「原子力人材育成ネットワーク」報告会、国際会議を併催し新興国とも意見交換

2016年2月16日

HRDNET 将来の原子力人材確保に向けて産学官の関係機関が相互協力を図る「原子力人材育成ネットワーク」の報告会/国際会議が2月10日、都内で開かれ、機関横断的な事業を検討する各分科会(初等中等教育、高等教育、実務段階人材育成、国内人材国際化、海外人材育成)の活動報告とともに、海外の参加者より各国の原子力人材育成の状況について発表を受け意見交換を行うなどした(=写真)。
 報告会では冒頭、ネットワーク運営委員長を務める原産協会の高橋明男理事長が挨拶に立ち、原子力発電の利用とともに、核燃料サイクル、放射性廃棄物処分、福島第一原子力発電所の廃止措置などを的確に進めていくため、「幅広い分野で長期にわたり多様な人材が必要」とする一方、プラントの長期停止に伴い、「『生きた仕事の場』が十分に若手に提供されていない」として、現場の実態を憂慮した。さらに、大学研究炉の停止や初等中等教育における放射線の取扱いの難しさなど、原子力人材育成を巡る諸課題、他方で、新興国で高まる日本の技術や人材育成支援への期待を強調した上で、「各国が連携して人材の質を維持していかなくてはならない」として、今後のネットワーク活動への積極的な参画を来場した国内外の人材育成関係者らに訴えかけた。
 2010年度に発足した「原子力人材育成ネットワーク」では、各国の原子力人材育成活動の状況や課題について情報共有を図るため、国際会議を毎年行っており、これまで、タイ、マレーシア、ベトナム、インドネシアで開催されているが、日本での開催は2011年3月に東日本大震災のため中止となったことから、今回が初めてとなる。
 今回の国際会議では、原子力平和利用のための国際的な教育機関「世界原子力大学」(WNU)の将来展望や、海外の原子力人材育成の状況などについて発表があった。その中で、韓国原子力国際協力財団(KONICOF)からは、福島第一原子力発電所事故後、日本で実プラントが停止している状況下、韓国の大学に日本の学生を受け入れ実習を行ったことなどを述べ、こうした交流をさらに広げつつ「互いの考え方を共有し情報交換を図っていきたい」として、今後の相互協力の活性化に期待をかけた。この他、新興国では、トルコから、国内にアックユ、シノップ、第3サイトと、パートナー国が異なる原子力開発計画を有する現状を踏まえ、高等教育を施す上での課題などが、また、マレーシアからは、近年の電力需要増に伴い、2021年までに2基の100万kW級原子力発電所の運転開始を目指す上で、必要となる人材育成戦略がそれぞれ述べられた。