第8回東アジア原子力フォーラム開催報告
2021年11月26日
(一社)日本原子力産業協会 国際部
当協会は、第8回となる「東アジア原子力フォーラム」を主催しました。昨年は新型コロナの影響で延期としましたが、今回のフォーラムはオンライン開催とし「COVID-19対策を含めた東アジアにおける原子力産業界の最新状況」や「福島第一ALPS処理水の取扱いを含めた廃炉の現状」、「廃止措置、放射性廃棄物の処理・処分」、「原子力イノベーション、新型炉・SMR開発の動向」をテーマに、情報交換を行いました。本フォーラムには日本原子力産業協会(JAIF)、韓国原子力産業会議(KAIF)、中国核能行業協会(CNEA)、台湾核能級産業発展協会(TNA)からの発表者・関係者や産業界からの傍聴者を含め、約160名が参加しました。
フォーラムでの主な内容
〇 開会挨拶
JAIF新井理事長より、「この東アジア原子力フォーラムは東京電力福島第一発電所事故を踏まえて2013年より実施している。今回は新型コロナの影響によりオンライン開催だが情報共有・連携促進をはかる場として一衣帯水の関係にある東アジアの仲間が率直に意見交換することのできる大変有意義な機会であり、今後も安全の確保を大前提に社会からの信頼を得ながら原子力利用による持続的発展という共通の目標達成のため協力していきたい。」との挨拶がありました。
〇 開会セッション「東アジアにおける原子力産業界の最新状況」
中国からはCNEAより、稼働・建設中の発電基数や発電量、安全運転実績が世界トップクラスを誇ること、第3世代AP1000やEPR、第4世代高速ガス炉・冷却炉の初臨界達成など先進的な新技術導入の紹介のほか、カーボンニュートラル実現に向け、安全を前提とした政府の原子力推進政策のもと、原子力の割合を増やしながら再生可能エネルギーとともに発展させていくとの発言がありました。
韓国からは韓国水力原子力(KHNP)より、UAEへのプラント輸出など積極的な海外進出や、発電所内のロボット等デジタル技術開発が紹介され、SMRについては高い安全性や建設費用の削減、様々な地域に合わせた設計建設などのメリットを上げ、活用の幅を広げると強調されました。
台湾電力からは、コロナ禍における徹底した従業員の健康管理等感染対策の強化と脱原子力政策の中での廃炉措置について報告されました。ゼロエミッションを目指すなか原子力発電の役割を望む一方で、国民と十分にコミュニケーションをとり、最終処分場サイト選定の模索を続けていることが報告されました。
日本はJAIFから、第6次エネルギー基本計画の中での原子力の位置づけや、プラント再稼働については、運転40年超の美浜3号機の再稼働について紹介したほか、東京電力より福島第一発電所廃炉の現状とALPS処理水放出の経緯が詳細に説明されました。
〇 セッション1 「廃止措置、放射性廃棄物の処理・処分」
台湾からは台湾電力における廃止措置に伴う放射性廃棄物の取り扱いについて、管理プロセス従って3つにクラス分けされることや廃棄物の放射線量測定方法、また搬出の基準などについて詳しい説明が行われました。
中国からは高レベル放射性廃棄物の地層処分候補地として6つが挙げられ、その中の北山サイトで今年の6月、地下研究所の建設が着工したことが報告されました。今後、この研究所を通した国際協力を促進する旨の発言もありました。
韓国からは韓国原子力環境公団(KORAD)より国内の中低レベル放射性廃棄物管理の現状について説明があり、2016年に制定された高レベル放射性廃棄物管理基本計画については、その見直しに関して今年3月に再検討委員会によって政府への勧告書が提出されたとの報告がありました。
日本からは原子力発電環境整備機構(NUMO)より国内の地層処分事業の概要や管理の現状について説明があり、最終処分地選定の動きとして2020年に寿都町と神恵内村で文献調査が開始されたこと、また、今年2月に公表された地層処分に関する包括的技術報告書について紹介が行われました。
〇 セッション2 「原子力イノベーション、新型炉・SMR開発の動向」
韓国からはKHNP中央研究所より、革新型SMRについて、一体型原子炉及び内蔵型制御棒駆動装置を採用することにより、安全性、経済性を高めた設計で開発しているとの発表がありました。
中国からはCNEAより、建設中のSMRであるACP100について、2021年7月に着工し、設計寿命60年、燃料交換周期24ヵ月、設備利用率90%以上の設計で16組の蒸気発生器があり、二重の配管を使った新しく効率のよい技術であるとの説明がありました。また、高温ガス炉のHTR-PM-200については、1次系の冷却材はヘリウムであり、炉心入口のヘリウム温度は250℃、出口温度は750℃に達し、発電機1基をモジュールユニット2基で共有する設計であるとの説明がありました。
日本からは日本原子力研究開発機構(JAEA)より、高温工学試験研究炉(HTTR)について、震災以降の新規制基準の適合性検査を経て2021年7月30日に再稼働を果たしたとの報告が行われました。
今回のフォーラムでは、各国・地域が原子力産業界の最新動向を報告するとともに、これまで議題になかった原子力イノベーション、新型炉・SMR開発の動向がテーマとして取り上げられ、活発な情報・意見交換が行われました。また、東アジア地域でも関心の高いALPS処理水の取り扱いに関する詳細説明を通して、東アジア関係者の理解促進が図られました。
来年の第9回東アジア原子力フォーラムは台湾での開催を予定しています。
お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)