を発表しました。同調査は、2000年以降の9年間の国民の意識の変化も示しています。下記に、同財団が本年8月21日付け公表した報道資料(韓国語)の邦訳(全訳)を紹介します。
原子力に対する国民認識 大幅に改善
国民3人に2人が原子力発電所の拡大に賛成、原子力発電所を居住地へ受け入れてもいいという意見も上昇
国民の3人に2人は、原子力発電所の比率を「現在より高めなければならない(67.5%))」という意見に賛成しており、居住地域内に原子力発電所を建設することに対しても、「賛成、または地域投資の規模を見て決定する(67.4%)」という胸の内を明かした。
<世論調査結果>
区分 | 年度 | |||
---|---|---|---|---|
’08 | ’07 | 比較 | ||
原子力発電は必要だ | 92.5 | 82.8 | ↑9.7 | |
原子力発電は安全だ | 63.4 | 51.4 | ↑12.0 | |
原子力発電の比率を上げるべきだ | 67.5 | 43.6 | ↑23.9 | |
原子力発電を居住地域に受け入れる | 居住地域に建設することに賛成 | 34.6 | 27.4 | ↑7.2 |
(地域発展に対する投資金額を見て決める) | 32.8 | 18.3 | ↑14.5 |
□原子力文化財団が、世論調査の専門機関である「リサーチ&リサーチ社」に依頼し、全国の20歳以上の成人男女1,000名(信頼度95%、サンプルエラー±3.1%)を対象に、「原子力発電所の適正比率に対する国民意識」について電話調査を実施した。指標項目は、原子力発電の必要性、安全性、発電所の新規建設(原子力発電所の比率)、居住地への受け入れ、などで構成されている。
□主要結果
- 「原子力発電所が必要だ」という回答は、前年に対して、9.8%上昇の92.5%で、大部分の国民が原子力の必要性を認識している。一方、「必要ではない」という回答は3.2%下がって5.8%にとどまった。
- 「原子力発電の比率を高めるべきだ」という回答は67.5%で、前年に比べて23.9%上昇した。一方、「原子力発電の比率を下げるべきだ」という回答は6.5%で、前年の6.0%に対して、わずかに上昇した。
*比率を高める理由は、「電力需要の増加に備えて」、「最もふさわしい代替エネルギー」、「経済的エネルギー」、「クリーンエネルギー」、の順。 - 「原子力発電は安全である」という回答は63.4%で、前年に比べて12%上昇した。一方、「安全ではない」という回答は、7.1%下がって21.8%にとどまった。
*安全ではない理由としては、「廃棄物処理と放射能漏れ」、「事故発生の可能性のため」という回答があった。 - 「居住地域に原子力発電所を建設することに賛成」の意見は、6.9%上昇の34.6%、「地域の発展に対する投資規模によって決める」は、14.5%上昇の32.8%、反対は9.7%下落の32.7%。
*「地域の発展に対する投資規模によって決める」という意見が大幅に増え、地域支援を期待する傾向が表れている。
□今回の調査結果は、中低レベル放射性廃棄物処理場の立地選定の解決とともに、石油価格高騰が続いていること、そして、地球温暖化による原子力ルネッサンス、など世界における原子力建設の動きを反映してものだと言える。
□年度別の認識度変化の推移を分析すると、2005年には放射性廃棄物処理場の選定と関連した、集中広報と賛否討論などが、原子力に対して肯定的に作用し、前年に対して大幅に上昇した。
一方、2006年には、北朝鮮での核実験(2006年10月)の影響で、反対世論が高まった。
*放射性廃棄物処理場の立地選定による肯定的影響が18%、北朝鮮の核実験による否定的影響が42%としてあらわれた。(2006年世論調査の回答者を対象に調査した結果。2007年6月「韓国リサーチ」)
□2007年と2006年では、似たような数値の結果が出ているが、今回の調査では、石油価格の上昇、地球温暖化など、エネルギー状況の変化が原子力に対して、肯定的な影響を与えたものと考えることができる。
・調査期間:2008年7月12日
・調査対象:全国 19歳以上の成人男女 1,000名
・誤差範囲:信頼度 95%、誤差範囲 ±3.1%P
・調査機関:R&R(電話調査、2008.7.12)
【参考】2000年~2008年 原子力国民世論 変化の推移
原子力発電の必要性
項目 | ’00 | ’02 | ’03 | ’04 | ’05 | ’06 | ’07 | ’08 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
必要だ | 84.4 | 83.9 | 90.7 | 91.2 | 95.4 | 86.8 | 82.8 | 92.5 |
必要ない | 8.0 | 11.4 | 6.7 | 5.7 | 4.6 | 4.6 | 8.7 | 5.8 |
わからない/無回答 | 7.6 | 4.7 | 2.6 | 3.1 | – | 8.7 | 8.5 | 1.6 |
原子力発電の安全性
項目 | ’00 | ’02 | ’03 | ’04 | ’05 | ’06 | ’07 | ’08 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
安全だ | 33.6 | 37.6 | 63.0 | 59.4 | 70.6 | 46.0 | 51.4 | 63.4 |
安全でない | 54.0 | 58.2 | 31.5 | 31.7 | 28.0 | 33.7 | 28.9 | 21.8 |
わからない/無回答 | 12.4 | 4.2 | 5.5 | 8.9 | 1.4 | 20.3 | 19.8 | 14.8 |
原子力発電所(原子力発電の比率)建設
項目 | ’00 | ’02 | ’03 | ’04 | ’05 | ’06 | ’07 | ’08 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
比率を高めるべき | 48.3 | 39.2 | 36.9 | 60.7 | 64.9 | 52.0 | 43.6 | 67.5 |
現状維持 | 34.0 | 48.5 | 52.7 | 28.3 | 28.0 | 28.5 | 38.2 | 24.3 |
低めるべき | 9.0 | 9.3 | 7.4 | 8.4 | 7.1 | 5.3 | 6.0 | 6.5 |
わからない/無回答 | 8.7 | 3.0 | 3.0 | 2.6 | – | 14.2 | 12.2 | 1.7 |
居住地域への原子力発電所の受け入れ
項目 | ’00 | ’02 | ’03 | ’04 | ’05 | ’06 | ’07 | ’08 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
賛成 | 10.9 | 16.2 | 29.1 | 26.0 | 50.5 | 22.3 | 27.4 | 34.6 |
地域発展への投資規模によって決める | 11.3 | 10.4 | 29.9 | 44.0 | 15.8 | 23.6 | 18.3 | 32.8 |
反対 | 74.0 | 71.0 | 40.2 | 28.2 | 33.8 | 54.1 | 54.3 | 32.6 |
世論指標の変化推移(%)
項目 | ’00 | ’02 | ’03 | ’04 | ’05 | ’06 | ’07 | ’08 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
原子力発電の必要性 | 84 | 84 | 91 | 91 | 95 | 87 | 82.8 | 92.5 |
原子力発電の安全性 | 34 | 38 | 63 | 59 | 71 | 46 | 51.4 | 63.4 |
原子力発電の比率拡大 | 48 | 39 | 37 | 61 | 65 | 52 | 43.6 | 67.5 |
居住地への受け入れ* | 22.2 | 26.6 | 59.0 | 72.0 | 66.3 | 45.9 | 45.7 | 67.4 |
*「地域発展への投資規模によって決める」という意見も含む。
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