[第41回原子力産業実態調査報告] 第一部 研究開発の縮小、鮮明に Back

民間企業の研究支出・人員削減に歯止めかからず

1999年度の鉱工業の原子力関係総研究支出高 (海外技術導入費を除く) は395億円で、対前年度 (502億円) 比21%減となり、過去10年間で最低を記録した前年度実績をさらに下回る結果となった。また、電気事業の試験研究開発費は359億円となり、前年度 (362億円) に比べて微減にとどまったものの、95年度から続いている減少傾向に歯止めはかからなかった (図-1)。

一方、99年度の民間企業の研究者数は前年度比7%減の1,830名。内訳は鉱工業1,718名 (前年度比7%減)、電気事業112名 (前年度比17%減)であった。この結果、民間企業の研究者数は、90年度の3,100名が、この10年間で約41%も減少したことになる。

近年は、世界的にみても原子力研究開発が停滞している。主要国の政府関係原子力開発予算の推移をみても、90年代はフランスが横ばい、ドイツは漸減、米国は急激な減少になっている。わが国の原子力予算は、4,000億円後半で横ばいで推移しているが、その内容をみると日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構の研究開発分野の予算が漸減傾向にある。こうした中で、電気事業、鉱工業といった民間企業でも、原子力分野における研究開発意欲の減退が、支出高の減少というかたちで現れている現状が今回の調査からも一層鮮明になった。

減少著しい原子力発電関連部門の研究支出

鉱工業の原子力関係研究支出高を部門別にみると、原子炉機材が前年度比4%減の122億円、燃料サイクルが29%減の71億円、建設・土木が12%減の56億円、発変電機器が35%減の3億円となっており、原子力プラント建設に関係の深い部門が何れも前年度を下回り、ここ10年間で最低の水準となった。RI・放射線機器/サービスでは99年度は前年度比16%減の56億円となったが、ここ10年間をみるとほぼ横ばい。核融合機器やサービス等を含むその他製造は41億円となり、前年度から62%減少した (図-2)。

99年度の各部門の研究支出の構成比は、原子炉機材31%、燃料サイクル18%、建設・土木14%、発変電機器1%であり、原子力プラント建設に関係の深い部門で全体の64%を占めた。ちなみに、90年度のこの4つの部門の構成比は73%であった。

次に、この10年間を前半 (90〜94年度) と後半 (95〜99年度) に分け、それぞれの鉱工業研究支出の合計値をみると、前半は3,620億円であるのに対し、後半は13%減の3,144億円に落ち込んだ (図-3)。部門別では、燃料サイクルが29%、RI・放射線機器/サービスが28%、その他製造が9%、それぞれ増加したのに対して、原子炉機材は37%、発変電機器は69%、建設・土木は17%、RI・放射線利用は34%、それぞれ減少した。こうしたことから、原子力プラント建設関連分野の中心を占める原子炉機材部門は、前半5年間の合計では研究支出全体の31%を占めていたが、後半5年間の合計では23%にまで低下。この分野への研究開発投資が大きく落ち込んだことが明らかになった。

電機・重電製造業の減少が顕著に

99年度の業種別研究支出高は、電機・重電製造業 (電気機器製造業と造船造機業をあわせたもの) が179億円、建設業が69億円、原子力専業が33億円であった。

この10年間の電機・重電製造業の研究支出は、明らかな減少傾向を示しており、10年前 (90年度) に比べてほぼ半減している。建設業はここ10年間、年度による増減は多少あるものの、ほぼ横ばいであった。原子力専業の研究支出は、90年度と97年度にピークがあるが、これは燃料サイクル部門の支出動向と一致しており、燃料サイクル関連分野に研究開発の重心がシフトしている現状が伺える (図-4)。

研究設備投資が急減

99年度の鉱工業研究支出のうち、設備投資は全体の5%に相当する20億円で、前年度の35億円から42%減で、2年連続の大幅な減少となり、鉱工業各社が新たな研究施設の建設や設備の充実に対しての投資を手控えている状況が伺える。

なお、99年度の研究支出で最も大きい部分を占めたのは人件費であり、全体の49%に当る195億円で、前年度より15%の減少。材料費、光熱水費等を含むその他経費 (海外技術導入費を除く) は全体の45%を占める180億円で、前年度より24%減少した。

研究設備投資のこの5年間の動きを部門別にみると、RI・放射線機器/サービスとRI・放射線利用の各部門がほぼ横ばいであるほかは、燃料サイクルが97年度に突出している点を除けば、減少傾向にある。中でも原子炉機材は96年度 (この5年間のピーク) は43億円であったが、99年度は5億円で88%の減少になっており、軽水炉開発が一段落したとはいえ、ほとんど新たな設備投資が行なわれていない状況である (図-5)。

研究投資率も低水準に

鉱工業の原子力関係研究投資率は、売上高に対する研究投資 (支出) の比として表され、鉱工業における研究開発の活動状況を示す指標となるが、99年度は2.54%となった。研究投資率はここ10年間、年度による変動はあるものの、ほぼ4%前後で推移してきた。99年度は売上高が増加した反面研究支出が減少したため、前年度の3.54%から1ポイントの減少で、3%を下回った。また、総務庁統計局の科学技術研究調査報告によれば、99年度のわが国の産業全体 (会社) の研究投資率は3.06%であり、近年は漸増傾向で推移している。原子力産業の研究投資率は、今までは常に産業全体より高めに推移してきたが、99年度ははじめて産業全体より低くなった。

一方、研究投資率を部門別でみると、99年度は全ての部門で前年度を下回った。原子力プラント建設分野に関係の深い部門をみると、原子炉機材は前年度より0.44ポイント低い2.63%、燃料サイクルは同1.14ポイント低い2.49%、発変電機器は同0.65ポイント低い0.37%、建設・土木は同2.69ポイント低い4.23ポイントとなっている (図-6)。

研究者数、ピークの半分に

99年度の民間企業の研究者数は前年度比7%減の1,830名で、内訳は鉱工業が1,718名 (前年度比7%減)、電気事業が112名 (前年度比17%減)であった (図-7)。

鉱工業の研究者数は、85〜92年度は3,000〜3,100名で推移していたが、それ以降は減少が続き、98年度に1,846名となり、2,000名を割り込んだ。99年度の1,718名は、ピークであった88年度の3,141名のほぼ半分である。

電気事業の研究者は調査開始以来、概ね増加で推移してきたが、97年度の142名をピークに、この2年間は減少が続いている。


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