動力協会シンポ、WNAリーシング氏が川内1号再稼働を歓迎

2015年9月18日

 日本動力協会は9月17日、「世界および日本におけるエネルギー選択と原子力の役割」と題するシンポジウムを東京・大手町の経団連会館で開催し、世界原子力協会(WNA)事務局長のアニエッタ・リーシング氏、日立GEニュークリア・エナジー社長の武原秀俊氏、東京大学生産技術研究所特任教授の金子祥三氏、地球環境産業技術研究機構理事の山地憲治氏によるパネルディスカッションを行い、福島第一原子力発電所事故後の新たなエネルギー基本計画、アジア諸国における原子力導入の動き、地球温暖化問題など、国内外のエネルギーを巡る状況を概観し、今後のエネルギー選択、原子力産業のあり方について話し合った(=写真)。JEASYMPO
 リーシング氏はまず、先般の川内原子力発電所1号機の営業運転復帰に歓迎の意を述べ、今後も原子力発電所の再稼働が進むことを期待した。同氏は、世界人口の急増とともに電力消費も伸び続ける将来予測をグラフで示しながら、「電力は空気、水と同じく基本的人権」と強調、さらに、IEAレポートを引用し、化石エネルギー消費増に伴う地球温暖化問題の深刻化について、2050年に向け「2度C目標」(工業化前からの世界平均気温を2度Cまでに抑える)を達成するには、「原子力発電量を2倍以上にしなければならない」と述べた。
 また、武原氏は日本の原子力技術について、日立がグループ大で取り組んでいる福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策に関する技術開発、既設プラントの早期再稼働に向けた安全性向上の取組、次世代炉開発、国際展開などを紹介した。廃炉関連では、同社が開発に関わった遠隔操作ロボットがロボット学会賞を受賞したことも披露した。
 日本のエネルギー産業、エネルギーミックス・排出量削減目標については、金子氏、山地氏がそれぞれ政府審議会の検討状況などを説明した。
会場参加者からの質問を募り行われたディスカッションでは、40年運転制、高レベル放射性廃棄物処分、パブリックアクセプタンスなどが議論となった。原子力発電所の運転期間について、リーシング氏は80年間の運転も世界では検討されていることに触れたが、山地氏は単に運転年数だけで定める日本の規制に疑問を呈し、武原氏は海外とパートナーシップを図る上で、各国の法規制に従うのがルールだと述べた。国内で高レベル放射性廃棄物処分が進まぬ状況について、リーシング氏はスウェーデンの取組を例に、わかりやすい情報提供、女性や若者を巻き込んだ理解活動を図っていく必要を主張した。