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原子力の大都市での利用可能性についての調査

平成12年7月31日
(社)日本原子力産業会議

 わが国の原子力施設は、実用化の主流となっている発電プラントを中心として、その多くの施設が都市部から比較的遠隔地の海岸立地となっている。このような立地の状況が、電力の消費地と生産地との間での住民の意識格差を生じている要因ともなっている。

 原子炉の炉型については、わが国ではこれまでに受動的安全炉や、熱供給用原子炉をはじめ、各種の革新的な炉型方式の研究や開発がおこなわれているほか、発電所など原子力施設の建設についても種々の立地方式の検討がおこなわれている。

 また、原子力エネルギーの利用形態についても、発電のみならず熱利用、海水淡水化、コジェネレーション、原子力船の動力利用などに関して、海外諸国を含めてその実用化が進められてきた。例えば、南アフリカでは小型高温ガス炉の建設が具体化するなど、海外ではわが国に先行して従来とは異なる炉型による発電や発電以外の利用も含めた各種エネルギー供給源としての原子力利用の実用化が進められてきている。

 また、原子炉(研究炉)の中性子を利用したがん治療など、原子力利用の一翼を担うアイソトープ・放射線利用については、医療をはじめ工業・農業など、幅広い分野で実用化されており、国民生活に寄与している。

 高度に情報や技術が発達した現代社会において、大都市は政治、経済、産業、交通、医療など、国民生活に深く関連する各種重要事項の中枢的な役割を果たしてきている。こうした大都市において、今後継続的にその機能が健全に働くためには、エネルギー供給・福祉を含む諸機能の充実や効率的な運営と安定化、危機管理対策などが十分図られていくことが肝要である。

 原産では、将来の原子力利用開発の展開の一つとして、エネルギー大需要地でもある大都市を対象として取り上げ、将来のニーズを把握した上で、その特徴や機能に適合し、今後原子力が更に寄与し得る利用形態の可能性を調査し、それを実現していく上での技術的、経済的、社会的問題点を検討し、大都市での原子力利用を展望することとする。

 そのため、まず若干名の有識者から、調査検討の基本的な方向と範囲を定めるために意見を聞いた上で、必要に応じて専門家による具体的検討会を設置して調査を進めることとする。

以 上


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