基本的考え方ヒア 服部原産特任フェロー「原子力と向き合う覚悟の提示を」

2015年7月21日

真:原子力委原産服部氏DSCF4651 原子力委員会は7月21日、服部拓也・日本原子力産業協会特任フェローから原子力利用の「基本的考え方」についてヒアリングを行った。
 服部特任フェローは基本的考え方について、原子力と如何に向き合うかという国家としての覚悟を示し、原子力基本法の目的を具現化してエネルギー基本計画の拠り所となるものであることを期待するとした上で、日本における原子力の価値を再定義し、諸課題の全体像を俯瞰しての基本方針、諸課題の優先順位付けと関係機関の役割や責任の分担、諸課題解決に向けた長期的ビジョンとロードマップ――などを提示すべきだとした。また、原子力委員会に対しては、国の顔として対外的にワンストップウィンドウの役割を担うとともに、省庁横断的課題に対する取り組みの基本方針を示して司令塔としての役割を担っていくことを求めた。
 原子力の価値の再定義にあたっては、目指すべき国の在り方について国民と価値観を共有することを前提とし、その上で欠くことのできないエネルギーの一翼を担う原子力について、これまでの3Eの確保に(1)技術創造立国(2)国際貢献(3)安全保障――の観点を加えて、広く国民に対し「心に届くメッセージ」として発信していくことが重要であると強調。しかしながら国民の多くはエネルギー問題に無関心で自分事として受け止めていないことから、国民が政策決定プロセスに参画できる枠組みの構築や、原子力界のワンボイス化によるわかりやすい情報発信、透明でオープンな国民目線の対話の場の設置、エネルギー問題に公平な判断ができる能力の醸成、公平公正で中立な専門家の関与などの対策案を提示した。
 国際展開の推進に関しては、「基本的考え方」を早急に策定して内外に公表するとともに、国がトップセールスやタイムリーな二国間原子力協定の締結などを行って事業環境を整備し、海外展開を一元的かつ戦略的に検討する司令塔を配して、個々の相手国の事業に対応した統合的な解決策の提案をしていくことが必要だとした。
 人材育成の取り組み強化については、産学官が連携を図りつつ、人材育成ロードマップに基づき、研究炉等の大型教育・研究施設の維持、海外人材育成の戦略的推進、戦略的原子力人材育成のための司令塔の設立を検討していくことについて言及した。
 阿部信泰原子力委員の「インドとの二国間協力には、日本としての折り目正しさが示される」との意見に対しては、「難しい問題だが、逃げずにしっかりと議論していきたい」と意欲を示した。中西友子原子力委員の「福島第一原子力発電所事故でも専門家が不足した放射線化学分野にも留意を」との意見には、「福島の再生なくして原子力の再生はないと常に心に留めて取り組む」と決意を新たにした。岡芳明原子力委員長が「人材ロードマップではプロダクトの部分がはっきりしない」として産官学それぞれが責任を果たしながら連携を図っていくことを求めた点については、「これから基本的考え方をまとめていくプロセスでも、情報交換を続けていければ」と希望した。