福島県の漁業復活と魚介類の風評対策を考えるシンポ、学術会議
福島第一原子力発電所事故に伴う海洋影響や漁業再開の実態について報告を受け、水産物に対する風評対策を通じた被災地復興を考えるシンポジウムが11月27日、東京・港区の日本学術会議本部講堂で開催された。
福島第一原子力発電所事故から4年余りが経過した今、発災当初、沿岸魚介類に見られた高い放射能濃度は大幅に減少し、ほとんどが基準値を下回っているものの、福島県では本格的な漁業再開の見通しが立っていない現状に関して、風評被害も含めた社会的要因が複雑に絡み合っているものととらえ、本シンポジウムでは、東京海洋大学から海域における放射能の影響、福島県漁業協同組合連合会から試験操業の現状について報告を受けるとともに、流通業界、マスメディアからも意見を求め考察した。
水産物市場問題に詳しい東京大学農学生命科学研究科准教授の八木信行氏は、築地の卸売業者が福島産の魚介類を購入せず、購入しても震災前の6~7割の価格に留まっているという「福島産の不利」とともに、事故により漁業衰退にも拍車がかかっている現状について述べた上で、流通力やブランド力の再構築に向けて、本格操業再開が必要なことを訴えた。
消費者の立場から、首都圏にスーパーを展開するサミットの鮮魚部マネージャーの谷川満氏は、20年前と比較して、生鮮魚介類の年間購入数量(2人以上世帯)が64%に下がっているというデータを示した上で、その要因として、(1)不安定な漁獲量、(2)ライフスタイルの変化、(3)有職主婦の増加、(4)鮮魚小売店の減少――をあげ、ニーズに対応していない産地、メーカー、量販店の取組姿勢が、「魚が売れない」背景にあるものと推察した。また、アニサキス食中毒の問題を例に、食品安全に関し「消費者は非常に敏感」と述べ、疑義のあった品目については消費者に提供する際に「安全宣言」が必要なことを強調した。
マスメディアからは、NHK制作局企画開発・ディレクターの栗田和久氏が登壇し、被災地の復興サポート番組制作に携わった立場から、視聴率などのデータを示しながら、放射能問題に関する全国レベルでの訴求力の状況について分析した。