日米安全保障研究会報告書「日米が原子力産業に関し世界の指導的立場を堅持すべき」
笹川平和財団(SPF)と戦略国際問題研究所(CSIS)は2月29日、日米同盟の将来に関する日米安全保障研究会報告書「2030年までの日米同盟:『パワーと原則』」を発表した。
SPFとCSISは2013年、著名な政策立案者と研究者による「日米安全保障研究会」を発足させた。同研究会は、2030年までのアジアおよび日米同盟に関する共通のビジョンを提示し、世界のすべての国々が、安全かつ平和で、繁栄し、自由であることを追求するとしている。
今回の報告書では、日米同盟として、(1)一つに調整された対中戦略を確立すること(2)日米同盟を深化、拡大、持続するための施策を講じること――の取り組みが不可欠であると提言している。
「気候変動、環境、エネルギー」の項では、日本のエネルギー安全保障は基本的に米国の利害とも関わっているとして、日本はLNG価格の高騰を招いている「アジアプレミアム問題」の縮小・解消などを図るべきであると強調。こうした中で、日本の原子力発電所の運転再開について「歓迎すべき前進」とした。
また、両国商業利用目的の原子力の国際規制とモニタリングへの重要性を長年訴えてきたことに触れ、「日米両国が原子力発電の商業利用分野において、世界で主導的な立場を維持することが不可欠である」と明記された。しかしながら、「日本が国内の原子力発電事業を再開できず、米国が自国内の原子力発電事業を軽視し続けるようであれば、この分野で両国が共有する権限とパワーは大きく損なわれる」と警鐘を鳴らした。
さらに、原子力発電プラントおよび濃縮物質の供給を拡大しているロシア、中国、インド、韓国の4か国はいずれも、今まで核不拡散を主導してきたとは言えず、「国際規範の維持確立とモニタリング実施に向けた両国共通の取り組みには、日米での強力な原子力再処理システム導入が欠かせない」と明記。原子力産業の両雄である日米が原子力産業に関し世界の指導的立場を堅持することが、核不拡散の安全保障構造を構築すると強調している。
3月1日には、J.ハムレ戦略国際問題研究所(CSIS)所長およびD.ブレア笹川平和財団USA理事長を始めとした日米安全保障研究会の一行が岸田文雄外相を表敬し、今回発表した報告書の概要について説明し、日米同盟の強化に向け引き続き努力していく重要性等について指摘した。