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[COP6 と原産の活動]

去る11月13〜25日にかけ、オランダのハーグで第6回国連気候変動枠組み条約締約国会議が開催され、182カ国、323 NGO 団体、443のプレス、総計約7,000人が参加した。今回の会議は、1997年に京都で開催された COP3 において採択された議定書の規定づくりを担う重要な会議で、2002年の議定書発効をめざし交渉が難航した一方、ビジネス NGO、環境 NGO とも従来にない活発な活動を展開した。

今回の交渉で、主な柱となったのが、途上国の扱い、原子力の CDM における位置付け、シンクであり、各々、日米と EU との立場の違いが鮮明となり、当初から交渉の困難さが指摘されていた。シンクでは、植林等でできるだけ炭酸ガスの吸収をめざした日米加がまとまり独自の案で交渉にのぞんだが、省エネで炭酸ガス排出削減を主張する EU と対立した。また、CDM における原子力の扱いに関しては、途上国、特に島嶼諸国連合や石油産出国の批判が絶えない一方、EU の執拗な反対にあい、最終的に米国も寝返り、日本政府が孤立してしまうという状況になった。日米とも、従来 CDM に関しては、二国間ベースで決定すべき事項という認識で一致していた。その他、遵守・罰則でも先進国内で足並みがそろわず、排出量取引についても、上限の設置について従来通りの対立が日米、EU 間でみられた。途上国向けの地球環境基金の設立に関しては、大枠で合意可能といった状況であり、具体的に決着した事項は極めて限られた。

原子力に関しては、IAEA がワークショップで中国、韓国、ベトナム、インド、パキスタン、5カ国の CDM ケーススタディを発表し、途上国の原子力計画が CDM により効果的に促進される旨を強調した。EU が原子力を排除する「リスト」の作成を断念したにもかかわらず、原子力についてはプロンク議長の調停案で、CDM からはずされた。最終的に、COP6 は、交渉が全体的に決裂し、半年後の5月か6月にボンで再開されることとなった。

NGO の活動に関しては、環境グループの圧力が一層強化された一方、産業界も生き残りをかけて、積極的にロビー活動を展開した。環境グループの活動の焦点は、シンクと原子力否定であり、その点で日本政府は矢面に立たされた。米国の交渉代表者がパイを投げつけられる等、特に、環境グループによる過激な行動が度々みられた。連日、反原子力のデモが展開された中、国際原子力フォーラム (INF) * や電力業界は原子力の支持と理解をとりつけるべく、さまざまなイベントやパンフレットの頒布等を実施した。

* メンバー:欧州フォーラトム、欧州原子力学会、米国原子力エネルギー協会、ウラン協会、カナダ原子力協会、韓国原産、原産

国際原子力フォーラム (INF) の活動

原産は INF を通して、COP6 期間中従来通り、以下の活動を実施した。

展示

INF はブースを設置し、各メンバー団体が各々作成した原子力と地球温暖化に関するパンフレット、ならびに INF ポジションペーパーを頒布した。ブースには、連日プレスも含め多数の訪問者があり、質疑に効果的に対応した。

マスコミ対応

マスコミの取材が多く、ニューヨークタイムズ等のインタビューに対応した。また、各団体のプレス担当者を動員し、会議の動向の把握に努めた。

イベント

INF は21日の18:00〜20:00にインターコンチネンタルホテルでレセプションを開催した。スロベニア、ベトナム、ロシア等の政府関係者、米国の議会議員も含め約70名の参加者があり、冒頭に EDF のオランダ事務所長より地球温暖化対策としての原子力の説明がされた後、懇談が行われた。会場の外では、反原子力のデモが行われた。

ヤングジェネレーションネットワーク (YGN) も放射性廃棄物処理処分をテーマに、16日の13:00〜15:00に会場内でワークショップを開催し、約50名の出席者があり、活発な意見交換がされた。ワークショップではスウェーデンの SKB が低レベル放射性廃棄物処理をコンピューターグラフィクスを使って説明した他、原子力の CDM における有効性の説明等もされた。質疑応答では、チェルノブイル事故後のベラルーシにおける疫学調査に基づく原子力批判や、米国内での立地が非民主的である等の批判がされた。また、アジアにおける廃棄物処理の可能性について地質上から説明が求められた。

YGN は、翌17日にオランダ唯一の原子力発電所であるボルセラ発電所へのサイトツアーを企画し、ジャーナリスト、政府関係者等約30名の参加があり、原子力の理解向上に資された。

電気事業連合会との協力

原産は、今回初めての試みとして、電事連との共催で22日の19:00〜21:00にワークショップを開催した。「原子力は (地球環境の) 解決策か汚染源か」と題したワークショップでは、ブルガリア、韓国、米国、ロシア、ウクライナ、ペルー等のプレスや政府関係者から約150名の参加者があり、活発な意見交換が図られた。冒頭に、米国原子力エネルギー協会 (NEI) の環境政策部長のM.コェーツ女史より原子力の温暖化ガス削減における重要性ならびに廃棄物処理の適切性等についての講演があった。続いて、電力中央研究所・狛江研究所の池本一郎副所長より、人口増加とエネルギー需要の増大に伴うアジアにおける原子力開発・利用の重要性、日本における原子力と温暖化ガスの関係等が説明された。その後、質疑応答で、中小型炉の将来性、特に CDM における重要性が指摘された他、廃棄物問題への効果的解決策等が議論された。その後、懇談が続けられた。

以上

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