[JAIF]-News 2003年10月29日

第10回日仏原子力専門家会合(N-20)共同声明

  1. フランスおよび日本の原子力専門家からなるグループN−20は、第10回会合を、2003年10月28日〜29日、松山市で開催した。
     2日間の会合において、日仏双方の専門家は、次のテーマについて情報交換と率直な意見交換を行った:両国の最近の原子力の状況、原子力発電と燃料サイクル事業の展望、原子力施設の安全と運転管理、パブリックリレーション活動、国際問題他最近の諸問題。

  2. 原子力発電は現在、フランスでは全電力供給の約80%、日本では約35%を占めている。双方の専門家は、電力の安定供給と環境保全のため、原子力発電が両国において今後も重要な役割を果たしていくことを確認した。

  3. 日仏両国は、原子力発電と核燃料サイクルは車の両輪であり、発電に伴って発生するプルトニウムを効率的にエネルギーに転換していくことが、環境、資源、核拡散防止のいずれの面からも必要であり、原子力発電の持続的発展への鍵であるとの基本認識で一致した。
     平和利用に徹する日本では、利用計画のないプルトニウムは持たないとの基本方針を堅持しているが、そのためにも、プルサーマル計画の早急な実施が必要であることが強調された。

  4. プルサーマルが社会的にも定着しているフランスでは、プルトニウム利用に加え、更にマイナーアクチナイドの燃焼によって、廃棄物の負荷を軽減しつつ燃料の利用効率を高めることが重要と認識され、第2、第3世代炉から第4世代炉への移行の過程で、その実用化をめざすべく、マイナーアクチナイドの燃焼を組み込んだ処理技術の開発などのプログラムを進めている。
     この分野での協力のため、日仏両国は双方の専門家による会合を立ち上げることで合意した。

  5. 日仏双方より、国際的分担の枠組みに則った第4世代原子炉研究の詳細が、報告された。第4世代炉が技術的に成熟するのは2030年頃になると予想されており、両国はそれに至る過程で必要とされる、第2、第3世代炉の開発を、それぞれのニーズに則って進めているが、そのプログラムが紹介された。
     両国は水素エネルギーの利用拡大に向け、原子炉、特に高温ガス炉の果たす役割に着目しており、この分野での実績を踏まえ、協力関係を深めつつ研究開発を進めていくことが重要との認識で一致した。双方は、持続的発展のためには、完結した燃料サイクルを持つ第4世代高速炉が重要であることが強調された。

  6. 日本の原子力安全規制行政の変遷が説明され、原子力界が社会の信頼を回復するためには、今後、規制側、事業者側いずれにも、より一層の透明性、説明責任の下で、合理性を追求することが求められることが認識された。
     フランスの再処理施設の運転に関する規制、公衆との関係についての経験の蓄積が紹介された。また、日本の再処理工場の試運転への取り組みが紹介され、両国の協力関係の更なる発展の重要性が指摘された。

  7. フランスで本年上半期に実施されたエネルギーについての国民討論の結果が紹介された。この結果については、さらに大衆との議論が認識されている。また、廃棄物処理処分体制の確立、地球温暖化防止への原子力の貢献を周知徹底することの重要性が認識された。さらに、将来寿命を迎える原子炉の更改に向けての技術的、制度的準備を始めるべきことが指摘された。この中で改良型EPRの採用に向けて前向きの決定が近く下されると思われる。

  8. 日本からは、エネルギー政策基本法に基づく初めてのエネルギー基本計画がパブリックコメントを求めつつ策定された過程が紹介され、核燃料サイクルを含む原子力発電を基幹電源として推進することが、国策として改めて明確化されたことが報告された。

  9. 放射性廃棄物管理についてのフランスの技術研究の現状および世論の動向が紹介された。日本からは、高レベル地層研究および幌延および瑞浪の進展状況が紹介された。

  10. 日本の最近の東電問題に言及され、原子力の安全確保と信頼獲得を第一として、原子力企業内に安全文化、技術者倫理を浸透させるためには経営における企業統治のあり方が極めて重要であることが示された。
     一方、世論との関係における原子力発電開発の展望が、日仏双方からそれぞれの電力会社の例を引いて紹介され、現場からのトラブル情報原則公表の下に、地方自治体との間にルールを規定し、これが自治体、マスコミさらには市民との強い信頼関係を作った。

  11. 世界のプルトニウムストックの現状およびそれに係る国際協力の現状が紹介された。

  12. 前回のN−20会合以来、フランスと日本は、ロシアの余剰核兵器プルトニウム処分計画を支援するため、数回の技術情報交換会を実施した。その結果、フランスと日本は、最も重要な課題について、共通の理解をより一層深めることができた。
     今回のN−20会合では、フランスと日本は、共同してそしてさらに緊密に、これら重要課題についてロシア連邦および米国の専門家を加えて共同作業を進めることが重要であると認識した。

  13. 核物質の国際輸送については、これまで日仏の間で進めてきた緊密な協力関係を今後とも続けていくことに合意した。また、日本はもんじゅを国際共同プロジェクトに開放する用意があるとの意向を表明し、フランスはこれを歓迎し、これに参加したいことを表明した。
(2003年10月29日、松山市)
[参考]日仏専門家会合の開催について
参加者名簿

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