WANO隔年総会で新井理事長が講演(2022.10.10)

当協会の新井理事長は10月10日、チェコ・プラハで開催された世界原子力発電事業者協会(WANO)の隔年総会に参加し、「日本の原子力産業の現状と変化する環境」について講演しました。

総会は10月10日、11日の2日間、30ヵ国から約300名が参加し、キーノート・パネルで、グロッシ IAEA事務局長、ビルバオ・イ・レオンWNA事務局長、ルイエOECD/NEA原子力安全技術・規制部長、デバゼイユNucleareurope事務局長、コーズニックNEI理事長、新井理事長が講演を行いました。

[新井理事長の講演概要]

  • 政府が掲げる2050年までのカーボンニュートラル政策や昨今のエネルギー価格の高騰を受け、国際競争にさらされる産業界は、低い発電コストで安定した電力供給が可能な原子力発電所の再稼働に強い期待を表明している。
  • 日本での意識調査によると、2011年の福島第一原発の事故以来、原子力発電所の再稼働に対する支持は低迷している。しかし、最近の新聞の世論調査の結果では、再稼働を支持する人の割合が徐々に増えてきていることもあり、明るい兆しも見えてきている。
  • 福島第一原発事故以前は、54基が稼働中、3基が建設中であった。しかし、その後、21基が早期に廃止されることが決定され、他の27基が新規制基準に適合するよう許可更新を申請している。これまでのところ、そのうち10基だけが再稼働している。
  • また、新規制基準では、原子力発電所の運転期間を40年から最長60年まで1回だけ延長することができ、これまでに4基が認可されている。
  • 運転・保守・工事の設備投資や新規雇用が困難なため、技術継承の難しさが懸念されている。また、稼働しているプラントの数が少ないため、従業員が技術を磨く機会が少ないという悩みを示す企業も少なくない。
  • JAIFは今年7月、サプライチェーン調査に基づき、ステークホルダーへの提言を発表した。
    1. 原子力発電所の早期再稼働に向け、万全の対策を講じること
    2. 新規の原子力発電所の建設を求めるエネルギー計画の明示
    3. 原子力発電への投資を促進する事業環境の整備
    4. 大型軽水炉を含む革新的原子炉の技術開発・実証事業に対する政府支援の拡大
    5. 機器・部品の輸出促進のための包括的な支援策の検討
  • 8月9日の原子力小委員会では、革新的原子炉の開発における次の課題を指摘した。
    1. 規制要件の制定や安全審査の長期化に対応するため、規制の予見可能性を高める必要性
    2. 電力市場の全面自由化による投資回収の保証
    3. 燃料リサイクルや核廃棄物処理などバックエンド事業の環境整備
    4. 既存のサプライチェーンの維持・強化
  • 原子力小委員会では、「革新的原子炉の技術ロードマップ」についても議論された。原子炉技術に関する今後の開発項目を5つに分類し、その導入スケジュールを示した技術ロードマップを作成した。5つとは、革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉である。
  • 安全性を高めた新型の大型軽水炉が革新軽水炉として盛り込まれ、2030年代の商業運転開始を目指した計画案が策定されている。
  • 8月24日に開催された総理の出席する第2回グリーントランスフォーメーション実行会議では、政府は運転可能な10基の原発に加え、既に設置変更の許可を得ている7基の再稼働に努めることが報告された。
  • 会議では、新しい安全機構を組み込んだ次世代革新炉の開発・建設についても言及された。
  • 岸田首相は、「再生可能エネルギーや原子力は、グリーントランスフォーメーションを進める上で不可欠な脱炭素エネルギーであり、将来へ向けた選択肢を強化するため、制度的枠組みなど具体的な結論を年末までに策定すべきである」と締めくくった。
  • 原子力産業界は、原子力の積極的な利用とそのために必要な政策について、首相を含む高官による会議での議論に期待している。

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