原賠制度専門部会 事業者の予見可能性も踏まえた責任の範囲など議論
原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会が1月20日、都内で開催された。今回は原子力損害賠償に係る制度のあり方として、無過失責任および責任集中、責任の範囲や損害賠償措置などについて議論した。
前回の議論の続きである官民の役割分担については、高橋滋一橋大学大学院法学研究科教授は、事故の特性により責任の対象も変わってくるため一般法とするのは無理があり、その都度行政が判断をするのがよいと思われるが、大事なのは被災者救済にあたり漏れのない制度とすることだとの意見を述べた。馬場利彦全国農業協同組合中央会参事兼営農・経済改革推進部長は、福島第一原子力発電所事故時に責任の所在が曖昧で賠償に時間がかかってしまっている経験から、まずは国が前面に立って迅速に被災者に対応できる仕組みをしっかり検証してほしいと確認した。
無過失責任や責任集中については、現行どおり製造物責任法を適用しないことが適当であるという意見が多かった。責任の範囲については、又吉由香モルガン・スタンレーMUFG証券エグゼクティブディレクターが、電力自由化などによる環境の変化も踏まえて海外事例も参考にしながら検討することが重要だと述べ、柔軟性を持って対応することは大事だが事業者にとっては予見可能性を低下させてしまうことにもなり得ることも留意すべきだとした。大橋弘東京大学大学院経済学研究科教授は、有限責任が安全に対するモラルハザードを引き起こすという懸念に関しては、規制基準や自治体同意などのプロセスにより原子力の場合は制度的な留め金がすでに存在していると指摘した。