東大他、セシウムが「風化黒雲母」に強く吸着されることを明らかに

2016年2月15日

 東京大学と日本原子力研究開発機構の研究グループは2月12日、福島第一原子力発電所事故後の大気・土壌環境を模した物質の吸着実験を行い、福島地方の土壌に一般的な「風化黒雲母」と呼ばれる鉱物に、低濃度のセシウムが選択的に吸着されることを明らかにしたと発表した。本研究成果により、福島地方の放射性セシウムの動態を解明するとともに、土壌からの除去方法や、除染廃棄物の減容化手法の開発などに寄与することが期待される。
 研究に参画した東大理学系研究科の小暮敏博准教授らは2014年11月に、原子力機構との協力で、実際の汚染土壌から電子顕微鏡などを用いて、花崗岩中の黒雲母を、放射性セシウムを固定している微粒子として特定したという成果を発表しているが、今回の実験では、土壌中に存在する様々な鉱物微粒子を基板上に細かく配置し、福島で実際に起きたと考えられる非常に低濃度の放射性セシウムを含む溶液を滴下して各鉱物への吸着量を測定した。
 その結果、放射性セシウムは、黒雲母が長年の風雨で変質した「風化黒雲母」に集中して吸着されることがわかり、先の実汚染土壌による観察成果を支持するものとなった。また、試薬を用いた溶出試験などによって、低濃度の放射性セシウムは「風化黒雲母」に時間の経過とともに、より強く固定されていくことも示され、福島の土壌における放射能汚染に「風化黒雲母」が非常大きな要因となっていることが明らかとなった。
 研究グループでは、今回の成果で、福島地方における長期的な放射性物質の拡散・移動の予測、土壌中の放射性セシウムの除去方法、除染作業に伴い発生する汚染物質の有効な減容化や貯蔵方法の提案など、今後の有効な放射能汚染対策への貢献が期待されるとしている。