次世代エネルギーワークショップ2016 多様な視点からの議論を通じて考え深める

2016年2月23日

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 全国22大学から50名の学生が集まって30年後のエネルギー選択について議論を重ねる「次世代エネルギーワークショップ(WS)2016」(次世代エネルギーWS実行委員会主催)が2月18日から19日まで、原産協会などの協力のもと、上智大学で開催された。
 WS実行委員長の柳下正治上智大学客員教授は初日の挨拶で、将来のエネルギー政策を担う世代である学生たち自身が納得できる答えを導いていってほしいとの思いを述べ、オリエンテーションを行った。続いてファシリテーターを務める森雅浩Be-Nature代表取締役の主導で、学生たちがペアになって世の中で気になることや今回のWSに期待することなどを紹介し合うウォーミングアップを行い、打ち解けた雰囲気の中でWSが始まった。

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柳下WS実行委員長

 まず、木村浩パブリック・アウトリーチ研究企画部研究統括がエネルギー全般、高橋洋都留文科大学文学部社会学科教授がエネルギー政策、渡邉理恵新潟県立大学国際地域学部国際地域学科准教授が温暖化、柳下教授が社会シナリオと視点について、事前配布資料を参照しながらレクチャーを行った。
 次にグループごとに理解を深めるため、事前配布資料に書かれていることやレクチャーを聞いて印象に残ることについて話し合いを行った。各グループは所属大学や大学の所在地方、専攻、学部生/院生、男女、留学生等それぞれが均衡になるように9班に分けられており、多様な視点での意見が聞ける場となった。また、各グループから出された「エネルギー政策はどのようなプロセスで決定されるのか」「温暖化は本当にCO2排出が原因なのか」などの質問に対して専門家が一つ一つ丁寧に答えていった。
 その後、思い描く5つの未来社会像として「ものづくり統括拠点社会」、「メイドインジャパン社会」、「サービスブランド社会」、「資源自立社会」、「分かち合い社会」、そしてエネルギー選択する時に重視する7つの価値観として「経済効率性(コスト)」、「安定供給(エネルギー安全保障)」、「環境適合性(地球温暖化問題への対応等)」、「安全性の確保」、「エネルギーイノベーション/グリーンエコノミーの追究(最先端技術の追求)」、「原子力エネルギー技術による世界への貢献」、「世代間公平(未来世代への責任)」――で、それぞれ自身の大事にしたい順にダイアグラムに書き込んだ。そして互いの結果を照合しながら価値観の似た仲間でグループを形成して、それぞれの考え方を示すグループ名を考え、その後の懇親会で親睦を深めた。
 二日目は、前日のレクチャー内容などを簡単に再確認し、同価値観を持つ仲間で形成された各グループの中で30年後の日本の社会像、総電力需要量、電源構成などについて話し合い、エネルギー選択に関する討議結果一次案として模造紙に書きだした。各グループには、国立環境研究所と地球環境戦略機関(IGES)が共同開発した「低炭素ナビ」を元に応用開発したシミュレーションプログラムの操作担当者が配置されており、最終エネルギー消費、一次エネルギー供給、温室効果ガス排出量の数値を入力して出てきた結果についてなぜそうなったのか各グループで振り返った。
 次にアドバイザー立ち会いのもとで、各グループはエネルギー選択の一次案とシミュレーション報告シートについて発表した。アドバイザーは一次案とシミュレーション案の矛盾や見逃している論点など、より深く考えるべきポイントについて指摘した。その後、各グループで再検討を行い、エネルギー選択に関する討議結果の二次案について話し合って、一次案の模造紙の青字で修正ポイントを書き込みボードに貼り出した。
 続いて、代表者一人を残して各グループのメンバーが移動し、異価値観のグループを形成した。前日のダイアグラムを用いて自己紹介を行い、新たなグループで学食のランチを囲んだ。午後からは異価値観グループごとに、残った代表者が元のグループのエネルギー選択の討議結果について望む社会像や3E+S等の視点を含めて説明した。新たに加わった異価値観メンバーはその発表について賛同する点や違和感を覚える点などを伝え、代表者はフィードバックを受けての感想を話すなど、内容を検証して意見を交換した。
 その後、再び元の同価値観グループに戻り、異価値観グループセッションで得た洞察を共有して、専門家の助言も得ながら最終的な討議結果を作成した。最終案は青字で追加が加えられた二次案の上にさらに赤字で書き加えられ、グループによっては新しい模造紙に作成し直された。
 最後に9グループそれぞれの代表が4分ずつ、最終案について発表を行い、同時に一次案からの変遷とその過程で気づいた点などについても報告した。「脱原発・資源自立」グループは、資源の自立をめざすためには原子力発電所は最終的になくすが廃炉まで稼働させていくと述べ、「どれかを選ぶとどれかを切り捨てなければならないのが難しかった」との感想を語った。「わかちあい社会~Fair for Earth」グループはグループ名を「足るを知る社会」と変え、シミュレーションの結果、GDPが伸びない中で高額な電気料金のかなり厳しい社会になってしまうと指摘されたと述べ、人々の価値観を変えるための環境教育や捨てられるものを活かす技術の開発などが重要になってくるとの考えを発表した。
 専門家からは、木村氏は「実際の社会では異価値観同士の中で議論が行われることとなるので、今日の議論を30年後の政策につなげていく第一歩としてほしい」、渡辺氏は「まずは自分の意見を妥協せずに発表して、話し合っていく中で決めていく姿勢を大切にしてもらいたい」、高橋氏は「3Eのトリレンマを実感したと思うが、政策決定は長い時間をかけて行うものなので今後どのような決断をするか考えを深めていってほしい」、柳下氏は「最先端の情報や専門家の意見など良い環境の中で議論が進められたことを是非大学に持ち帰って報告を」との講評が述べられた。学生たちからは「自分で30年後のビジョンを持てたことがよかった」、「地域の再生エネルギー導入状況などの事例も見てみたい」などの声が聞かれた。