基本的考え方ヒア 山口氏「これで良いのかと常に問いかける姿勢が大事」
原子力委員会は11月13日、山口彰東京大学大学院教授から原子力利用の「基本的考え方」についてヒアリングを行った。
山口教授は、原子力の役割は理解しつつも原子力に反対する意見が多いという世論調査結果のギャップについて分析しながら、社会とうまく対話していくためには、専門性と国際性を備えた人が国民のことを第一に考え熱意を持って、マスメディアを通じて情報発信していくことが大事だと強調。また福島第一原子力発電所事故では、海外の事象を自分の問題として考えることや、1号機と2~6号機の設計思想の違いを追及する姿勢などが欠けていたと指摘し、安全意識、技術力、対話力のある人材が必要だと語った。こうした中で、現在研究炉が稼働していないことには強い懸念を示し、炉物理実験や原子炉工学応用実験ができず、学生が現場を知る機会を失っているなどの問題があるとした。
原子力委員会に期待することとしては、日本の原子力利用方針を踏まえ、統括的に整合性ある方向性と政策を提示するとともに、それらの活動が適切かつ着実に行われるよう主導性を発揮し監視することや、原子力に関する国民の声に応えるため、全体最適を実現すべく社会に対し積極的に発信することで、国民に真に信頼される専門性と国際性を備える組織として存在感を発揮することを挙げた。また、長期的視点に立って日本の原子力技術基盤を維持・発展させるための政策提言を行うこと、特に人材と安全研究、規格基準について全体調整を実現する司令塔としての役割を果たすこと、さらに国際的連携の枠組みで中核となるワンストップ組織として国際協調や新興国支援および国際知見の我が国への反映を総合的視点からリードすることなどを求めた。
原子力関係者への信頼回復に関する阿部信泰委員からの問いに対しては、明確な目的と熱意を持ってリスクコミュニケーションを行っていくことが大切だと述べた。中西友子委員からの安全文化に対するコメントに対しては、トップであっても現場であってもこれで良いのかと常に問いかける姿勢が大事であり、知識と感受性を備えた人材が必要であると強調した。岡芳明委員長からの細かな品質保証対策に時間を取られすぎず過酷事故を防ぐことに重点を置くべきとの意見については全く同感であるとし、日本は安全対策に対しエラーフリー願望が過ぎるとして、パフォーマンスベースで取り組むことが重要だとした。