「量子科学技術研究開発機構」中長期目標、重粒子線がん治療は原子力機構の技術も活用
放射線医学総合研究所と日本原子力研究開発機構(量子ビーム・核融合部門)の統合により2016年度に新たに発足する「量子科学技術研究開発機構」の中長期目標案が2月17日までに明らかになった。同日行われた原子力規制委員会定例会合で示されたもの。中長期目標は、2016~22年度の7年間について、主務官庁である文部科学省と原子力規制委員会が定めるもので、2月下旬を目途に決定された後、機構が指示を受けて中長期計画を策定することとなる。
新機構の設立により、原子力機構の業務内容見直しで分離するレーザー研究、放射線利用研究、核融合研究開発を、放射線に関する専門研究機関として放医研が担ってきた放射線影響・被ばく医療研究などと融合することにより、シナジー効果を発揮させ幅広いイノベーション創出を図るのがねらいだ。
中長期目標案では冒頭、「政策体系における法人の位置付けおよび役割」を掲げ、その中で、新たに発足する「量子科学技術研究開発機構」に対し、「これまで培われてきた知見・ノウハウを強みとして、常にそこから量子科学技術と呼ぶにふさわしい最先端の研究開発領域を立ち上げていく活動度の高い法人」となることを期待している。また、福島第一原子力発電所事故を教訓として、放射線影響に対する国民的関心の高まりに応えるよう、専門的な研究開発だけでなく、得られた成果を「わかりやすく平易な言葉で国民に伝えていく」として、普及・成果活用を一層意識した取組を進めていくことも求めている。
各研究開発の中で、これまで放医研が担ってきた重粒子線がん治療については、標準化を進めるとともに、質の高い臨床研究能力を持つ機関と連携し、既存療法との比較研究を行った上で、その優位性を示すほか、原子力機構から移管された技術も活用し、治療装置の性能向上に向けた取組を推進し普及・定着を目指すとしている。